何度も洗って使える「紙容器」で、新しい時代の地球貢献に!
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それぞれの朝は、それぞれの物語を連れてやってきます。
「STAY HOME!」と自粛を要請された暮らしが長期間に及ぶなか、仕事の仕方、家での過ごし方や遊び方など、さまざまなことが変わりました。
食生活では、デリバリーやお持ち帰りを利用した方も多かったことでしょう。料理や弁当の容器、ペットボトルなどのプラスチックごみをためている袋が、あまりにも大きくふくらんでビックリ…そんな方もいらしたのではないでしょうか。
私たちが出すプラスチックごみが増えれば増えるほど、世界の海洋汚染のスピードが増す。新型コロナ騒動は、環境問題まで悪化させているのですね。残念ながらこれは考え過ぎなどではなく、リアルな問題です。
「人間はもうすぐ、地球上の資源を食べ尽くしてしまう!」
新潟県三条市の「株式会社オリエンタル」社長・吉川吉彦さんがそれに気づいたのは、30年も前のことだったと言います。
「オリエンタル」の業務は、食品包装容器及び木竹製品の製造販売。その仕事柄、現在73歳の吉川さんは若いころから、東南アジア、ヨーロッパ、カナダ、アメリカ、オーストラリアなどを巡っては、環境問題を考え続けて来たと言います。吉川さんは振り返ります。
「発泡樹脂の容器をつくりながら、何か心に引っかかるものがあったんです。発泡樹脂はたしかに、安いコストで大量生産ができます。どんな形にも成型しやすい。しかし、本当にこれで、このままでいいんだろうか? という思いがぬぐい切れなかった。何か代わるものが欲しかったんです」
こう語る吉川さんが着目したのは、成長のスピードが速い「竹」でした。そして平成7年、三条市に隣接する燕市に、竹だけの家をつくってしまいました。
「あれから24年、『竹の家』は新潟県を襲った地震や風水害に耐えて、いまもビシッとしています。ゆがみやガタつきも出ていません」
しかし竹の名産地、佐渡ヶ島に工場まで建てて大きな期待を寄せた竹林は、後継者不足などのために、いまや壊滅状態だと言います。
「うまく行ったのは最初の6年だけでした。もったいない話ですよ」…吉川さんは、悔しそうにつぶやきます。
吉川社長は諦めませんでした。竹の研究を続けるうちに知ったのは、「竹の粉で紙をつくる」という台湾の技術でした。その紙は贈答品の箱や屏風、壁紙などに利用されています。
「しかし紙には、森林伐採という環境破壊の問題がつきまとう。そうだ! 使用済みの段ボールや、新聞紙の再生という手があるぞ!」
けれど、吉川さんのところで手がけているのは、食品の包装容器。常識的には使い捨てが原則となります。
「それじゃあダメだ。何度も洗えて、何度も使える紙容器ができないものか!」
吉川さんのなかに新しい夢が生まれました。長い試行錯誤が始まります。微生物の働きで自然分解される紙を材料にして、繰り返し使える新しい時代の容器。森林を破壊しないためには、新聞紙などが原料の再生紙を利用するしかありません。
こうして20年の歳月を費やし、「オリエンタル」では再生紙にラミネート加工を施して、水にも油にも耐える紙をつくり上げました。さらに、隙間なく成形することによって、食品の汁などが漏れないようにすることにも成功しました。
例えば『キャリー弁当』の容器は、漆器などをモチーフにした赤と黒で、高級感を漂わせる彩色とデザインがシャレています。
ケータリングやファストフード店、寿司屋さん、総菜屋さん、さまざまなテイクアウトなど、多方面の業種に採用される可能性が広がります。5月から発売の予定でしたが、実は残る問題が1つだけありました。
それは、1個70円~200円と予定していた価格です。吉川さんはおっしゃいます。
「日用品として使いこなしてもらうには、もう少し安くならないと難しいでしょうね。ですから、いまのところ発売は見合わせているんです。いやぁ、あと一歩。社会貢献のためにがんばりますよ」
僭越ながら吉川社長に申し上げたい。これは社会貢献というより、「地球貢献」です。発売を待っています!
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