あけの語りびと

絵本は子どもが「人生で最初に触れる本」 芳賀町唯一の書店「BOOK FOREST 森百貨店」

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それぞれの朝は、それぞれの物語を連れてやってきます。

絵本は子どもが「人生で最初に触れる本」 芳賀町唯一の書店「BOOK FOREST 森百貨店」

森敦さん

黒い車体に黄色いラインが目を引く、まるでヨーロッパの街を走るような路面電車が、宇都宮駅の東口にやって来ました。その名も「宇都宮ライトレール」と言います。開業以来、通勤・通学やショッピングモール、スタジアムへの足としても賑わっています。

ライトレールの終点「芳賀町」は、人口約1万5000人の町。電車からバスへ乗り継いだ先、町の中心部にあるのが「BOOK FOREST 森百貨店」です。

実はこのお店、芳賀町でただ1軒の本屋さんでありながら、「絵本」を専門とするユニークな本屋さんなのです。

4代目の店主である森敦さんは、1975年生まれの年男・48歳。お店は、森さんの曽祖父に当たる方が「森書店」として1926年に開きました。その後、地域の皆さんのため、次第に本以外の商品も扱うようになったことで「森百貨店」と屋号を改めます。

絵本は子どもが「人生で最初に触れる本」 芳賀町唯一の書店「BOOK FOREST 森百貨店」

宇都宮ライトレール

森さんの少年時代は、バンドブームの最盛期でした。BOOWYやバービーボーイズの音楽に憧れ、中学時代からギター三昧。雑誌『バンドやろうぜ』がお店に入荷すると、バンドのメンバーたちと読みふけったそうです。大学進学で上京したあとは、インディーズのロックバンドに青春を捧げました。

森さんは29歳のとき、バンドの解散と結婚をきっかけに、ふるさと・芳賀町へ戻ります。家業を手伝うなかで森さんは、いままで通りの「本屋」では厳しいと痛感しました。

そして、3代目の店主を務めていたお祖父様から、店を受け継ぐことになります。お祖父様は、こんなことを言いました。

「お店はやりたいようにやっていい。でも、書店だけは続けてくれないか?」

折しも「森百貨店」は町の区画整理のため、店の建て替えを迫られていました。森さんは奥さまと温めていた計画を実行に移すことにします。

絵本は子どもが「人生で最初に触れる本」 芳賀町唯一の書店「BOOK FOREST 森百貨店」

「BOOK FOREST 森百貨店」

森さんは、バンド仲間を通じて奥さまと出会いました。共通の趣味はもちろん「音楽」。デートではレコードやCDをジャケ買いすることもしばしば。そのなかで、絵や写真が持つ「芸術性」に魅かれていきます。

ちょうど芳賀町の隣・宇都宮市の郊外には、大型書店の出店が相次いでいました。「森百貨店」は、地元の学校への教科書販売や雑誌の定期購読などで固定客はいたものの、「何かに振り切らないと、お祖父さんの思いを受け継いだ書店としてはやっていけない」という危機感のなか、奥さまと意見が一致しました。

「一緒に本屋さんをやるなら、絵本のお店をやろう」

2012年3月、「森百貨店」は絵本の専門店「BOOK FOREST 森百貨店」として生まれ変わりました。お店いっぱいに並んだ「絵本」は約4000冊。森さんは「思わずジャケ買いしたくなる」絵本を基準に、ユニークな本を取り揃えました。

絵本は子どもが「人生で最初に触れる本」 芳賀町唯一の書店「BOOK FOREST 森百貨店」

森敦さん

「何だか、都会のお店みたいになっちゃったねぇ」

最初はそんなことをこぼす昔からの常連さんもいました。でも日に日に、小さな子どもを連れたお母さんの姿が店に増えていきます。やがて、店で絵本作家の方がワークショップを開いてくれるようになると、絵本作家さんが店のために描いてくれたオリジナルのラッピングもつくりました。

すると、作家のファンの方が「どうしてもここで買いたい」と、地元はもとより東京や神奈川、千葉、埼玉からも店に足を運ぶようになります。さらに、店に集まったファンの皆さんが最新の絵本情報を教えてくれたことで、店にはより一層、魅力的な絵本が増えていきました。

森さんは1冊の絵本から広がっていく人の輪に、手応えを感じるようになったそうです。開店から10年あまり、コロナ禍で以前のようなイベントはできなくなりましたが、いまも絵本の世界を楽しみに店を訪れる人は絶えません。

絵本は子どもが「人生で最初に触れる本」 芳賀町唯一の書店「BOOK FOREST 森百貨店」

「BOOK FOREST 森百貨店」のブックタワー

店に一歩足を踏み入れると、1階から2階、さらに天井まで吹き抜けとなった大きな絵本の「ブックツリー」が優しく迎えてくれます。森さんは「絵本の魅力」について、こう語ります。

「絵本は全部説明していないのがいいんです。いっぱいの余白を自分の想像で埋めることができます」

絵本は、子どもたちが人生で最初に触れる本。森さんは子どもたちの人生の第一歩に関わっているという誇りを胸に、力強く語ってくれました。

「世の中にお子さんがいる限り、このお店は続けていきます!」

番組情報

上柳昌彦 あさぼらけ

月曜 5:00-6:00 火-金曜 4:30-6:00

番組HP

眠い朝、辛い朝、元気な朝、、、、それぞれの気持ちをもって朝を迎える皆さん一人一人に その日一日を10%前向きになってもらえるように心がけているトークラジオ

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