健康管理まで「かかりつけ医」が関わる場合の財源の問題
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東京都医師会理事で「葛西中央病院」院長の土谷明男氏が5月23日、ニッポン放送「モーニングライフアップ 今日の早起きドクター」に出演。今後の「かかりつけ医」の在り方について語った。
かかりつけ医機能報告制度
飯田浩司アナウンサー)コロナ禍を経て、かかりつけ医への認知度、重要度が増しました。今年(2023年)2月には全世代型社会保障法の改正案が国会に提出され、そのなかに「かかりつけ医機能報告制度」が盛り込まれましたが、どういう制度なのですか?
土谷)かかりつけ医の機能は、もちろん病気を診ることなのですが、それだけではなく、日常的な健康管理や医療・介護の総合調整など。つまり病気だけではなく、その前の状態や医療以外の周りとの連携がかかりつけ医の機能として考えられています。
診療と健康診断は制度が異なる ~健診は診療報酬では賄われない
飯田)「地域包括ケア」という取り組みもありますが、その担い手の部分でもあるということですか?
土谷)そうですね。地域包括ケアシステムのなかで、医療は一部分でしかありません。ですので他の分野、いちばん近いのは介護など、違う領域の人たちとも連携しなければいけない。
飯田)なるほど。
土谷)ただ、少しわかりにくい話なのですが、日本では健康と病気は別の体系になっているのです。例えば、健康診断は自治体や企業が行いますが、病気の治療とは制度がまったく別なのです。
飯田)同じように病院で行い、会計も一緒なので同じだと思うけれど、実は違うのですね。
土谷)お金の出所、お金の扱いが違います。一般的に病院や診療所で行っているのは、病気に対する診療になります。そのお金がどういう仕組みで出てくるかと言うと、診療報酬です。
飯田)病気への診療は。
土谷)しかし、健診については診療報酬で賄われないので、制度としては別なのです。病院のなかで行われているのは、病気についての診療です。
飯田)健診は診療報酬ではない。
健康管理まで医者が携わる場合はどのような財源で賄うのかがまだ定まっていない
土谷)かかりつけ医機能の話になったとき、私はやった方がいいとは思いますが、「では健康管理も医者がやるのか」となるのです。一般的に考えれば、健康と病気は連続的に考えるべきですし、実際に連続的に考えています。ですから、健康管理まで医者が行うのであれば、どういう財源を使うのか、その辺りはまだ定まっていないのです。
飯田)アドバイスを貰って、ある意味「コンサルティング料のようなものを取るのか」という話にもなるし、それだと自己負担が大きくなる。その場合、保険はどうするのか。
土谷)その辺りはまだはっきり決まっていません。病気になったときだけではなく、その前の状態も知っていて、それで病気になった際も診ていきたいと考えている医者は多いと思います。
企業や自治体での健康診断の結果を患者さんに持参してもらっているのが現状
土谷)わかりやすいところだと、例えば健康診断を企業や自治体で行います。しかし、その情報を見る仕組みは、患者さんの診察の際に結果を紙で持ってきてもらうというレベルなのです。
飯田)いまだに紙を実際に持ってきてもらわないと何もできない。
土谷)制度上の建て付けが違いますから。
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飯田浩司アナウンサーと新行市佳アナウンサーが、健康に関する疑問や予防法、症状、治療法などを聞きます