「駅弁」食べ歩き20年・5000個の放送作家・ライター望月が、自分の足で現地へ足を運びながら名作・新作合わせて、「いま味わうべき駅弁」をご紹介します。
日本の鉄道150年の歴史で、ずっと議論が続いてきたテーマといえば、「レールの幅」。150年前、1067mmの狭軌で開業したことが、1435mmの標準軌との間で、さまざまな問題を、起こしてきました。大正時代の改軌論争はもちろん、いまも青函トンネルの貨物列車や、西九州新幹線の着工問題もレールの幅がポイントとなっています。そんな積年の課題に、1つの解を出したのが、在来線を改軌して生まれた「山形新幹線」かも知れません。
米沢を出た山形新幹線「つばさ」号が板谷峠へ勾配を登っていきます。秋本番の峠道は、紅葉の時期に当たれば、それは美しい車窓。新幹線車両に乗りながら、ゆっくり風景が移り変わる、在来線の旅が楽しめるのは、山形新幹線「つばさ」ならではの醍醐味ですね。とはいえ、より安定した輸送を実現するために、新たなトンネルも計画されているようです。鉄道の旅も「いま楽しめるもの」は、しっかりと満喫しておきたいものです。
山形新幹線30周年記念弁当は第2弾に入りました。9月~10月の間は、米沢駅弁の新杵屋が製造する「やまがた肉三昧どまん中」(1500円)が販売されています。スリーブ式の包装には、山形・置賜地方の飯豊連峰を望みながら走る「つばさ」が描かれています。また裏側には、満開の桜の下、山形駅近くの霞城公園に沿って走る「つばさ」号も登場。ちなみに、こちらの絵は、JRの社員さんが描いたのだそうです。
【おしながき】
・ご飯(山形県産米どまんなか) わさび
・米沢牛の秘伝タレの焼肉
・天元豚の西京焼き
・山形さくらんぼ鶏の特製塩タレの蒸し焼き
・玉子そぼろ
・蒲鉾
・玉子焼き
・煮物(里芋、人参)
・にしん昆布巻き
・赤かぶ漬け
・若桃の甘露煮
メモリアルな駅弁に相応しく、米沢牛、天元豚、さくらんぼ鶏という、山形のブランド肉が、山形県産・どまんなかのご飯の上に勢ぞろいしました。米沢牛は新杵屋秘伝のたれで、焼き上げたもの。天元豚は隠し味に甘酒・魚醤を使うひと手間をかけ、ユニークな味わい。そして、さくらんぼ鶏は「牛肉どまん中(しお)」で使われている塩だれで味をつけていて、肉の旨味を引き出しながら、ちょっぴり贅沢な「どまん中」に仕上がっています。ちなみに、通常の「牛肉どまん中」は、30年前、山形新幹線開業を記念してできた駅弁の1つです。
全車指定席となって安心して座れるようになった山形新幹線「つばさ」号。福島~山形・新庄間の在来線区間では、従来の自由席に相当する特定特急券を買い求めることで、空席に座ることができるようになっています。実りの秋を迎えて、新米、新そばをはじめ、食べ物が特に美味しい季節。そして、朝夕の冷え込みが進んでくると、温泉も恋しいもの。30周年の山形新幹線で、ニッポンの秋を満喫したくなりました。
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連載情報
ライター望月の駅弁膝栗毛
「駅弁」食べ歩き15年の放送作家が「1日1駅弁」ひたすら紹介!
著者:望月崇史
昭和50(1975)年、静岡県生まれ。早稲田大学在学中から、放送作家に。ラジオ番組をきっかけに始めた全国の駅弁食べ歩きは15年以上、およそ5000個!放送の合間に、ひたすら鉄道に乗り、駅弁を食して温泉に入る生活を送る。ニッポン放送「ライター望月の駅弁膝栗毛」における1日1駅弁のウェブサイト連載をはじめ、「鉄道のある旅」をテーマとした記事の連載を行っている。日本旅のペンクラブ理事。
駅弁ブログ・ライター望月の駅弁いい気分 https://ameblo.jp/ekiben-e-kibun/