医師が解説、正しい「糖質制限」10か条 間違ったやり方は体調不良の原因に

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高雄病院理事長・江部康二先生が、上柳昌彦アナウンサーがパーソナリティを務める、ラジオ番組「上柳昌彦 あさぼらけ」内コーナー『食は生きる力 今朝も元気にいただきます』(ニッポン放送 毎週月・金曜 朝5時25分頃)にゲスト出演。糖質制限にまつわる正しい知識、「糖質制限」と「カロリー制限」を混合することで起こる体調不良、糖質を制限してもいい理由などを解説した。

医師が解説、正しい「糖質制限」10か条 間違ったやり方は体調不良の原因に

江部康二先生は、1974年に京都大学医学部を卒業後、1978年から医局長として高雄病院で勤務、2000年に理事長に就任。2001年から糖尿病治療の研究に本格的に取り組み、肥満・メタボリック症候群・糖尿病克服などに画期的な効果がある「糖質制限食」の体系を確立した。

「血糖値」を直接上げるのは糖質だけ

江部:まず、「糖質制限」と「カロリー制限」はまったく違います。三大栄養素のタンパク質、脂質、糖質のうち、「血糖値を直接上げるのは糖質だけ」です。「タンパク質」や「脂質」をいくら食べても、血糖は上がりません。この生理学的な事実に着目したのが、糖質制限食です。

糖質制限は、血糖をコントロールし、糖尿病をコントロールできる食事療法です。

上柳:糖質制限では、具体的に何を制限するのですか?

江部:「主食」です。穀物や芋など、いわゆる「でんぷん」です。でんぷんさえ制限すれば、血糖値が上がることはかなり少ないです。

上柳:つまり、でんぷんを食べると体の中で糖分になる、ということですね。

江部:そうです。人類には700万年の歴史がありますが、穀物を食べるようになったのが1万年前で、現在のシリアの辺りで、麦の栽培が始まったといわれています。日本ではさらに最近の話で、2500年前の弥生時代以降に米を食べています。

700万年という長い人類の歴史の中で、穀物を食べていた期間は本当に短いんです。

上柳:人は狩猟で生きてきた時間の方が圧倒的に長かったから、私たちの体は本質的には、穀物をそこまで必要としていないのですね。

江部:おっしゃる通りで、糖質はゼロでも人は生きていくことができます。

上柳:もともと、穀物を食べなくても生きていける体なんですね。

糖質制限の10か条

(1)糖質の摂取を減らす。可能なら“1回の食事”の糖質量は20グラム以下とする。

江部:茶碗軽く1杯のお米で、約55グラムの糖質があります。

ということは、お茶碗半分も食べられないこととなりますが、先ほども説明したように“必須糖質”というものはありません。糖質はいらないよね、ということです。その代わり、魚や肉は食べ放題です。

(2)糖質制限した分、タンパク質や脂質が主成分の食品は充分量食べる。

江部:これを10箇条に書いたのは、皆さん、「カロリー制限が染み付いているから」です。「糖質制限したついでに、油っこいものを食べるのも控えよう!」ということをされてしまうと、血糖は下がっても摂取エネルギー不足で、ヘロヘロになって階段を上るのも大変、ということになります。そういう方は皆さん、摂取エネルギー不足です。

こうした勘違いをされる人が多いことから、糖質制限食のことを、「脂肪・たんぱく無制限食ですよ」と私は言っています。

上柳:お肉はしっかり食べてくださいね、ということですね。

江部:そうです。

(3)やむを得ず主食(ご飯、パン、麺類など)をとるときは少量とする。

(4)水、番茶、麦茶、ほうじ茶などゼロカロリー飲料はOK。

江部:水、番茶、麦茶、ほうじ茶などはゼロカロリーで、糖質もゼロです。

(5)糖質含有量の少ない野菜・海草・きのこ類はOK。くだものは控える。

江部:人間には、食物繊維と腸内細菌が必要です。例えば、ブロッコリー、ピーマン、ゴーヤ、海藻は糖質含有量も少ないのでお勧めです。

上柳:食物繊維は善玉菌のエサになると言いますよね。

江部:そうです。

上柳:くだものは控えた方がいいそうですね?

江部:くだものはこの20年~30年で巨大化して、糖度も甘くなりました。くだものは何となく体にいいような気がしますが、現在のくだものは、もはや似ても似つかぬものになっています。

上柳:なるほど。食べる時はちょっと気をつけた方がいいですね。

(6)オリーブ油や魚油(EPA、DHA)は積極的にとり、サラダ油などに多く含まれるリノール酸を減らす。

江部:サラダ油の主成分はリノール酸で、必須脂肪酸だから絶対にいるものではありますが、 今の日本人は、必要量の20倍もとっています。ですから、必須だけどあえて意識して減らしましょう。

(7)マヨネーズ(砂糖無しのもの)やバターもOK。

江部:マヨネーズの成分表示を見ると分かりますが、糖質の量がかなり少ないんですよ。

上柳:これは意外ですね。

(8)お酒は蒸留酒(焼酎、ウィスキーなど)、糖質ゼロビールはOK。辛口ワインも適量ならOK。醸造酒(ビール、日本酒、など)は控える。

(9)間食やおつまみは、チーズ類やナッツ類を中心に適量摂る。

江部:いろんなチーズがありますが、どれも優秀でほとんど糖質がありません。ナッツはクルミ、松の実、アーモンドなど糖質含有量が少ないものがあるので、それらを選ぶと糖質制限食としてより良いです。

(10)可能なら、化学合成添加物の入っていない安全な食品を選ぶ。

糖質制限はどんな人がするべきか

江部:「糖質制限をしなければいけない人」は糖尿病をすでに患っている人です。

「糖質制限を限りなくしなければいけない人」はメタボや肥満の人。

健康な人は、糖質制限をしなくてもいい要素はありますが、普通に糖質を食べていると血糖値はかなり上がり、その時に「活性酸素」が出ます。血糖値が上がって、それを下げるためにインスリンがドンと出ると、ここでも「活性酸素」が出ます。

酸化ストレスは、ガンやアルツハイマーなど「万病の元」と言われています。糖質を摂取すると酸化ストレスが増してしまうのは、糖尿病の人に限らず、健康な人でも同じです。

医師が解説、正しい「糖質制限」10か条 間違ったやり方は体調不良の原因に

江部先生も糖尿病を経験した

上柳:高雄病院には江部先生のお兄様もいて、二人三脚で糖質制限というものを提唱されているそうですね。

江部:最初に始めたのは兄でして。1999年に始めたんですが、私は『兄がまた変なことをやっているな』と思って無視していたんです(笑)

上柳:無視(笑)

江部:ところが2年間の結果を見ると、「糖質制限食は糖尿病に劇的に有効ではないか」、ということが分かったんです。そして私も2001年から、糖質制限食を糖尿病患者さんに適用し始めたわけです。

上柳:実は江部先生ご自身も、糖尿病になっていたそうですね?

江部:そうなんです。いわゆる健康食と言われる玄米、魚、菜食を食べていたのですが、ある日、糖尿病になってしまいました。34歳の時から玄米、魚、菜食という食事でしたが、52歳で糖尿病を発症したのです。

しかも、周囲の同年代の方に比べたら、私は週1回テニス、週1回ジムに行って健康的だったはずなんですよ。

日本の糖尿病患者数は、生活習慣と社会環境の変化に伴って急速に増加している。江部先生も、健康的な食事や運動を心がけ、糖尿病治療の研究に取り組んでいたが、自身も糖尿病を発症。しかし、「糖質制限食」を実践して糖尿病を克服したという。

糖尿病は放置すると網膜症・腎症・神経障害などの合併症を引き起こし、末期には失明したり透析治療が必要となることがある。「自分は健康食をとっているから大丈夫」という人も、基本の「糖質制限の10か条」を確認し、いま一度、毎日の食事を見直してみては。

医師が解説、正しい「糖質制限」10か条 間違ったやり方は体調不良の原因に

江部康二先生と、上柳昌彦アナウンサーの詳しいトーク内容は、「食は生きる力今朝も元気にいただきます」特設コーナーHP(https://www.1242.com/genki/index.html)から、いつでも聞くことが可能だ。

番組情報

食は生きる力 今朝も元気にいただきます

毎週月曜・金曜 5:25頃

番組HP

「上柳昌彦 あさぼらけ」内で放送中。“食”の重要性を再認識し、「食でつくる健康」を追求し、食が持つ意味を考え、人生を楽しむためのより良い「食べもの」や「食事」の在り方を毎月それらに関わるエキスパートの方をお招きしお話をお伺い致します。
食の研究会HP:https://food.fordays.jp/

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