糖尿病によって失明に至ることもある「糖尿病網膜症」を予防するには
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東京都医師会理事で「ささき眼科」院長の佐々木聡氏が2月1日、ニッポン放送「モーニングライフアップ 今日の早起きドクター」に出演。中途失明の可能性のある病気について解説した。
中途失明の可能性のある病気 ~「緑内障」「網膜色素変性症」「糖尿病網膜症」
飯田浩司アナウンサー)今回は中途失明の可能性のある病気についてお伺いしますが、どのような病気が考えられますか?
佐々木)詳しい研究結果が最近出ています。それによりますと、第1位が「緑内障」で28.9%です。第2位が「網膜色素変性症」で14.6%。第3位が「糖尿病網膜症」で13.0%。以下、「黄斑変性」、「網脈絡膜萎縮」、「視神経萎縮」などが続きます。
50歳以上で多い病気の順番は「緑内障」「糖尿病網膜症」「網膜色素変性症」、50歳以下は「網膜色素変性症」「糖尿病網膜症」「緑内障」
飯田)年齢によって、リスクの高低が変わる病気はあるのですか?
佐々木)50歳以上と50歳以下に区切って調べた結果ですと、50歳以上の方では「緑内障」が最も多く、2番目が「糖尿病網膜症」、3番目が「網膜色素変性症」となります。逆に50歳以下では、「網膜色素変性症」が最多となります。2番目が「糖尿病網膜症」で、「緑内障」は3番目になります。
飯田)どのようなことが原因だと考えられますか?
佐々木)「緑内障」は進行性の病気で、年齢が高くなるほど、障害の程度が強くなります。「網膜色素変性症」は遺伝性の病気ですので、若いうちから症状が出やすいです。
新行市佳アナウンサー)ある程度の年齢になったら、眼科検診は積極的に行った方がいいですか?
佐々木)もちろんそうですね。糖尿病に限らず、検診を受けることで発見できる病気はたくさんありますので、非常に大事なことだと思います。
糖分の高い血液が網膜の血管を流れることによって起こる「糖尿病網膜症」
新行)「糖尿病網膜症」に対しては、どのような治療を行うのでしょうか?
佐々木)「糖尿病網膜症」は、糖分の高い血液が眼底の網膜の血管を流れることにより、眼底の血管が傷んで起こります。
飯田)眼底の血管が。
佐々木)小さい血管から壊れて行きますので、そこで小さい出血が起き、徐々に広がって行く。壊れた血管から先には血が行かなくなりますので、その部分の細胞は酸素不足や栄養不足になり、限界に達してしまうのです。
飯田)血が届かず。
佐々木)「酸素が欲しい」、「栄養が欲しい」ということで、細胞が「血管増殖因子」というものを出します。そうすると「新生血管」という血管が生えて来るのです。これが「増殖糖尿病網膜症」というものになります。増殖した組織が目のなかの組織を壊してしまう病気が、「糖尿病網膜症」なのです。
血糖値をコントロールして、糖分の高い血液が目の血管を壊さないようにする
飯田)糖分が問題になるのですね。
佐々木)そうなのです。まず大事なのは、血糖値をコントロールして、糖分の高い血液が目の血管を壊さないようにすることです。「単純網膜症」という、はじめの出血ぐらいの段階であれば、血糖コントロールによって正常な状態に戻せます。ところが、症状が進んで「増殖網膜症」の一歩手前である「増殖前網膜症」という時期になると、網膜をレーザーで焼く「網膜光凝固術」という治療が行われます。
飯田)それによって、ある程度、視力を保つことができるのですか?
佐々木)「増殖網膜症」への移行を防ぐことができます。
スポーツなどでの外傷によって起こる「裂孔原性網膜剥離」
飯田)網膜の話が出ましたが、スポーツ選手が「網膜剥離」になったという話を聞くことがあります。それとは違う話ですか?
佐々木)スポーツなどでの外傷によって起きるのは、「裂孔原性網膜剥離」と言います。強い衝撃によって傷ついた網膜から網膜剥離が起きます。その場合は「網膜の傷を治すこと」と「はがれた網膜をつける」という治療法になります。
飯田)はがれた網膜がくっついてくれれば、ある程度は元に戻るのですか?
佐々木)元に戻ります。
番組情報
医師が週替わりで登場。
飯田浩司アナウンサーと新行市佳アナウンサーが、健康に関する疑問や予防法、症状、治療法などを聞きます