「退屈バスターズ」が温泉を出前! 日帰り宿『福家』の逆転アイデア
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それぞれの朝は、それぞれの物語を連れてやってきます。
4月7日、安倍総理は7つの都府県に対して「緊急事態宣言」を発出。5月6日までの1ヵ月間、密閉・密集・密接の3つの「密」を防ぐため、国民に不要不急の外出自粛などを要請しました。
そして4月16日、「緊急事態宣言」の対象は全国へ拡大。さまざまな市民生活や経済活動に、大きな不安と混乱が広がっています。
さらに政府は5月4日、「緊急事態宣言」を今月(5月)末まで延長することを発表。「5月6日までの我慢だよ!」と、カレンダーに○を付けて待ち望んでいたお子さんに、親御さんはどのように説明するのでしょうか?
この2週間、庶民はいろいろな知恵を絞って自粛要請に対応して来ました。企業はオンライン会議、在宅ワーク。飲食業は時短営業やテイクアウト、出前メニューを開発。大学や私立の学校ではオンライン授業など。
またオンライン飲み会やオンラインヨガ、オンライン銭湯までも…。これは、全国にある50ヵ所以上の銭湯が和みの動画を投稿。家にいながら、大きなお風呂に身を浸す気分を味わってもらおうという企画だそうです。
そんななか、気分どころか「お風呂そのものを出前してしまえ!」という大英断に踏み切り、実践しているところがあります。青森県平川市の日帰り温泉施設『福家』が始めた、個人宅への温泉の宅配です。
『福家』の社長、水口清人さんは46歳。この温泉施設を引き継いで10年目になります。
『福家』は、あれこれ準備が必要な温泉旅行ではなく、ふらりと立ち寄って楽しめる「日帰り温泉」。お湯にゆっくり浸かったあと、マッサージを受けて日ごろの凝りをほぐし、ごちそうを食べて帰って来る。
最大50名の宴会や、結婚式もOKという複合型施設です。この北の桃源郷にも、コロナ感染防止のための自粛の波が押し寄せました。水口社長はこの3月~4月を振り返ります。
「いやぁ、参りました! 3月は送別会などのキャンセルが続いて、1000万円近くの損失が出ました。入浴のお客様もどんどん減って、4月29日~5月6日までのゴールデンウィークは、とうとう臨時休業に追い込まれてしまったんです」
売り上げは前年比の6割。本来なら、従業員の勤務時間などを削って経費削減を考えますが、水口社長はそれをしませんでした。全社員から、この窮状を乗り切るためのアイデアを募集したのです。
「何か、いい方法はないだろうか?」
社長の呼びかけにゆっくり手を挙げたのは、宇野清映さん。27歳、入社10年目の男性社員でした。
「あのう、お客様が来てくれないのなら、こっちから温泉を届けてはどうでしょうか?」
「う~ん……。よし、やってみよう!」
保健所など関係機関の許可を取り、水口社長はホームセンターで500リットルの大型ポリタンクを入手。家庭用の浴槽の容量は、多くても300リットルほど。配達の途中でお湯が冷めないようにするためには、より多くの湯を運ぶ必要があるそうです。
運送料、手間賃を含めた500リットルの温泉の料金は、2000円。1984年のハリウッド映画「ゴーストバスターズ」が好きだった社長は、このプロジェクトチームに『退屈バスターズ』と命名しました。
「コロナバスターズでは、あまりにも生々しいですからね。ただしバスターズの『バス』のスペルは、お風呂を意味する『BATH』です」
お揃いのツナギを着込んだ3人の隊員のポスターも完成! アルカリ単純泉の温度は51度。追い炊きの釜を痛めることもありません。
「退屈バスターズ、安全運転で行ってらっしゃい!」
こうして4月1日、退屈バスターズの第1便が出発しました。待ち構えていたのは、脳梗塞のため足に不自由さが残り、趣味だった温泉をあきらめていた74歳の男性。温泉の宅配は息子さんからのプレゼントでした。
「ああ、やっぱり温泉はいいなぁ」…お湯に浸る顔は、幸せそのものだったそうです。
水口社長は言います。「この温泉の宅配の取り組みが、他の地域の温泉まで広まって、たくさんの人が幸せになるのが私の願いなんです」
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