東京都医師会副会長で「平成立石病院」理事長の猪口正孝氏が12月27日、ニッポン放送「モーニングライフアップ 今日の早起きドクター」に出演。新型コロナと闘った医療界のこの1年を振り返って語った。
新型コロナで始まり、新型コロナで終わった
飯田浩司アナウンサー)いよいよ2021年が終わります。この1年間はどのような1年でしたか?
猪口)苦しかったですね。コロナで始まり、収束せず、まだ続いています。いろいろなことが起きましたから、医療界全体が苦しかった。
飯田)2021年の年明け前から感染者が増え始め、第3波を迎え、春は第4波、そして夏は猛烈な第5波でした。そしていま、オミクロン株が来ている。2020年の年末から対応をし続けて来たということですか?
デルタ株により、それまでの方法が使えなくなった
猪口)そうですね。年明けのところで山が1つありました。そのときは高齢者中心の感染で、かなりひっ迫した状況になりました。高齢者施設でクラスターが発生して、医療機関は一気に患者さんを抱えなくてはなりませんでした。
飯田)高齢者施設でのクラスターで。
猪口)同じ轍を踏まないように、第4波のときは早めに手を打ち、うまく抑えられたのですが、その方法は第5波のときには使えませんでした。感染の形が違うデルタ株によって、中高年層の働き盛りの人たちの感染が増えたのです。
飯田)デルタ株によって。
猪口)医療として違う形を取らなければいけなかった。波の形が1つ1つ違うというのは、辛かったですね。予想していたことと違うことが起こる。「備えておこう」という経験値が乗り越えられてしまうのです。
一気に進めることができた日本のワクチン接種
飯田)ワクチン接種がある程度終わっていた高齢の方々はケアできたけれども、まだ接種していない現役世代に波が来てしまった。現場の先生たちは「走りながら考える」という感じでしたか?
猪口)途中からワクチンが若者層にも広がり、国民全体の接種率が上がり、第5波が収まりました。「ギリギリ間に合った」という感じです。日本のワクチン接種は、打ち始めたのは欧米よりも遅かったのですが、一気に打つことができました。
医療従事者や高齢者から先に打つワクチン接種は日本独特のやり方
飯田)日本のように医療従事者や高齢者など、リスクの高い方から順に打つということは、諸外国では、あまり行われていないのですよね。
猪口)日本がワクチンを打とうとした時期は、第5波が来ようとしているときでした。その際、いまから打つのであれば、お年寄りの方から先に打って、守るべき方を守って行くという方法で行いました。途中から若い人も含めてワクチン接種率が上がって行きました。行動範囲の広い人たちにあとから打って、効果が絶大になったわけです。
番組情報
医師が週替わりで登場。
飯田浩司アナウンサーと新行市佳アナウンサーが、健康に関する疑問や予防法、症状、治療法などを聞きます