東京都医師会理事で「かずえキッズクリニック」院長の小児科医、川上一恵氏が3月11日、ニッポン放送「モーニングライフアップ 今日の早起きドクター」に出演。コロナ禍における子どもの教育について解説した。
コロナ禍での子どもの生活を考え直す時期に来ている
飯田浩司アナウンサー)約2年間のコロナ禍で、社会そのものが変わってしまっていますが、子どもに対しての影響はいかがですか?
川上)大きいと思います。子どもの1年は大人の1年とは違い、大きく成長しますので、何もできないという状況は、やはり学びの機会を失っていると思います。最初は病気の質もわかりませんでしたし、大人が次々に亡くなって、子どもにとっての大切な方の命に関わりますから、「お父さんやお母さん、おじいちゃん、おばあちゃんを守るために少し我慢しようね」という対応になったのは仕方なかったと思います。
飯田)初期の段階では。
川上)しかし、いまは大人のワクチン接種率が90%近くまで進んでいて、大人自身を感染から守れるようになって来たので、そろそろ子どもらしく育って行く、成長して行くということを意識し、子どもの生活を考え直す時期ではないかと思います。
諦めてしまっている子ども
飯田)学校での部活動もできないということですが、プロスポーツは再開しています。子どもたちはどう思っているのでしょうか? 大人の背中を見ていると思うのですが。
川上)諦めの気持ちになってしまっていると思うのです。だからやる気がなくなって来てしまう。特に中学生、高校生、大学生あたりは、本来ならば、人生でいちばん楽しいはずの時期に何もさせてもらえない。友達とも密になって遊ぶことができない。子どもの遊びはただの遊びではなく、学びのための遊びですから、それができない影響が10年後、20年後にどのように表れるかということは、想像ができません。
このままでは「学校で何の行事も経験しない」子どもが出て来る ~「何ができるか」を考えるべき
飯田)社会全体で大人側の考え方を変えなければいけないということですか?
川上)そうですね。この2年間は仕方がなかったと思います。でも、これから先、コロナがすぐに収まる様子はなさそうですから、「何ができるか」を見つめ直して考えるべきです。大人だけでなく、子ども自身を巻き込んで考え、実行して行く必要があると思います。
飯田)諦めの話が出ましたが、「何がしたい?」と子どもに聞くと、いまならまだ「これがしたい」と返って来ますか?
川上)多分、出ると思います。各学校で楽しい時代を知っている子がまだいますから。
飯田)なるほど。確かに3年経ってしまうと、何の行事も経験しないまま学校を卒業してしまう子が出て来るのですね。文化の断絶のようなことが起こりそうですね。
川上)そうなってもおかしくないと思います。特に中学、高校の公立学校は3年間だけですから、ギリギリのところだと思います。
いいバランスの取り方をみんなで考える
飯田)これは子どもだけの話ではなく、社会全体の話になって来ますね。
川上)とても難しい問題ですし、安易に舵を切ることもできないと思います。北欧の国々で「子どもたちはマスクをしなくてもよい」とした国では、子どもの感染者数が増えています。バランス感覚が求められているのです。安易にマスクを止めて自由にすればいいとは言えませんし、いまのようながんじがらめの状態を続ければいいというわけでもありません。
飯田)バランスの取り方を、1人でなくみんなで考える。
川上)そうですね。教育関係者や私たち医療関係者、保護者の方、そして何より子どもたち自身がどうしたいのかを大切にする必要があると思います。
番組情報
医師が週替わりで登場。
飯田浩司アナウンサーと新行市佳アナウンサーが、健康に関する疑問や予防法、症状、治療法などを聞きます