東京都医師会会長の尾﨑治夫氏が11月12日、ニッポン放送「モーニングライフアップ 今日の早起きドクター」に出演。HPVワクチンについて解説した。
国によるHPVワクチンの積極的勧奨が中止され、接種率が低下
飯田浩司アナウンサー)今回はHPVワクチンについて伺います。子宮頸がんなどの原因となるヒトパピローマウイルス(HPV)への感染を防ぐHPVワクチンですが、日本では小学校6年生~高校1年生までの女性が無料で打てる定期接種があります。しかし副反応等、一連の報道がセンセーショナルに報じられたということもあり、国が積極的勧奨を差し控えて8年以上経ち、いまは接種率が激減しています。いろいろなところに影響が出ていますか?
尾﨑)日本では、胃がん・肺がん・大腸がん・肝臓がんなどをみても、ほとんどのがんの数は減っているのですけれど、子宮頸がんだけは減らずに増えているのです。HPVワクチンに関して、積極的勧奨を止めてしまったための影響が出ているのだと思います。
HPVワクチン接種によって子宮頸がんの95%が防げる
飯田)若い女性が打つというのが特徴的で、副反応等についてもいろいろと言われています。特に反対される方からは、「検査をすればいいではないか」という意見が出るのですが、それだけでは足りないということですよね。
尾﨑)そうですね。検診を毎年受けるということは、1つの有効な手段にはなりますけれども、ワクチンを打てば元を断つことができるわけです。もちろん検診も大事ですけれども、両方やって、ほぼ完璧に近く子宮頸がんが予防できるのだと思います。やはりワクチンは必要だろうということです。
飯田)検診とワクチンとで。
尾﨑)ただ、副反応が出ないということはないので、出る可能性も考えていただかなければなりませんが、HPVワクチンだけが副反応が強いというような結果は、さまざまなデータからもありません。慎重さは大事ですけれども、子宮頸がんの95%はヒトパピローマウイルスの感染が原因と言われています。それだけはっきりしていますので、感染を防ぐことが子宮頸がんの発症予防につながるのです。
厚労省の専門部会でワクチンの積極的勧奨再開が決定
尾﨑)子宮頸がんは20代~40代の女性に多いのです。日本では毎年1万人が罹っていて、約2800~3000人が亡くなられています。防げる病気ですので、私はワクチンの積極的勧奨を再開していただくことが大事だと思います。
飯田)国がワクチンの積極的勧奨を再開するということが。
尾﨑)ワクチンの効果が高く出るのは、ヒトパピローマウイルス(HPV)に感染していない方がワクチンを打って抗体をつくっておくことです。抗体があれば、ウイルスが来ても入って来ない。つまり感染を完全に防げるわけなのです。
飯田)ワクチンを接種していれば。
尾﨑)このウイルスはほとんどが性行為によって感染すると言われています。ですので、そういう年齢になってからではなく、ワクチン接種の対象年齢である小学校6年生~高校1年生までの間に打っていただいて、抗体をつくっておくことが大切です。
接種の機会を逃した女性も無料接種が可能に
新行市佳アナウンサー)新型コロナの影響でHPVワクチンを受けたかったのだけれども、小学校6年生~高校1年生の期間を逃してしまった方々もいらっしゃると思うのですが、自治体のホームページを見ると、そういった方たち向けに期間を延長しているのですよね。
尾﨑)そうですね。キャッチアップ接種と言って、コロナなどで定期接種の対象年齢を過ぎてしまった方でも、来年度以降、無料接種が可能になる予定です。
番組情報
医師が週替わりで登場。
飯田浩司アナウンサーと新行市佳アナウンサーが、健康に関する疑問や予防法、症状、治療法などを聞きます