感染した直後が最も他人にうつしやすいHIV感染症
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東京都医師会広報委員で国立国際医療研究センター エイズ治療・研究開発センター(ACC)病院広報管理部門長の菊池嘉氏が7月25日、ニッポン放送「モーニングライフアップ 今日の早起きドクター」に出演。HIV感染症の治療方法について語った。
「U=U」検出限界値未満
飯田浩司アナウンサー)HIV感染症について伺います。
菊池)HIV陽性者が治療を受けていると、血液中にウイルスが検出されない状態……「検出限界値未満」と私たちは言っていますが、そのような状況だと、他人にHIVを感染させないことがわかってきました。
飯田)検出限界値未満。
菊池)世界的に「U=U(ユーイコールユー)」と呼んでいます。最初の「U」は、「Undetectable(検出されない)」という意味です。
飯田)「Undetectable」のU。
菊池)次の「U」が「Untransmittable(HIV感染しない)」という意味です。通院している患者さんでも、検出されていない状況が続いていれば、コンドームを使用しない性交渉を行ったとしても、相手にHIVをうつすことはない。理論的には血液中にウイルスがほぼいない状況であり、他人に感染させることができないということになるのです。
血液中のウイルスが20以下であれば他人にうつすことはない
飯田)その状態に至るまで治療を続けることで、「U=U」の状態になるのでしょうか?
菊池)治療を続けているとウイルスの数は減少します。血液中のウイルスの数を測るのは、昔は400~500が限界だったのですが、最近は20まで測れるようになりました。20以下になっている状況が、日本ではいちばんいいところです。保険で調べられる範囲内でそういう状況を維持できていると、他人にもうつさない状態を保てていることになります。
感染した直後はウイルスの数が多い
飯田)数字で一目瞭然ですから、励みになりますね。HIVウイルスも人に感染させやすい時期があるのでしょうか?
菊池)あります。感染したばかりの時期は、いままでウイルスがゼロだったところに入ってくるので、数十万~数百万という単位まで上がります。
飯田)感染したばかりであれば。
菊池)何もしなくても数万くらいまでは落ち着くのですが、感染した直後の高いところから治療して、ウイルス量を押し下げていく。20未満をずっと維持できれば、感染しない状況になると理解していただければと思います。
1日1回の薬の服用、または1ヵ月~2ヵ月に1回の注射を継続することで「U=U」に
新行市佳アナウンサー)「U=U」になるためには、どのような治療が行われるのでしょうか?
菊池)1日1回の薬を確実に飲んでいただく。もしくは2ヵ月ないし1ヵ月ごとに注射を打ち、それを継続していただくことです。
新行)どのくらい継続すると、検出限界値未満になるのですか?
菊池)いまの薬は非常にいいものですので、数万くらいのウイルス量であれば、1ヵ月くらいで下がる方もいます。人によって差はありますが、平均すれば半年くらいでそのようなレベルまでいきますし、用心深い人に対しては1年間ほど続け、「あなたもしっかり薬を飲んでいるから、大切な人には感染させない状況になっていますよ」という形でお話ししています。
飯田)「U=U」という概念が明らかになったのは、いつごろなのでしょうか?
菊池)2000年前後くらいから、そのようなことが徐々にわかってきました。アフリカでは、パートナーの一方が感染しており、一方が感染していない人たちの感染状況をフォローしていき、薬を飲んでいる人たちからは感染者が出なかったということが、考え方の最初のベースになっています。
番組情報
医師が週替わりで登場。
飯田浩司アナウンサーと新行市佳アナウンサーが、健康に関する疑問や予防法、症状、治療法などを聞きます