それぞれの朝は、それぞれの物語を連れてやってきます。
ゴールデンウイークは、海や山に出かける予定の方も多かったことでしょう。でも今年(2020年)は我慢、我慢。今回は、気持ちだけでも旅気分を味わっていただけたらと思います。
宮崎県三股町にお住いの今村正美さんは、62歳。子供のころから家にいるより、海や山で遊ぶのが大好きでした。
高校生になるとサイクリングで行動範囲を広げ、大学時代はワンダーフォーゲル部であちこちの山を登り、またヨーロッパやアフリカ、東欧、アジアを旅しました。
その後、中学校の「技術」の教師になった今村さんは、生徒から「イママサ先生」と呼ばれます。「体育教師になりたかった」と言うほどスポーツが大好きで、体育祭では生徒よりも張り切っていたそうです。
趣味は登山とマラソン。しかし、そのマラソンのタイムが年齢と共にダウン。「このまま体力も落ちて行ったら、やりたいこともやれなくなる」と、定年の2年前である58歳で、イママサさんは早期退職を決意します。
妻に相談すると、「えーッ、これからの生活はどうするのよ!」と、予想通りの言葉が返って来ました。4人の子供は独立し、もう手はかかりません。いま体力があるうちに自分の夢を叶えたいんだ、と妻を説得しました。
こうして2016年5月8日、25キロの荷物を載せたツーリング自転車で出発します。イママサさんが目指したのは、自転車で日本一周、さらに「都道府県の最高峰を登る」という旅でした。
宮崎から大分へ、そして北九州の関門トンネルを抜け、下関へ。最初に登った山は、鳥取の最高峰・大山(1729メートル)でした。日本海沿に自転車を走らせ、東尋坊や能登半島を回り、山形の鳥海山(2236メートル)には、まだ雪が残っていました。
青森の岩木山(1625メートル)に登ったあと、マグロで有名な大間からフェリーに乗って、函館へ。日本最北端の宗谷岬に到着したのは、2ヵ月半が経った7月22日。「宮崎からよくここまで来たなぁ」と、涙が溢れました。
北海道をぐるりと一周し、ヒグマに注意しながら大雪山(2291メートル)を登ります。今度は太平洋側を南下し、東北から関東へ。東京の最高峰は雲取山(2017メートル)です。
都道府県でいちばん低い最高峰は、千葉の愛宕山(408メートル)。いちばん高い山はもちろん、山梨と静岡の県境にある富士山(3776メートル)です。5合目まで自転車を押して、そこから山頂を目指しました。
「基本はキャンプ地に小さなテントを張って寝ました。楽しみはコンロで炙った柿の種をつまみに、焼酎をグイッとやること。寒さと疲労でクタクタになったとき、恋しくなるのは熱いお風呂と、ふかふかの布団……。そんなときは我慢せず、ユースホステルや民宿に泊めてもらいました」
自転車の後ろには「日本一周山旅」のプレートを掛けています。それを見て、声を掛けて来る人もいました。
「あれ、若者だと思ったらおじさんか! 日本一周? よかったら今夜、うちに泊まって行きませんか?」
この旅で13人の家に泊めてもらい、翌朝おにぎりを持たせてくれて「ご無事で! いい旅を!」と送り出してくれる人もいました。
東海、近畿、そして岡山から「しまなみ海道」を自転車で渡り、四国を回って九州へ。鹿児島から船を乗り継ぎ、沖縄の最高峰である、石垣島の於茂登岳(526メートル)。最後に熊本の国見岳(1739メートル)を登って、2017年3月6日、303日の「日本一周山旅」は終わりました。
パンク修理6回、タイヤ交換3本、ケガ・病気は「0」。怖かったのは、横をスレスレに走って行くダンプカーの風圧。和歌山の最高峰・龍神岳(1382メートル)を目指していた際、ダンプが寄って来て急停車したときです。
「窓から顔を出した運転手に文句を言おうとしたら、『がんばってや、気ぃつけてな~』と励まされ、缶コーヒーまでくれたんですよ。ちょっとぬるかったけれど、あんなに心が温まった瞬間はなかったですねぇ」
そんな人との出会いと温かい言葉が、イママサさんの自転車を後押ししてくれたのかも知れません。
■『イママサの自転車山旅 ~都道府県最高峰を登る旅~』
※宮崎県えびの市の「えびのエコミュージアムセンター」で2020年4月10日(金)~6月30日(火)まで開催予定でしたが、緊急事態宣言に伴い、5月6日まで臨時休館しています。
6月28日(日)14:00~15:30は、イママサさんが登場して「イママサの旅のお話♪」を開催する予定です。
詳しくは「えびのエコミュージアムセンター」のホームページをご確認ください。
〈関連リンク〉
■ブログ「イママサの山海旅」
https://ameblo.jp/imamasa16/
■えびのエコミュージアムセンターホームページ
http://www.ebino-ecomuseum.go.jp/
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