ワクチン大規模接種センターを見る

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ニッポン放送報道部畑中デスクのニュースコラム。今回は、5月24日から始まったワクチン大規模接種センターの運用について---

画像を見る(全6枚) 大規模接種センターが設けられた大手町合同庁舎3号館

5月24日、自衛隊が運営する新型コロナウイルスワクチンの大規模接種センターの運用が、東京と大阪で始まりました。

このうち東京会場は、大手町合同庁舎3号館。大手町と言えばビジネス街のイメージがありますが、ここにも中央省庁の建物があります。以前ここには東京国税局などがありました。東京電力の原発事故調査委員会の記者会見が行われたこともあります。

建物は50年近くが経過しているということで、入居していた役所の機能はほとんどが移転し、いわば「遊休状態」にありました。ここを活用して、3ヵ月をめどとする期間限定の「大規模接種センター」が設けられたわけです。

3号館の前には、受付用のプレハブが急きょつくられました。まさに「突貫工事」で準備が進められたことがうかがえます。

周辺には経団連会館や旧気象庁庁舎があるものの、大手町の北端であることから、ややわかりにくい場所ではあります。東京駅から約1km、歩いて15分ほど。目の前には首都高速神田橋ランプの入口があり、大手町駅「C2b」が最寄りの出入口になります。

地下鉄のコンコースにも案内札を持ったスタッフが立っていて、「絶対に迷わせない」という強い意志を感じました。東京駅からは5~6分に1回のペースで、シャトルバスが午前7時45分~午後7時55分まで運行しています。

3号館前にはプレハブが設置され、受付レーンとなる

さて、接種の流れですが……まずはプレハブで受付を行い、接種を受ける人が「グループ分け」されます。

アレルギー症状や基礎疾患のある人、車いすの人、注射を打って気分が悪くなった経験のある人、当日体調が悪くなった人……さまざまな事情があります。それに応じて、赤・青・黄・緑に色分けされたクリアファイルが渡され、緑は2階、黄は4階、青は7階、赤は10階へと誘導されます。

誘導の際は、待合室のエリアやエレベーターもその色専用に分けられ、床にはそれぞれの進路を示すステッカーが貼られていました。それぞれの階に進むと、1つのフロアで問診、接種、接種証明書の交付、経過観察……一連の流れは1人30分ほどを想定しているということです。

当日の朝、会場内の一部が報道陣に公開されました。

「チクっとしますよ」

午前8時4分、個別に区切られた空間で接種が始まりました。看護師2人の表情はやわらか。接種を受ける1人目は北区に住む69歳の女性でした。接種前にワクチンを注射器に充てんする場面も見ましたが、そこには「COVID-19 Vaccine Moderna」と赤字で書かれた箱がありました。

接種後の経過観察は通常15分、椅子に座っていた人は公開されたとき、全体の3分の1程度でした。説明のパンフレットやスマホ、読書に興じる人など、過ごし方はさまざまです。大きな液晶モニターには「体調の悪い人は申し出て下さい」という案内、その合間に「特殊詐欺に気をつけろ」と高齢者に対するPR、ワクチンだけに「クスリ」とさせる一幕でした。閑話休題。

接種には上記の持参を忘れずに

「会場のなかは広くて、すごくスムーズだった。思っていたより早く進んで行った」

「簡単で早く、混み合わないように工夫されていた。すばらしい」

「淡々と案内されるままに行けば接種できたという感じ」

接種を終えた人の声です。なかには予約時間の午前10時に着くか心配で、朝5時半に起きた人、緊張で前日の晩は眠れなかった人もいましたが、私が見た限りでは混乱はほとんどなく、逆に予約した時間より早く接種を終えた人もいました。多くの人が終了後、晴れやかな表情だったことが印象に残っています。

なぜ、ここで接種したのか……住んでいる区でも申し込んだものの、6月下旬から7月のところが多く、「1日でも早く」と訪れた人が多かったようです。「外国では(ワクチン接種が)進んでいるので、もうちょっと早くてもいいと思うぐらい待っていた」と漏らす人もいました。

一方、区で予約したからここでも接種できると「勘違い」し、来場した人もいました。この人は「門前払い」となっています。

地下鉄コンコースの案内ステッカー

午後には菅義偉総理大臣も視察しました。視察後、「自衛隊らしく組織で整然と接種が行われている。その現場を見て何となくホッとしている」と安堵の表情を見せ、「ワクチン接種加速化という、経験したことがない未知のことに挑戦する。何としてもやり遂げて、国民の皆さんが1日も早く安心した日常を取り戻せるように、内閣を挙げて取り組んで行きたい」と意欲を見せました。また、ワクチンの打ち手の確保に救急救命士ら数万人を確保する考えも示しました。

初日の滑り出しは上々だったようですが、アラを探してしまうのがメディアの悲しい性、課題も少なくありません。初日は1日5000人規模を想定して行われましたが、まもなく1万人規模となります。

懸念されるのが、接種証明書の交付。このとき、2回目の接種予約をするのですが、日時は選べません。30分という想定ですからスピーディに行う必要がありますが、気になるのが人の滞留と動線の混乱です。

中山泰秀防衛副大臣もそこは認識していて、証明書交付のゾーンを拡充することを示唆していました。なお、予約でどうしても都合がつかない場合は後日、Webで取り直すということになります。

また、接種開始に先立つ総合予行訓練=リハーサルのときは、会場内の暑さが懸念されました。開始当日は報道公開が朝であったこと、冷風機が増設されていたことで暑さは感じませんでしたが、プレハブの受付の待合所では扇子を仰ぐ人もいました。夏場になると、暑さへの対応がさらに必要になって来るかも知れません。

案内スタッフも随所に きめ細かい

そして、接種を受けた人で目立ったのは「予約がつながるのに30分待った」「どこも電話がつながらなかった。(予約を)スマホでやってみたけれどあきらめた」という声です。娘や息子に予約してもらったという人も多く、やはり予約という「入口」には課題が残ります。

……と小欄をまとめていたところ、受付で通信トラブルが発生したという情報が入って来ました。また、キャンセルをし忘れる“二重予約”の問題もあるようです。ちなみに区と大規模接種センターでは、ワクチンの種類が違う可能性がありますので、注意が必要です。

リハーサルで自衛隊の男性医官は、「いろいろな問題が起こるだろう。逐次改善しながら進めて行けば、必ず達成できると考えている」。女性医官は、「これまでにない重要なミッション。民間看護師と試行錯誤して調整を進めて来た」と語りました。今後、さまざまなトラブルも考えられますが、新規開店した店の如く、本番を進めながら改善して行くということになりそうです。

接種開始当日は総勢700人(自衛隊員約270人、民間看護師110人、受付など民間関係者320人)で対応にあたりました。

自衛隊のみならず官民混成の一団による今回の試み、何よりもセンターの設置表明から約4週間という短い期間のなかで、ここまでの対応にこぎつけたこと。細かいことはあれど、携わった人々には素直に敬意を表したいと思います。(了)


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