これからの駅弁に大切な「2つの条件」 ~広島駅弁・広島駅弁当

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【ライター望月の駅弁膝栗毛】
「駅弁」食べ歩き20年・5000個の放送作家・ライター望月が、自分の足で現地へ足を運びながら名作・新作合わせて、「いま味わうべき駅弁」をご紹介します。

地元・広島の皆さんに愛されている「広島駅弁当」の食。駅のうどん店には、常に多くの人が出入りし、駅弁のみならず、惣菜や配食、給食といった、さまざまなシチュエーションで、地元の皆さんとの接点があります。その広島駅弁当のトップは、原点の「駅弁」について、どのように考えているのか? 駅弁の今後の展望を含めて、たっぷりとお話いただきました。

500系新幹線電車「こだま」、山陽新幹線・広島~東広島間

「駅弁屋さんの厨房ですよ!」第34弾・広島駅弁当編(第6回/全6回)

今年(2022年)で、登場から25周年を迎えた山陽新幹線の500系新幹線電車。まるで戦闘機のような顔つきが特徴で、いまも多くの人に愛されている車両です。平成22(2010)年まで16両の「のぞみ」号として東京駅に乗り入れていましたが、いまは短い8両編成で山陽新幹線の「こだま」として活躍しています。一部編成はリニューアルが行われている他、キャラクターとのコラボレーションも継続的に行われています。

かつての「かきめし」の丼を手に、広島駅弁当株式会社・中島和雄代表取締役

広島駅・新山口駅・博多駅の駅弁はもちろん、広島市周辺の惣菜、配食、給食など、さまざまな食に関する事業を幅広く手掛けている広島駅弁当株式会社。中島和雄代表取締役は、この20年あまり、ピンチの会社を建て直し、新たなビジネスを展開してきました。2021年で前身の中島改良軒創業から120年を迎え、改めて、本業の「駅弁」にも、力を入れていきたいと話します。中島社長のインタビュー、いよいよ完結編です。

赤いうどんが面白い! 広島駅の名物「カープうどん」

●広島市民のソウルフード! 「広島駅のうどん」

―広島駅では駅弁はもちろん、「うどん」も人気ですよね?

中島:私が昭和46(1971)年に入社した当時は、24時間営業だった1番ホームのお店で「うどん」が1日2000杯ぐらい売れていました。学生時代に進学で上京したり、洋品屋さんや本屋さんが大阪などに仕入れに行くときに、在来線のホームで、うどんを食べて旅立った思い出を話して下さるお客様がいらっしゃいます。広島駅のうどんは、広島市民のソウルフードとも言える存在になっていると思います。おかげさまで、いまも改札内の驛麺家では、1日1000杯程度売れています。

―おつゆが美味しいですね!

中島:駅弁も含め、料理は「だし」なんです。調理のこだわりは、やっぱり煮物ですよね。揚げたり、焼いたりは、どうにでもできます。企業秘密ですが、穴子にも柔らかく味わっていただくための煮る方法があるんです。もちろん、(よりよい味を届けるために)「だし」の見直しも行っています。

広島駅弁当売店

●駅弁に大切なことは、「品質」と「創造性」!

―中島社長にとって、「駅弁」に大切なことは何ですか?

中島:かつて、NRE(昔の日本食堂、現・JR東日本クロスステーションフーズカンパニー)の社長を務められた竹田正興さんという方が『品質求道』という本を出しています。やっぱり、駅弁は「品質」です。正直でないといけません。そして、安全・安心です。嘘があってはいけないということです。皆さまから信頼していただける食品業者でなければいけないと考えています。

―「駅弁屋さん」にとって、これから大事なことは何でしょうか?

中島:駅弁業者には100年企業が多くありますが、国鉄やJRさんからの指示を受けて、生き延びてきた側面もあります。人から指示されるのではなく、駅弁業者が自ら顧客創造していかなくてはいけないと感じています。お客様は駅弁を自身の欲求を満たすために、お買い求めになります。駅弁は食文化であると同時に精神文化でもあるんです。例えば、昔、父親と出かけたときに一緒に駅弁を食べた懐かしさを求めて1500円を出して下さる。“お客様の心に響く”ために、どういう“こと”を作ればいいかを、常に考えています。

キロ47形気動車・快速「etSETOra」、呉線・忠海~安芸幸崎間

●瀬戸内海を眺めて、広島の駅弁を!

―日本の「駅弁」をどのように盛り上げていきたいですか?

中島:全国の駅弁屋さんはどんどん数を減らしています。駅弁屋さんの数が減るということは、駅弁文化の衰退ですから、いまある駅弁業者も、単なる弁当店になることを意味します。それだけは何としても避けたい。コンビニのお弁当は全国画一が基本です。駅弁は、それぞれ文化の違う地域が共生して成り立つものだと思います。その意味でも「ご当地性」を大事にしていきたいと思います。

―「広島駅弁当」の駅弁、どんな景色を眺めていただくのがいちばん美味しいですか?

中島:ぜひ瀬戸内海を見て召し上がっていただきたいです。呉線の竹原の先、忠海(ただのうみ)の辺りでしょう。若山牧水ではありませんが、“多島美”を感じるには、瀬戸内海がいちばん。日本の地中海のようなものです。いまは、週末を中心に観光列車の「etSETOra(エトセトラ)」も走っていますし、車内ではオリジナルのお酒も飲めます。時間帯を選んで、空いていれば普通列車でお弁当をいただいても美味しいと思います。

活あなごめし

瀬戸内エリアを代表する駅弁といえば、やっぱり「あなごめし」。各社から出されている分、食べくらべが楽しい食材です。広島駅弁当には、名物駅弁「夫婦あなごめし」に加えて、「活あなごめし」(1400円)もあります。こちらは活〆の穴子に秘伝のタレをつけて、香ばしく焼き上げたという、焼き穴子が楽しめる駅弁。昭和59(1984)年に発売して人気を集めたあなごめしは焼き穴子でしたから、“原点回帰”を果たした駅弁とも云えます。

【おしながき】
・醤油ご飯
・焼き穴子
・奈良漬け
・ガリ

活あなごめし

紙蓋を開けて、経木の折を手にすると、香ばしい焼き穴子が、ご飯の上いっぱいに敷き詰められています。広島駅弁当自家製のたれと焼き穴子の香ばしさ、そしてふんわりとした穴子の食感が相まって箸が進みます。奈良漬けとガリだけの付け合わせも、シンプルでいいですね。これにお好みで“追いだれ”も楽しめるようになっています。

あなごめしのたれを手作業で準備する

広島駅弁当の調理場では、弁当に封入する自家製のたれが1本1本手作業で作られていました。広島駅売店にたくさん並んでいる駅弁でも、機械的に作られているのではなく、このように1つずつ人の手を介して作られている様子を見ると、まるで、“自分のために”お弁当を作ってくれたかのような温もりを感じるもの。この「人の温もり」が、旅の思い出を心のなかで大きく育ててくれるんですよね。

N700S新幹線電車「のぞみ」、山陽新幹線・広島~東広島間

広島を発車した山陽新幹線「のぞみ」号が、広島の旅の思い出も載せて、大阪・東京へ向け、スピードを上げていきます。前身の中島改良軒から数えれば120年以上の歴史を誇り、広島のさまざまな食のシーンを支えている広島駅弁当。その1丁目1番地、「駅弁」への思いの強さが、積極的なスケールの大きいアクションへとつながっていると、中島社長に伺って感じました。明治以来の歴史の重みも一緒に味わいたい、広島駅弁当の駅弁です。

連載情報

ライター望月の駅弁膝栗毛

「駅弁」食べ歩き15年の放送作家が「1日1駅弁」ひたすら紹介!

著者:望月崇史
昭和50(1975)年、静岡県生まれ。早稲田大学在学中から、放送作家に。ラジオ番組をきっかけに始めた全国の駅弁食べ歩きは15年以上、およそ5000個!放送の合間に、ひたすら鉄道に乗り、駅弁を食して温泉に入る生活を送る。ニッポン放送「ライター望月の駅弁膝栗毛」における1日1駅弁のウェブサイト連載をはじめ、「鉄道のある旅」をテーマとした記事の連載を行っている。日本旅のペンクラブ理事。
駅弁ブログ・ライター望月の駅弁いい気分 https://ameblo.jp/ekiben-e-kibun/

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