災害時にも食事を楽しむ知恵【みんなの防災】
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「報道部畑中デスクの独り言」(第261回)
ニッポン放送報道部畑中デスクのニュースコラム。今回は、災害時にも簡単に調理できる「防災レシピ」について---
今週、ニッポン放送は防災ウィークです。9月1日は「防災の日」、言わずと知れた1923年に関東大震災が起きた日です。
あれから98年になりますが、今年(2021年)も静岡県熱海市の土石流で大きな被害が出ました。また、お盆には季節外れの前線が長く居座ったことで、西日本を中心に長雨に見舞われ、多くの河川が氾濫しました。
2018年の西日本豪雨、2019年の東日本台風、2020年の熊本豪雨……地球温暖化の影響も指摘されるなか、災害はもはや「忘れたころにやって来る」出来事ではありません。忘れる前に、いつ来てもおかしくないものとして備えておく必要があります。
先日、東京・江東区にある東京ガスのビルで、災害時にも簡単に調理できるメニュー「防災レシピ」の実演を見る機会がありました。その名も「お湯ポチャ調理」、当日は「麻婆高野豆腐丼」がつくられました。
カギとなるのはポリ袋、これでご飯を炊き、麻婆豆腐をつくります。ポリ袋は「高密度ポリエチレン」の表記があるものを2つ用意します。
1つのポリ袋に無洗米と水を入れます。そしてもう1つのポリ袋に麻婆豆腐の素、水を入れた高野豆腐を入れます。それらをお湯の入った鍋に入れるだけ。
高野豆腐の袋はもんで、よく混ぜます。また、食材を入れた2つのポリ袋は空気を抜きながら根元からねじりあげて、上の方で結ぶのがコツです。
鍋底には袋がくっつかないように皿を敷きます。沸騰したお湯で、中火で約20分間加熱したら出来上がりです(ご飯はその後、火を止めてさらに10分間蒸らします)。
実際にできたものを、感染対策を万全にしながら試食しましたが、何よりもご飯が「普通においしく炊けている」ことに驚きました。
また、高野豆腐を使った麻婆豆腐も初めて食しましたが、通常の麻婆豆腐がカレーと同じような、いわば「ルウ」のような食感なのに対し、こちらは麻婆が豆腐に染み込み、豆腐の存在感を感じました。高野豆腐だけに栄養価も高く、しっかりと“腹もちのする”メニューであったと思います。
高野豆腐というのはご存知の通り、豆腐を凍結して低温で熟成させ、乾燥させたもので、正式には「凍り豆腐」と言います。高野山で真言宗の僧侶が安土桃山時代につくったことから、このような通称がつけられました。
精進料理の1つですが、高野山の土産物としても広がって行きました。いわば日本古来の「保存食」でもあり、先人の知恵は尊いと改めて感じるひとときでもありました。そこに防災レシピの新たな“知恵”が加わったわけです。
災害で問題となるのは、やはりライフラインの寸断です。今回のメニューは、電気・ガス・水道などが寸断されたときに、カセットコンロと少量の水を使用することを想定したものです。
ちなみに鍋のお湯は調理後も使うことができますし、極端なことを言うと、袋のなかを密閉すれば、どんな水でも活用できるということになります。
この調理法は、ご飯だけでなく、餅やパスタにも応用できるそうです。災害時に備えて、非常食を用意されている方も多いと思います。
しかし、そうした非常時の食事こそ「ただ食べられればいい」のではなく、「おいしく楽しめるもの」であるべし……これもまた、大切な防災対策の1つと言えましょう。(了)
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