管理栄養士の道江美貴子さんが、上柳昌彦アナウンサーがパーソナリティを務める、ラジオ番組「上柳昌彦 あさぼらけ」内コーナー『食は生きる力 今朝も元気にいただきます』(ニッポン放送 毎週月・金曜 朝5時25分頃)にゲスト出演。体内時計を利用した食事術や、脂肪が取り込まれやすい時間などについて解説した。
朝食が「体内時計」を整える
上柳:道江さんの著書「結局、これを食べるが勝ち」(ワニブックス)の中には、「体内時計と上手に付き合う方法を教えます。いつ、何を食べるか、時間栄養学を味方につけよう――」ということが書かれています。「時間栄養学」とはどういうものなのですか?
道江:時間栄養学は、「食べる時間によって体に与える影響が異なる」ということを研究している栄養学です。
人間の体の中には体内時計が備わっていて、1日は24時間ですが、人間の体のリズムは24時間より少し長いと言われています。そのまま放っておくと時間がずれてしまうので、体内時計が24時間のリズムに整えてくれます。
研究でも、時間と人間の体の働きが、すごく密接に繋がっていることが分かってきています。例えば、朝食べるのと夜食べるのでは、同じものを食べたとしても、体への影響が違うんです。朝は何を食べたらいいのか、夜は何時までに食べた方が健康的か、そんなことが時間栄養学から分かっています。
上柳:食事といっても、朝は軽めで夜はガッツリ食べる人、朝はちゃんと食べて夜は軽めにしている人など、皆さんそれぞれだと思いますが、結局どういう食べ方がいいのでしょうか?
道江:時間栄養学的にいうと、大事にしてほしいのは朝食です。朝食を食べることによって、体内時計がリセットされることが分かっています。全体の1/4ぐらいの方が、朝食はまったく食べないそうですが、「コーヒー1杯だけでもいいから飲んだ方がいい」と考えています。
上柳:とにかく、食べることによって体内時計を整える。そのきっかけ作りのために、朝ごはんは必要なんですね。
22時~深夜2時の食事は「脂肪」になりやすい
上柳:夜中にお腹がすいて食べたくなる方も多いと思いますが、栄養学的にはどうでしょうか?
道江:「BMAL1」(ビーマルワン)という時計遺伝子があります。ビーマルワンは、体の「脂肪」を取り込む働きをするのですが、ビーマルワンは「夜22時から深夜2時」の4時間が、一番活発になります。
上柳:そんな時間に活発になるんですか?
道江:そう、夜行性なんですよね。反対に、ビーマルワンの活動がおだやかになるのが、「10時から22時前」まで。最も活動が低いのが「昼14時から15時くらい」までだと言われています。
なので、22時以降にガッツリ食べてしまうと、朝食べるよりも、脂肪が取り込まれやすくなります。
上柳:そんなメカニズムがあるのですね。ということは、夜中の食事は気をつけた方がいいですよね?
道江:そうですね。どうしても22時前に食べられなかった場合、夕食は軽めにし、次の日の朝に食べた方がいいです。もしくは、夜遅くなると分かっている場合は、19時頃におにぎり1個でも先に食べ、先取りするような食べ方をして、なるべく夜遅い時間に食べないようにする方が健康にいいです。
上柳:空腹を我慢して夜遅くにガッと食べるより、1回どこで軽食を挟んだ方がいいのですね。
道江:先取り夕食、というようなイメージです。ずっと空腹の中で食べてしまうと、食べた後の血糖値が一気に上がってしまうので、体によくありません。昼食後4時間~5時間ぐらいたったら、おにぎりなどの主食を先取りして、夜は軽めにするというのが、時間栄養学の食べ方としてはお勧めです。
天ぷらの「吸油率」はすさまじい
上柳:著書「結局、これを食べるが勝ち」の中には、「AとB食べるならどっちがいいですか?」という展開がいくつも紹介されていますね。例えば、揚げ物が食べたい時のベストチョイスは「揚げたての天丼」「がっつりロースカツ」、どちらでしょうか?
道江:ロースカツの方がおすすめです。まず、揚げ物は“衣”によって油を吸う量が違います。「吸油率」というのですが、かき揚げ天ぷらの場合、重量に対して40%の吸油率となっています。つまり、100グラムあったら、40グラムもの油を吸うんです。
上柳:油の量、すごいですね……。
道江:ただ、素揚げのような、衣をつけずに揚げた場合、給与率は10%ぐらいとかなり少なめです。
吸油率で見ると、天ぷらよりも、フライの方が油を吸いません。さらに言うと、フライよりも唐揚げの方が、若干の差ですが油を吸いません。
上柳:油も私達に必要な栄養ではありますが、やはり、摂りすぎると問題ということですね。
優秀な食材「キャベツ」
道江:また、とんかつを食べる時には必ず、キャベツの千切りが添えられていますよね。
上柳:誰が考えたのか、カツと最高の組み合わせですよね。
道江:このキャベツがいい役割をしていて、キャベツの食物繊維が油を吸着し、外に出してくれます。さらに、キャベツには「ビタミンU」(キャベジン)が含まれていて、消化機能を助けてくれるので、絶妙な組み合わせなんです。
上柳:ロースカツを食べる時、ソースをたっぷりかけたい衝動に駆られるのですが……。これについてはどう考えますか?
道江:ソースは大さじ1杯で塩分が1グラムぐらいと、かなりの量が入っていますので、 キャベツにもかけたりするのは控えた方がいいと思います。また、カツにソースをかけるのではなく、ソースをつけて食べるとソースの量を減らせますよ。
上柳:なるほど、ソースを別皿に入れて、そこにカツをつけて食べるということですね。
痩せたいなら「栄養バランス」にも気を付ける
上柳:ダイエットには、「メロンパン」「生姜焼き定食」どっちがいいのか? ということも紹介されていますね。
道江:生姜焼き定食の方がおすすめです。メロンパン1つで500キロカロリーぐらいあるので、生姜焼き定食のご飯を少なめにすれば、同じぐらいのカロリーになります。しかも、メロンパンの栄養は「糖質」と「脂質」くらいしかなく、ビタミンやミネラルがほぼ入っていません。
一方、生姜焼き定食は豚肉から「ビタミンB」が取れるし、付け合わせの野菜もありますから、バランスよく栄養を取れます。
ダイエットしよう! と思うと、皆さん、カロリーを減らそうと考えますが、取ったカロリーを効率よく燃やすためには、いろいろな栄養素が必要です。栄養バランスがいいものを選ぶ方が、結果的にダイエットに繋がる食事ということです。
ダイエットのために食事を控えているのに痩せない、いつもカロリーを見ながら食事を選んでいるのに効果がイマイチ……と悩んでいる人も多いのでは? 時間栄養学を参考に、食事は22時までに済ませる、「カロリー」と「栄養バランス」の両方を気にしながら食事を選ぶなど、ちょっとした工夫で、理想の体に近付くかもしれません。
管理栄養士の道江美貴子さんと、上柳昌彦アナウンサーの詳しいトーク内容は、「食は生きる力今朝も元気にいただきます」特設コーナーHP(https://www.1242.com/genki/index.html)から、いつでも聞くことが可能だ。
番組情報
「上柳昌彦 あさぼらけ」内で放送中。“食”の重要性を再認識し、「食でつくる健康」を追求し、食が持つ意味を考え、人生を楽しむためのより良い「食べもの」や「食事」の在り方を毎月それらに関わるエキスパートの方をお招きしお話をお伺い致します。
食の研究会HP:https://food.fordays.jp/