黒木瞳がパーソナリティを務める番組「あさナビ」(ニッポン放送)に防災・危機管理アドバイザーの山村武彦が出演。実践的な災害への備えについて語った。
黒木)今週のゲストは防災・危機管理アドバイザーの山村武彦さんです。日ごろからどのような備えをしておけばいいのでしょうか? 実践的な災害への備えについて伺います。どのような備えをしておけばいいのですか?
山村)まずは自宅の安全をつくる。我が家を「安全シェルター」にするということです。「食う」「寝る」「住む」ところ。自分の住処が安全であれば、気持ちも楽になります。25年前に発生した阪神淡路大震災のときには、重軽症を負った人が4万3000人もいました。その内、46%が家具類の転倒、落下によるものでした。なかには亡くなった人もいらっしゃいます。
黒木)はい。
山村)また、ガラスで怪我を負った人は29%でした。これだけでも75%になります。いまの内に脱出路へ向かう経路の確保をしておき、そこには物を置かない、また家具は転倒防止対策をしておき、ガラスの飛散防止のフィルムを貼っておくことが大事だと思います。
黒木)まずは自宅から、ということですね。
山村)それと、自分の住んでいる地域について知っておくことです。自分の家が安全なのかどうか。地形や地盤、過去の災害事例、地歴を確認する。ハザードマップが自治体で発表されていますし、ネットでも見られますので、そこで自分たちの地域の避難場所がどこなのかも確認しておく必要があります。台風や地震のときに、真っ先にコンビニやドラッグストアでなくなってしまうものを調べますと、水、食料は当然ですが、電池や充電器などがなくなります。そのようなものに加えて、新型コロナウイルス関係であれば、体温計や消毒薬なども用意しておく必要があると思います。家族構成に合わせて、「我が家で停電対策として電池がどのくらい必要なのか、水はどのくらい必要なのか」ということを確認しておくことが大事だと思います。
黒木)いろいろと必要ですね。
山村)私の家には約3ヵ月分の水、食料、トイレットペーパー、電池が備蓄されています。最近の電池は10年持つものが出ています。ここまでキッチリとやらなくても、通常使うものを、いつも余裕を持って確保しておくと、いざというときに「余分にあるから大丈夫」と安心です。
黒木)山村さんのお宅には常に3ヵ月分の水、食料があるのですか。
山村)今回のコロナ騒動のときも、我が家はスーパーへ買いに行く必要がありませんでした。トイレットペーパーもありますし、マスクも備蓄していました。なぜならば、阪神淡路大震災のときにインフルエンザが流行って、避難所などで919人が3ヵ月間で亡くなっています。そういうこともあったので、マスクも余分に用意してあったのです。
黒木)私たちも備蓄を見直さないといけませんね。
山村)せめて1週間分です。水、食糧は3日分と言いますが、小さな災害であれば3日で救援が来るので十分ですけれど、大規模災害では無理です。大規模災害に備えることが防災対策なのです。7日間は電気・ガス・水道も、流通も途絶えてしまう可能性があるという認識で備蓄して欲しいと思います。
山村武彦(やまむら・たけひこ)/防災・危機管理アドバイザー
■1943年、東京都出身。防災システム研究所所長。
■1964年、学生時代に遭遇した「新潟地震」でのボランティア活動を契機に、防災システム研究所を設立。
■その後、50年以上にわたり、世界中で発生する災害の現地調査を250ヵ所以上で実施。
■その知見を活かし、報道番組での解説や3000回以上の日本各地での講演、執筆活動などを通じ、防災意識の啓発に取り組む。また、多くの企業や自治体の防災アドバイザーを歴任し、BCP(事業継続計画)マニュアルや防災マニュアルの策定など、災害に強い企業、社会、街づくりに携わる。実践的防災・危機管理の第一人者。
■座右の銘は「真実と教訓は、現場にあり」。
■著書は『感染症×大規模災害 実践的 分散避難と避難所運営』(ぎょうせい)、『災害に強いまちづくりは互近助の力 ~隣人と仲良くする勇気~』(ぎょうせい)など多数。
番組情報
毎朝、さまざまなジャンルのプロフェッショナルをお迎えして、朝の活力になるお話をうかがっていく「あさナビ」。ナビゲーター:黒木瞳