医師が警鐘 海外から「そんなバカな話はない」と一笑される、日本の「公的医療保険制度」とは

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3月22日(水)、赤十字社医療センターの化学療法科部長、がん専門の医師である國頭英夫先生が、ジャーナリストの笹井恵里子がパーソナリティを務めるラジオ番組「ドクターズボイス〜根拠ある健康医療情報に迫る!〜」(ニッポン放送・毎週水曜21時~21時20分)にゲスト出演。番組最終回となったこの日は「持続可能な医療」をテーマに、若い人や子どもたちにも国民皆保険制度を引き継ぎ、良い医療を受けられるために、私たちにできる取り組みについて語った。

医師が警鐘 海外から「そんなバカな話はない」と一笑される、日本の「公的医療保険制度」とは

日本では「国民皆保険制度」と、一定以上の高額医療は保険でカバーされる「高額療養費制度」によって国民は守られている。しかし今後、医療の高度化によって、医療費や保険料の上昇が予想されている。

■恐ろしく幸せな日本の「高額療養費制度」

國頭先生:アメリカの公的な保険医療が不十分だというのは、皆さんご存知ですよね? つまり、アメリカでちゃんとした高度な医療を受けたいと思ったら、自分で保険会社に入り、医療費はまかなわなくてはいけません。ですが、保険会社も商売です。気前よく払っていたら破産しますので、保険料をどんどん値上げするわけです。

2028年には、アメリカの普通のサラリーマンは“飲まず食わずで全収入を”医療保険につぎこまないと、自分もしくは家族が大病した時、ベストな医療をうけられなくなる、と推定されています。

笹井:日本にいると、他人事のような感じがするかもしれませんが、國頭先生は10年以上前から、「このままでは日本も危ない!」と訴えられていますよね。

國頭先生:日本は「高額療養費制度」があるので、みんなカバーしてくれます。ですから、潰れる時はみんなまとめて潰れるんじゃないか、と私は予想しています。

笹井:「潰れる時はみんなまとめて潰れる」……ちょっと恐ろしいですね。

一定以上の高額医療は保険でカバーされる「高額療養費制度」ですが、高収入の人でも95%を公費で補填してもらえるんですよね。

國頭先生:ようするに、それだけ医療費が高くなり過ぎて、みんなまともに払えないくらいなんです。

非常に幸せなシステムで、日本のこの「高額療養費制度」のことをヨーロッパ人に説明しても、「そんなバカな話はない!」と一笑されるそうです。このことを、私がとある講演で話したら、日本で開業されている韓国の先生が、「まったくその通りだ。自分が韓国に帰って日本の高額療養費制度のことを話しても、誰一人信用しない。『そんなうまい話があるはずがない!』と言われる」と話していたんです。

そのくらい有り難いシステムの中に、我々はどっぷり浸かっているんです。

■無駄な「薬」や「治療」があるのではないか?

笹井:「私たちができること」を、うかがいたいと思います。

それに繋がる話ですが、國頭先生は、一般社団法人「SATOMI臨床研究プロジェクト」代表理事を務め、資金面を含めて臨床研究のサポートをしています。効果を維持しながら、薬剤の投与量を減らしたり、治療期間を短縮したり、できるだけコストをかけず、かつ患者さんの健康状態を維持し、医療システム全体の持続可能性をもたらすことを目的としているそうですね。

國頭先生:いくつかの薬は「必ずしも今の量を使わなくてもいい」「もっと少ない量でもいいだろう」と言われています。

例えば、今のがんの薬は、体重100キロの人も細身の方も、みんな同じ量なんです。『それはさすがに無駄ではないか?』と考えているわけです。小さい人には薬を少なく使えば、副作用も少なくなるし、コストも安くなります。そういうことで、価値を高めていく、コスパを良くしていこうと取り組んでいます。

笹井:副作用が軽くなる可能性もあり、私達にもメリットがありそうですね。

國頭先生:副作用が軽くなるかもしれないし、治療期間も短くなるかもしれない。そうすると、副作用で苦しむ時間も少ないし、通院も少なく済む。

ただ、全部の薬が一律でカット、とはならないです。「この薬はこれだけでいい」「この薬は少し副作用を我慢してもらってでも、コストがかさんでも使わなければいけない」など、そういうデータを出していかなければいけません。

■一人一人が「誰のお金で治療しているか」を考えるべき

笹井:私たち一般の人にできることは何かありますか?

國頭先生:どうしても、『どうせ人の金だ』と思ってしまい、使ってしまうんです。

笹井:『どこのお金か』とは、なかなか考えないですよね。

國頭先生:それで結局、薬をいっぱいもらって、余って、捨てたり、飲むのをやめたり……。本当に必要がないなら減らすべき。薬をもらうだけもらって、家にためて、最後に捨てるよりも遥かに良いに決まっています。

笹井:私たちは「本当にこの薬は必要なのか?」「このお金はどこから出ているのか?」と意識することが大切ですね。

國頭先生:医者である以上、患者さんの治療が第一です。それに悪影響が出ないように、できれば良い影響を及ぼすように。それプラス、お金を節約していく。我々が当たり前のように受けている医療を、子どもや孫の世代にも伝えなければいけません。

この他にも番組では、医療費の問題とは別に、「本当はなんのために生きるのか」を考える必要性についても、國頭先生が問いかけた。

Podcastでの聴取はこちらから。

番組情報

ドクターズボイス

毎週水曜日 21:00〜21:20

番組HP

「週刊文春 老けない最強食」の著者・笹井恵里子がパーソナリティを務める番組「徳洲会グループpresents ドクターズボイス〜根拠ある健康医療情報に迫る!〜」
この番組は「生命(いのち)だけは平等だ」の理念のもと全国70以上の医療機関を有する徳洲会グループのサポートでお送りします。
毎週ホットなテーマを設け、各専門分野のドクターをゲストに迎えて、そのメカニズムや対処法を分かりやすく伝えていきます。
番組では、感想や取り上げて欲しいテーマなどお待ちしております。

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