あけの語りびと

9月21日は「認知症の日」。歌が認知症の進行を遅らせる?80歳の挑戦

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今年の9月21日は「敬老の日」で日本国内では祝日ですが、この9月21日は世界的にも「認知症の日」として、認知症に関する関心と理解を深める日になっています。いま、認知症で大きな注目を集めているのが、認知症と音楽の関係。今回は、認知症と診断されながらも歌が大好きでコンサートを開く女性のお話です。

中野祐美子さん

中野祐美子さん

北海道赤平市出身の中野祐美子さん、80歳。一人っ子だった祐美子さんは「歌」が唯一の友達でした。幼稚園や学校で習った童謡や唱歌、ラジオから流れてきた流行歌。家にポツンと一人残されても、声を出して唄うと、寂しさを紛らすことが出来ました。

学校ではコーラスグループに所属してソプラノとアルトの声を使い分け、会社にお勤めになってからは、同僚の皆さんと歌のクラブを作りました。さらに祐美子さんは、地域のお祭りをはじめとした舞台に立って、人前で歌を唄う快感に目覚めます。

「最初の頃は上がっちゃいましたが、舞台から前列のお客さんの顔が見えるんです。笑顔で手を振ってくれたり、リズムを取ってくれたりすると安心するんですよ」

そう話す祐美子さんは、縁あって、神奈川・相模原市で家庭を築きます。お子さんにも恵まれ、いまでは可愛いお孫さんも立派な社会人になりました。年齢を重ねても、近所のグループホームで歌のボランティアを務めていた祐美子さんが、自分自身の体の異変に気付いたのは3年ほど前のことです。

『あれ?ついさっきしたばかりのことなのに・・・、思い出せなくなっちゃった!』

かかりつけのお医者さんのもとを訪ねると、軽い認知症と診断を受けました。ただ、祐美子さん、不思議とあまり驚かなかったといいます。

「もう80だし、いろいろな所で認知症の特集をやっているでしょ?私もその自覚を、ということかなと……」

祐美子さんは、ご家族の助けで介護認定を取り、近くのデイサービスへ通い始めます。自分も参加して歌う「歌の時間」がますます楽しみになりました。すると、その透き通るような歌声が施設の職員の方の目に留まったことで、あるプロのミュージシャンの方との出会いが待っていました。

PAPAS源太

PAPAS源太さん

祐美子さんが紹介されたのは、プロのミュージシャン、PAPAS源太さん。かつて、ザ・フォーク・クルセダーズの「はしだのりひこ」さんの事務所で活躍されたのち、認知症と歌の関係に注目して、65歳で介護福祉士の資格を取得されました。現在、源太さんは、相模原市内にある「メロディーズ」という体験型音楽デイサービスを運営されていらっしゃいます。

この「メロディーズ」の体験に参加した祐美子さんは、すぐに源太さんとも意気投合。さっそく源太さんのギターで、ビリーバンバンの「白いブランコ」や童謡「もみじ」など、3曲も歌声を披露すると、参加されていた皆さんから「上手、上手~!」と声が上がって、大いに盛り上がりました。

「プロの方の生演奏で歌うのが、本当に気持ちよかったんです!」

そう話してくれた祐美子さん、実は「白いブランコ」が大好き!初めて聴いた時から、そのきれいなメロディーに心打たれていました。そこで源太さんは、ビリーバンバンの菅原進さんに声をかけると、デイサービスの施設に来て下さって、祐美子さんと一緒に歌ってくださいました。

普通は大好きな歌の歌い手さんが目の前に現れたら、緊張してしまいそうなもの。でも、祐美子さんは、こう話します。

「ご本人を前に緊張するより、ご本人と一緒に歌える楽しさのほうが大きかったですね」

そんな祐美子さん、普段は「のど」のケアを大切にしているそうです。外から家に帰った時は、しっかりうがい。特に喉がイガイガしたときは、濃い塩水でのうがいを欠かしません。苦手だった野菜もいっぱい食べて、風邪を引かないよう、常に気を付けているそうです。

中野祐美子さん、PAPAS源太さん

中野祐美子さん、PAPAS源太さん

祐美子さんが体のメンテナンスに余念がないのも、実はPAPAS源太さんとのミニコンサートの開催が決まったから。JR横浜線・淵野辺駅近くの小さな交流スペースで、お客様からお金をいただいて、歌声を披露することになっているんですね。

「歌うことで認知症があまり進まないようにしたいと思っています。そして何より、もっと歌がうまくなりたいので頑張ります!」

認知症と診断されても、大好きな歌と共に生きる祐美子さんの瞳は、ますます輝いています。

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