
富士山204回登頂の男が、今度は「人のために」山を登る理由
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富士山の山頂へは4つの登山ルートがあります。7月1日に山開きする山梨県側の「吉田ルート」と静岡県側の「須走ルート」、そして7月10日に山開きする静岡県側の「富士宮ルート」と「御殿場ルート」です。いよいよ迎える夏山シーズン。今回は、富士山に魅せられたある男性の物語です。

登山客をガイドする鶴橋さん
それぞれの朝は、それぞれの物語を連れてやってきます。
静岡市にお住まいの鶴橋誠さんは、57歳。初めて富士山に登ったのは、28歳のころでした。
「日本一過酷な山岳レースともいわれる『富士登山競走』に挑もうと、下見を兼ねて初めて富士山に登りました。山頂に立ったとき、その展望の素晴らしさに、いっぺんに魅せられてしまったんです」

三保海岸(清水)から望む富士山
「富士登山競走」を初挑戦でリタイアすることなく完走した鶴橋さんは"自分の可能性を試してみたい"と思うようになります。週末になると、自宅から車で富士山に向かい、5合目から「富士宮ルート」で山頂を目指しました。一般の登山者なら山頂まで6〜7時間かかりますが、鶴橋さんはわずか2時間ほど。早い時は、1時間50分で登り切りました。ですから、朝ごはんを食べて、富士山に登り、お昼ご飯は自宅で食べる。まるで散歩に出かけるように登っていました。
「当時は、体力があり余っていたので、1日2往復!土日の2日間で4往復したこともありましたよ」
登頂回数は増え続け、100回を突破し、現在は204回に達しました。驚きの数字ですが、上には上がいるそうです。
「"ミスター富士山"と呼ばれる沼津市の實川欣伸さんは2200回を超えているんです。どう頑張ってもこの方には勝てませんね」
それでも富士山を登るたび、増えていったものがありました。なんだと思います?それは人との出会いでした。
富士山に一人で登っていると、「ああ、あの人も、この人も、毎週富士山に登っているんだ!」笑顔を交わすうちに、仲間が少しずつ増えていきました。

山頂で迎えた感動の御来光
ところがコロナ禍で、世の中が自粛ムードに突入するんですね。自粛すべきか、気をつけて登るべきか、思案していたとき、富士山に登った知り合いが、SNSで「自粛すべきだ」と激しい非難を浴びてしまうんです。それを知った鶴橋さんは、富士登山への情熱がすっと冷めてしまったといいます。
「週末はのんびり過ごそう」「金曜の夜はお酒も飲めるし」と、コロナが明けても家で過ごしていた鶴橋さん。
「どうしたの? 山で見かけないけど、もう登らないの?」と山仲間から届いた言葉に、「ああ、みんな、僕を待っていてくれているんだ」と深く励まされ、鶴橋さんは、再び富士山へ向かい始めました。

標高3,776メートルの富士山頂
会社員の鶴橋さんは、普段、通勤ではエスカレーターやエレベーターに乗らず、どんなに長くても、トレーニングだと思って階段を使います。ところが2年前の冬、駅の階段をのぼり切ったところで、突然、気を失い、そのまま右の側頭部から倒れてしまいました。すぐに意識を取り戻しますが、頭を強く打ったので病院で診てもらうと、頭蓋骨にヒビが入り、脳内で出血も確認されました。幸い手術はせず、4日後に退院。それでも頭がスッキリせず、体も重い状態が続きました。1か月後の検査で出血が続いていることが分かり、緊急手術を受けました。
「人生で初めての手術でした。この入院で、自分の人生を振り返る時間ができましたね。入院中、懸命に働く医師や看護師さんの姿を見て、ふと思ったんです。これまでは自分のために富士登山を続けてきたけど、これからは、人のために富士山を案内したい」
その思いから、登山ガイドを始めた鶴橋さん。今年の夏も、登山客を案内しながら、山頂を目指します。
写真提供:鶴橋誠
https://omotefuji-guide.jp





