女性の「更年期うつ」はなぜ起こるのか
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東京都医師会副会長で「ひらかわクリニック」院長の平川博之氏が1月20日、ニッポン放送「モーニングライフアップ 今日の早起きドクター」に出演。女性の「更年期うつ」について語った。
女性の「更年期うつ」 ~原因の1つに女性ホルモンの減少
新行市佳アナウンサー)「更年期うつ」について伺います。「産後うつ」になる理由の1つに、急激な女性ホルモンの低下があるそうですが、歳を重ねるとホルモン量は減っていきますよね。
平川)「更年期うつ」の背景には、女性ホルモン減少の影響があると考えられています。特にこの時期、女性ホルモンの「エストロゲン」が急激に低下しますので、その結果、リラックス効果や幸福感の源である「セロトニン」(幸せホルモン)の分泌も減少していくのです。
人生においてさまざまな変化が起こる女性の更年期の時期
新行)ホルモンの減少以外にも原因はあるのでしょうか?
平川)女性の更年期の時期は、人生において変化が重なる時期だと思います。手塩にかけたお子さんが成人して出ていってしまう「空の巣症候群」などもあります。
新行)空の巣症候群。
平川)あるいは会社勤めの方が急な派遣切りにあったり、逆に仕事が認められて重要なポストに就くこともあると思います。
新行)仕事では。
平川)なかには子どもを育てながら親の介護をするような、ダブルケアの状況になる場合もあります。この時期はさまざまなことが女性の周辺で起こりやすい時期でもあります。
新行)更年期うつは、徐々に進行するというより、突然発症するのですか?
平川)人それぞれですけれども、急にこの時期、特異的に現れる傾向があります。
男性の場合はホルモンバランスの変化が緩やか
平川)一方、男性の更年期障害もないことはないのですが、男性の場合はホルモンバランスの変化が緩やかで、時間を掛けて変化するため、女性ほど顕著に出てくることは少ないと思います。
新行)女性の方が、短期間でのホルモン減少が激しいということですか?
平川)おっしゃる通りです。
エストロゲンの分泌低下を抑えるような治療や、抗不安薬や抗うつ薬、漢方薬を使う治療も
新行)どのような治療方法があるのでしょうか?
平川)エストロゲンの分泌低下が明らかですから、婦人科の先生が血液検査で測定し、数値に合わせてエストロゲンの分泌低下を抑えるような治療も行います。また、精神科によっては症状に合わせて、抗不安薬や抗うつ薬、漢方薬を使うことがあります。
自分時間を楽しむことが大切
新行)薬以外の治療方法はありますか?
平川)家庭内での夫婦の会話や、環境調整も大事です。いまいる場所が過ごしやすく、安心できるかどうかは大事です。周囲の支援も必要になります。
新行)周囲の支援も。
平川)運動などで気晴らしすることをお勧めします。大仕事をされて一段落ついたわけですから、ここは自分をいたわってあげて、遠慮なく自分時間を楽しんでいただきたいと思います。
新行)自分の趣味に没頭するということでもいいのですか?
平川)そうですね。あるいは新しい勉強をするとか。
会社でのサポートも増えつつある
新行)最近では、会社でのサポートも増えてきているようです。
平川)最近、女性特有のホルモンバランスによる変化が注目を浴びています。会社での生理休暇は以前からありましたが、取りにくかったところがあります。しかし、いまでは周囲の方の理解もあり、取りやすくなっています。少しずつ女性サポートは増えていると思います。
新行)女性特有のうつに対する理解も深まってきましたよね。
平川)いずれにしてもこの問題については、今回のコロナ禍でも女性の厳しさが注目されつつあるので、政府も会社も含め、みんなで対応することが大事だと思います。これからも政府には、きちんと政策を進めていただきたいと思います。
番組情報
医師が週替わりで登場。
飯田浩司アナウンサーと新行市佳アナウンサーが、健康に関する疑問や予防法、症状、治療法などを聞きます