拉致問題~横田哲也さん「何もしていない方が政権批判するのは卑怯」
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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(6月10日に放送)に数量政策学者の高橋洋一が出演。北朝鮮に拉致された横田めぐみさんの父で、5日に亡くなった横田滋さんの遺族による記者会見のニュースについて解説した。
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横田滋さんが亡くなったことを受け、会見する横田哲也さん=2020年6月9日午後、東京都千代田区
横田滋さん死去~妻の早紀江さんらが記者会見
横田早紀江さん)たくさんの先生方や救う会の指導力も素晴らしかったし、何も思い残すことがないほど全身全霊打ち込んで、頑張ったと思っています。本当に安らかに、静かないい顔で天国に引き上げられましたことを、私はよかったなと思っています。これまで長いご支援をいただきましたこと、感謝申し上げます。ありがとうございました。
北朝鮮に拉致された横田めぐみさんの父親で、5日に87歳で亡くなった横田滋さんの妻、早紀江さんらが9日、記者会見を行った。「何も思い残すことがないほど、拉致解決に全身全霊で打ち込み、頑張ったと思っています」と心境を語った。
飯田)衆議院の議員会館で記者会見が行われまして、妻の早紀江さんと、めぐみさんの弟さんである拓也さんと哲也さんが出席されました。
高橋)本当に痛ましいと言いますか、無念だったでしょう。こんなことがなければ、このような活動に入らなかったわけですから、人生の半分をかけてみんなを引っ張って、本当に頑張られたと思います。拉致被害者の5人が北朝鮮から帰って来られたときの記者会見は、いまでも思い出します。
飯田)帰国する5人のなかには、めぐみさんの名前がなかった。
高橋)それでもきちんとお話しされましたし、あれは立派でした。
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北朝鮮の拉致問題に関して家族会と救う会が合同会議を開いた。会議後に会見する横田滋さん=2016年2月21日午後、東京都港区 写真提供:産経新聞社
即時全員を一括で帰国させなければ、この問題に終わりはない
飯田)本当にそうですよね。生前、おっしゃっていたのは、「うちだけがよければいいと言うものではない。即時全員を一括で帰国させなければ、この問題に終わりはない」ということです。
高橋)それでもご高齢でしたので、歳には勝てませんよね。理不尽なものを感じます。こんなにも近くで、あんな酷いことをした国がいる。それに対して日本は何もできない。本当はできることはあるのですが、もどかしい状況です。
飯田)いまの現状のなかでならば、憲法を改正するということなしで、何ができるかということですよね。
高橋)普通の国であれば、いろいろな工作員を送り込むということもあるのですが、この問題について、弟さんがきちんとお話をされていましたよね。
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夫の滋さんの死去を受け、息子の拓也さん(左)、哲也さん(右)と記者会見する横田早紀江さん=2020年6月9日午後、国会 写真提供:共同通信社
安倍政権は動いてくださっている。やっていない方が政権批判をするのは卑怯です
飯田)メールもいただいています。「めぐみさんの弟さんの会見をご覧になりましたか?『40年間、何もやって来なかった政治家やメディアの人たちは、いま頑張ってくれている政府の方たちの批判をするな』という言葉がありました。あの当時は、“北朝鮮が拉致なんてするはずはない、滅多なことを放送するな”など、圧力があったとも聞きます。そういうことをきちんと踏まえて、いまできることを探さなければ、また同じことを繰り返してしまいますよね」。
高橋)まったくその通りだと思います。いまの議員のなかにもあの当時、否定していた人たちはいます。マスコミもそうでした。その問題点を指摘した弟さんの発言が、あまり報道されていないように思います。私も実際に会見を聴いたのですが、この報道が少なく、「ここ2~3日、『北朝鮮問題は一丁目一番地というのに何も動いていないではないか』という発言をメディアで目にしましたが、安倍総理、安倍政権が問題なのではなく、40年間何もして来なかった政治家や、北朝鮮が拉致するはずはないと言って来たメディアがあったので、安倍総理、安倍政権がここまで苦しんでいるのです」という発言のところです。
飯田)私も会見に出席しまして、弟の哲也さんが発言のなかで、「安倍総理、安倍政権は動いてくださっています。やっていない方が政権批判をするのは卑怯です」と、語気を相当強めて語っていらっしゃったのが印象に残りました。
高橋)メディアの人も自分のところが、拉致問題に消極的であったということがあると思うのです。報道は報道として、きちんと全部伝えたほうがいいです。こういうことをやっていると、報道しない自由だとか、政権批判に結びつけているのではないだろうかとか、あらぬ憶測を呼んでしまいますよ。
飯田)哲也さんがその後、「日本のなかで反政権だ、新政権だという分断が起こっていると、この問題は絶対に解決しないのです。北朝鮮対日本、加害者対被害者の構図しかありません。これからも協力をお願いしたいと思います」とおっしゃっていました。
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家族会・救う会による国民大集会を前に、署名を開始した平成9年以降の署名が入った段ボールの山を前にあいさつする横田早紀江さん(前列右から2人目)=2019年5月19日午前、東京・平河町の砂防会館 写真提供:産経新聞社
日本のどの家族も同じ被害に遭う可能性があった
高橋)立派な発言です。こういうことこそ、メディアの人は取り上げて皆さんに知らせなければ、記者会見に何のために出ているのですかと思ってしまいます。すべてを報道すればいいのです。切り取りをマスコミは行いますが、あれはよくないと思います。
飯田)弟さんの拓也さんが言っていた印象的な言葉があって、滋さんをすごい人だと神格化するようなエピソードを引き出そうとする質問に対して、「そうではない」と。「娘が理不尽にも連れ去られた人の親であれば、誰だって同じことをしていたはずだし、これは横田家の問題ではなく、日本の家族の誰しもがこうなった可能性があることで、誰にも同じようなリスクがあった。自分事にして考えてください」ということを切々と訴えられていました。世界第3位の経済大国だというこの国のなかで、こんなにも理不尽な人権侵害が現実にいまも起こっているのです。ここを考えなければならないですよね。
高橋)そういう質問をした記者の人は、拓也さんの語られた内容もきちんと載せた方がいいと思います。