あけの語りびと

「なくしたからって、しからないで」~“サンダルバイバイ”で子どもの水難事故防止を

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それぞれの朝は、それぞれの物語を連れてやってきます。

「なくしたからって、しからないで」~“サンダルバイバイ”で子どもの水難事故防止を

写真提供:NPO法人 AQUAkids safety project

毎年、夏になると必ず起きてしまうのが、子どもの水の事故です。

親や周りの大人たちが、水の事故に関する知識や対応策を知っていたら、尊い命を落とさずに済んだのではないか……そう思った大阪の主婦が「子どもの水の事故をゼロにする」をミッションに、NPO法人「AQUAkids safety project」を設立しました。

「ひとりでも多くの人に水の事故防止について知ってもらい、子どもたちの悲しい事故を減らしたい。そんな想いから、このプロジェクトを立ち上げました」と話すのは、「水と子どもの安全トレーナー」で「水難事故予防講師」の、すがわら えみさん・39歳。

すがわらさんは幼いころ、小児喘息がきっかけで水泳を始め、7歳で4種目(クロール、平泳ぎ、背泳ぎ、バタフライ)をマスターしました。

「なくしたからって、しからないで」~“サンダルバイバイ”で子どもの水難事故防止を

写真提供:NPO法人 AQUAkids safety project

「小学生のとき、岩崎恭子さんが14歳で金メダルを取ったのをテレビで見て、すごく感動したのを覚えています。でも、私は競技よりも、子どもたちに水泳を教えるインストラクターになるのが夢だったんです」

大学卒業後は一般企業に就職しますが、水泳指導への情熱は消えず、障がいを持った子どもたちのための水泳指導をするNPO法人に転職。事務局長も務めました。

結婚後は2人の子どもの育児に追われる日々を送りますが、毎年、子どもの水の事故を伝えるニュースを耳にするたび、心を痛めます。「いまの自分にできることが何かないだろうか」と考えていました。

「水泳のインストラクターだから知っているかもしれないけれど、普通は水の事故をどう予防したらいいか、みんな知らないよ」

夫のこの一言がきっかけで、2年前に「水の事故から子どもを守ろうプロジェクト」を立ち上げました。

「なくしたからって、しからないで」~“サンダルバイバイ”で子どもの水難事故防止を

写真提供:NPO法人 AQUAkids safety project

すがわらさんは、大阪市内の「子育てサークル」やオンラインで講習会を開き、ライフジャケットの着用が事故防止に有効であること、溺れたときの救命処置法などを広めて来ました。さらに、注目した子どもの水難事故の原因がありました。

「流されたサンダルを追いかけて溺れる子どもが、とても多いのです。私が調べただけでも去年(2020年)は3件、今年はすでに2件の死亡事故が起きています」

すがわらさんは、子どもでも理解しやすい「サンダルバイバイ」というフレーズを思いつき、「流されたものは追いかけずに見送って欲しい」……そんな願いを去年5月、SNSで発信しました。それは大きな反響を呼びましたが、今年(2021年)もサンダルにまつわる死亡事故が起きてしまったのです。

「プロジェクトの呼びかけは、まだまだ届いていない」

「なくしたからって、しからないで」~“サンダルバイバイ”で子どもの水難事故防止を

写真提供:NPO法人 AQUAkids safety project

ショックを受けたすがわらさんは、もっと子どもの心に届く方法はないものかと模索します。その際、子どものころに母親から怒られたときの顔を思い出したそうです。

「またサンダルなくして! もう買ってあげへんで!」

「お母さんの怒った顔が子どもの目にちらついて、『これはまずい!』と思い、流されたサンダルを必死に追いかけて事故に遭ってしまうこともあるかも知れない……。でもサンダルを流してしまったとき、叱る親はほとんどいないと思うのです」

そこで思いついたのが、「サンダルバイバイおやこ条約」でした。条文の内容はこうです。

『ぼく・わたしは、サンダルやぼうしやおもちゃがながされたら、じぶんのいのちをまもるため、おいかけずに、バイバイします。なくしたからって、しからないでください』

「なくしたからって、しからないで」~“サンダルバイバイ”で子どもの水難事故防止を

写真提供:NPO法人 AQUAkids safety project

「AQUAkids safety project」のホームページから無料でダウンロードできるので、それをプリントアウトします。子どもはそれを読んで署名し、さらに親も署名欄に署名して、家の目立つ場所に貼っておく……というものです。

「子どもに何度言っても伝わる気がしなかったけれど、『おやこ条約』は子どもがすぐ理解し、伝わったのを実感しました!」という親御さんからの声が多く寄せられています。

最後に、すがわらさんに水辺で遊ぶときの注意点を伺いました。

「水辺は本来、楽しいところです。ただし水辺の楽しさは、安全の向こう側にあると思っています。例えば、水辺に来たら大人が先に入って深さを調べたり、流れを確かめたりする。さらに安全に遊ぶためには、ライフジャケットを着させることで、初めて“楽しさという向こう側”に行けると思うんです。『水難事故がゼロになる日』は難しいと思いますが、ゼロに近づける日はきっと来ると信じて、これからも活動を続けて行きます」

「なくしたからって、しからないで」~“サンダルバイバイ”で子どもの水難事故防止を

写真提供:NPO法人 AQUAkids safety project

■NPO法人「AQUAkids safety project」
https://aquaproject721.wixsite.com/website

■サンダルバイバイのうた(YouTube)
https://www.youtube.com/watch?v=aHJ2q9SDxq8

■サンダルバイバイおやこ条約(YouTube)
https://www.youtube.com/watch?v=pasFMekwUpg

番組情報

上柳昌彦 あさぼらけ

月曜 5:00-6:00 火-金曜 4:30-6:00

番組HP

眠い朝、辛い朝、元気な朝、、、、それぞれの気持ちをもって朝を迎える皆さん一人一人に その日一日を10%前向きになってもらえるように心がけているトークラジオ

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