『にほんのおかず』(開港舎)シリーズの著者・服部一景さんが、上柳昌彦アナウンサーがパーソナリティを務めるラジオ番組『食は生きる力 今朝も元気にいただきます』(ニッポン放送 毎週月・金曜 朝5時25分頃)に出演。全国各地を巡って集めた「名もない家庭料理」の魅力や、出会った食文化、夏におすすめの郷土料理などについて語った。

全国16県を歩いて集めた「名もない家庭料理」
上柳:『にほんのおかず』シリーズをお書きになっている服部一景さんをお迎えしました。服部さんは、とにかく全国を回って、その土地のおかずを取材し、本にまとめています。
『にほんのおかず』シリーズは全国津々浦々を取材されて、現在17冊刊行されています。『ふくしまのおかず』は春夏編と秋冬編の2冊がありますから、取材されたのは16県ということになりますね。
服部さん:はい、16県を回ったことになります。
上柳:とはいえ、一度行けば終わりというわけではなく、四季折々に足を運び、たくさんの方にお話を伺って、「この土地にはどんなおかずがあるんですか」と取材されるわけですよね。どうやって調べるんですか。
服部さん:一番大事なのは、人との出会いですね。出会えるかどうかが一番のポイントです。もちろん、事前にある程度の情報は集めます。でも最初の頃は、朝から田園地帯へ行って、畑や田んぼで作業をしている方を見かけたらご挨拶して、お話を聞くところから始めていました。
いわゆる、出来上がった郷土料理というよりも、普段の食卓に並ぶような名前もない家庭料理です。朝晩当たり前に食べているようなおかずを見てみたい、という思いで取材しています。
上柳:『にほんのおかず』シリーズは、おかずのレシピだけではないんですよね。
例えば『いわてのおかず』を開くと、最初に食材図鑑があります。穀物、果物、野菜、山菜、畜産物、魚介類……。岩手33市町村で何がとれて、旬はいつなのかまで、本当に細かく調べられていますね。
服部さん:日本には四季がありますから、一年間その土地に滞在して、季節ごとの食材を時間をかけて、いろいろ見せてもらっています。特に岩手は野菜がおいしかったです。直売所へ行けば新鮮な野菜が手に入りますし、取材中の一番のごちそうは、おいしい野菜を食べることでした。
上柳:まだ取材されていない県も、たくさんありますよね。
服部さん:ありますね。
上柳:今後はどんな計画なんでしょうか。
服部さん:今は、各県の地域密着型スーパーから「今度はうちの県でやってください」と声をかけていただくことが多いんです。そのご縁で各地を回っています。

「甘じょっぱい」青森県で受けたカルチャーショック
上柳:青森県の味は印象的だったそうですね。
服部さん:そうです。「甘じょっぱい」が青森の味ですね。最初に訪れたのは青森県八戸でした。八戸市に朝4時半から開かれる「館鼻岸壁朝市」があるんですが、とにかく規模が大きいんです。
そこで初めて食べたのが「こびりっこ」。南部せんべいに赤飯を挟んだサンドイッチのような食べ物です。150円くらいだったと思います。お腹も空いていたので買って食べたら、赤飯が甘かったんです。
上柳:地域によっては、赤飯を甘く作ると聞いたことがあります。
服部さん:私は、赤飯はごま塩で食べるものだと思っていましたから、一口食べて本当にカルチャーショックでした。
その後、いろいろな人に聞いて回りましたが、「赤飯は甘くなくちゃ赤飯じゃない」と皆さんおっしゃるんです。
上柳:昔は砂糖が貴重でしたから、「大切な人のために、砂糖を使ったごちそうを出す」という意味もあったんでしょうね。
服部さん:そうだと思います。最高のおもてなしだったんでしょうね。
それから、青森では茶碗蒸しまで甘いんですよ。
上柳:茶碗蒸しまでですか。
服部さん:はい。だから私は「青森は甘じょっぱいのが好きなんだな」と思いました。
「昨日もキュウリ、今日もキュウリ」から生まれる家庭料理
上柳:『にいがたのおかず』は、とても売れたそうですね。
服部さん:そうなんです。ベストセラーになって、2週連続で1位になりました。レシピ本がランキング1位になるなんて思ってもいませんでしたから驚きました。そのあと増刷になって、少し刷りすぎてしまったくらいです(笑)。
上柳:さらに、『にいがたのおかず』に続いて、新潟県・新発田(しばた)にスポットを当てた『しばたのおかず』も出版されていますね。
服部さん:新潟県新発田の取材で印象に残った話があるんですが、「都会の人は、料理を決めてから買い物へ行くでしょう」と言われたんです。例えば「今日はカレーにしよう」と決めて、レシピ通りの材料を買いに行く。
上柳:はい、買うものが最初から決まっていますね。
服部さん:でも、私たちは違うんだ、と。「畑にはキュウリがたくさんある。昨日もキュウリ、今日もキュウリ、明日もキュウリ。そのキュウリをどう食べようか、どう料理しようか、それを毎日考えている」とおっしゃるんです。
上柳:旬だから、一度にたくさん採れますものね。
服部さん:そうなんです。畑で採れたものを無駄にしない。そのために、味付けや調理法を工夫して、毎日違う料理にして食べていく。
上柳:それが家庭料理になるんですね。

夏に食べたい「きゅうりの冷やし汁」
上柳:さて、7月で夏野菜がおいしい季節です。新潟県・新発田のおかずで、夏におすすめの野菜料理があるそうですね。
服部さん:新発田のおかず「きゅうりの冷やし汁」を紹介します。
上柳:名前からして涼しげですね。
服部さん:はい、とても爽やかな一品です。きゅうりや青じそを入れて、薄いみそ味の冷たい汁に仕立てます。暑い夏には最高ですよ。これとそうめんがあれば、いくらでも食べられます。
上柳:本でも紹介されていますね。材料もシンプルで、作り方も簡単です。
材料(2人分)
・きゅうり…1本
・青じそ…4枚
・乾燥わかめ…1〜2g
・味噌…大さじ2と1/2
・だし汁…4カップ(冷やしておく)
・白いりごま…少々
わかめを戻し、きゅうりは薄切り、青じそは千切り。味噌をすり鉢でよくすり、冷やしただし汁でのばして具材を加え、最後に白いりごまを振れば出来上がりです。
服部さん:実は他の地域にも、よく似た料理があります。ガラと呼ばれる料理で、きゅうりを入れて、氷を浮かべ、かき混ぜながら食べるんです。氷を入れてかき混ぜると「ガラガラ」と音がするので、そこから由来しているといわれています。地域によっては魚のたたきのようなものを加えることもあるようです。みょうがを加えて食べてもおいしいですよ。
夏は野菜がおいしい季節ですから、日本各地で野菜の食べ方を比べてみるのも楽しいと思います。
――郷土料理として知られる一品だけでなく、その土地で「いつものおかず」として食べ継がれてきた家庭料理に目を向けると、暮らしや風土がよく見えてくる。旬の食材を大切にし、無駄なくおいしく使い切る工夫は、毎日の食卓を豊かにするヒントになるかもしれない。

服部一景さんと上柳昌彦アナウンサーの詳しいトーク内容は、「食は生きる力今朝も元気にいただきます」特設コーナーHP(https://www.1242.com/genki/index.html)から、いつでも聞くことが可能だ。
番組情報
「上柳昌彦 あさぼらけ」内で放送中。“食”の重要性を再認識し、「食でつくる健康」を追求し、食が持つ意味を考え、人生を楽しむためのより良い「食べもの」や「食事」の在り方を毎月それらに関わるエキスパートの方をお招きしお話をお伺い致します。
食の研究会HP:https://food.fordays.jp/





