あけの語りびと

「あなたの声は元気ドリンクみたい」~コロナ禍でも“朗読でんわ劇場”で表現を追求

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それぞれの朝は、それぞれの物語を連れてやってきます。

舞台俳優“たきいみき”オフィシャルサイトより

スマホを器用に使いこなす現代の若者にとって、「電話で話す」という電話本来の目的は、だんだん薄れているような気がします。

お金を払ったり、道案内に使ったり、動画を見たり、ゲームをしたり……会話はラインでOK。電話はそもそも、人の声を伝える目的で考案された文明の利器だったはず。この原点を忠実に守り、素晴らしい活動を続けている方がいらっしゃいます。

京都にお住まいの舞台女優・たきいみき氏。今回は、彼女が去年(2020年)から続けている「朗読でんわ劇場」をご紹介しましょう。きっかけは、2020年2月に出された安倍前総理の要請でした。

「政府といたしましては、この1~2週間が感染拡大防止に極めて重要であることを踏まえ、多数の方が集まるような全国的なスポーツ、文化イベント等については大規模な感染リスクがあることを勘案し、今後2週間は、中止、延期または規模縮小等の対応を要請することといたします」

京都在住のたきいさんは、静岡県舞台芸術センター主宰の公演に出演中。もうすぐ中日を迎えるころ、このニュースを耳にしました。公演は中止となり、5月に予定されていた新作の公演も取りやめとなりました。

「目の前って、ホントに真っ暗になるんだな……と思いました」と、たきいさんは振り返ります。

たきいみき さん(舞台俳優“たきいみき”オフィシャルサイトより)

舞台に立つことを禁じられた役者さん、表現してはいけない表現者たち。その胸の絶望と憤りは想像を絶するものでしょう。それでも、たきいさんたちはあきらめませんでした。

「3月に入って私たちは、5月に予定していた舞台の稽古を始めました。でも4月に入って、『これはまだまだダメだ』ということがわかってからは、Zoomによるオンライン稽古を始めたんです。すぐに慣れた人、『こんなの芝居じゃない』と泣きだす人など、さまざまでした」

例年、4月末から5月にかけて開かれる「ふじのくに せかい演劇祭」を映像で配信する、「くものうえ せかい演劇祭」として開催することが決まり、「何ができるか」という企画の募集がありました。その際、たきいさんが応募したのが「朗読でんわ劇場」だったのです。

パリがロックダウンされたとき、フランス国立劇場がオンラインで詩や小説を朗読した取り組みがヒントになったと言います。

「朗読でんわ劇場」のシステムは、利用者が開催日の事前に予約電話をする。作者の死後50年以上の著作権フリーの作品から、読んで欲しいものを選ぶ。子どもへの読み聞かせは、営利目的でないことを出版社に説明して了承を得る。予約日の約束の時間など、たきいさんの方から電話が来る……という仕組みです。

これまでに読んで来た作品は、芥川龍之介、夏目漱石、小川未明、谷崎潤一郎、宮沢賢治など。いずれも30分程度の作品です。運営は京都市の助成金などでまかなうため、利用者の負担はゼロだそうです。

「朗読でんわ劇場」が取り上げられた記事(舞台俳優“たきいみき”オフィシャルサイトより)

「ピンチの人に寄り添い、励ますのが演劇界の役目だと自負しています。危機的状況のなかで、水道や電気などのライフラインのように必要なのが、『人の声』ではないでしょうか?」と、たきいさんは話します。

たくさんの出逢いのなか、特に印象に残っている人たちがいます。あるおばあさんは、「あんたの声は元気ドリンクみたいだね。ありがとう」と言ってくれました。また、朗読を聴きながら涙ぐんでしまう人も少なくないと言います。

「何度も読んで、よく知っているはずの話でした。でも聴いているうちに、これまで知らなかった風景が浮かんで来たんです。朗読ってすごい!」

また、コロナ禍と戦い続けて来た女性は、泣きながら言いました。

「私、自分の心が疲れ果ててしまっていることに初めて気づきました。自分が疲れていることを認めていいんだなと思ったら、楽になりました」

たきいさんは、こう結んでくださいました。

「朗読でんわで寄り添い、皆さんを一所懸命支えて来たと思っていましたが、実は、支えられていたのは私自身だったんだなと思うんです」

番組情報

上柳昌彦 あさぼらけ

月曜 5:00-6:00 火-金曜 4:30-6:00

番組HP

眠い朝、辛い朝、元気な朝、、、、それぞれの気持ちをもって朝を迎える皆さん一人一人に その日一日を10%前向きになってもらえるように心がけているトークラジオ

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