4/6(木)FM93AM1242ニッポン放送『高嶋ひでたけのあさラジ!』今日の聴きどころ!②
米露で違う対テロ戦術
7:02~ひでたけのニュースガツンと言わせて!:コメンテーター佐藤優(作家・元外務省主任分析官)
イスラム国は“場所”を攻撃しても絶えることは無い?高嶋)佐藤さん、シリアの情勢ですけれども、どうやらアサド政権側が化学兵器で攻撃したようで、今の全体の絵柄から言うといろんな国があそこにつっこんでいますけど、どんな情勢になっているのですか?
佐藤)圧倒的にアサド政権軍は強いです。それはアサド政権の実力ではなくて、ロシアとイランが全面的に支持しているからです。だから圧倒的に強いです。
高嶋)「IS(イスラム国)」は今どの程度なのですか?
佐藤)ISは大分弱くなっています。ですから、何年かかるか分からないですよ、しかし私の見立てでは3年くらいで無くなるでしょうね。ただしこれは、ISというのは”空気が半分入った風船“を考えていただければ良い訳です。
高嶋)空気が半分入った風船――何だかモニョモニョしていますね。
佐藤)その上の方がシリアだとしたらそこをギュッと押さえて、ISがいなくなるのです。すると下の方に今度は空気が行っちゃいますよね。即ち別の所に移動するのですよ。だから例えば、中央アジア。例えばキルギスみたいな所。
そうすると今回のイスラム国が恐らく絡んでいると思われるロシアのサンクトペテルブルクのテロも、なぜ起きるかというと中央アジアに拠点が出来ているからという見方ができるのですよ。高嶋)あれだけ空爆されていても死に絶える訳ではないと。
佐藤)その通りです。それは「最後までこの場所を死守して……」ということではなくて、グローバリゼーションの産物ですからね。ヒト・物・金の移動は自由なのですよ。それはISもテロリストも移動が自由になってしまった。それで世界各国からテロリストが来ている訳でしょう。だから合法に、キルギスの旅券でも良いし、トルコの旅券でも良いし、そういったパスポートを持っていれば移動はできますから。
高嶋)なるほど。
イスラム国は“市民社会と密着”した厄介なテロ組織高嶋)それで私は素朴な疑問で、何百万という人が国外に出ていますけど、シリアね。あのISなんかがいる気持ち悪い地域に留まっている人ってどんな人なのですか?
佐藤)普通の人です。どうしてかというと、アサド政権よりも、普通のシリアにいるスンニ派のイスラム教徒にとってはマシなのです。例えば、イスラム国は税金を取ると領収書をくれるのです。だけど1回しか来ないのです。アサド政権は領収書を出さないから何度も来るのです。だから政治にさえ関心を持たない。そして宗派としてスンニ派であるということであれば、アサド政権よりはマシなのですよ。
だから気を付けなければならないのは、イスラム国というのはやっぱり市民社会の中で際があるのです。だからハイブリッドなのですよね。テロ組織であり同時に統治もしているという、だから面倒臭いのです。
だからそれをやっつける為には、市民と結び付いているでしょう、テロリストが。合理的に考えるとどうなります? 皆殺しにしてしまえば良い訳ですよ。高嶋)と言うことは要するに、市民の中にテロリストが紛れ込んでいると。
佐藤)だから10人の中に――いや100人の中に1人テロリストがいるならば、アメリカはその中からテロリストを探し出してピンポイントにそのテロリストだけを無人機で殺すと。ロシアは絨毯爆撃をかけて皆殺しにすると。それでアサド政権は毒ガスで皆殺しにすると。
だからロシアとアサド政権は思想が一緒なのです。ただ使う手段がさすがに国際法違反の毒ガスはまずいだろうと言うのがロシア、それに対してアサド政権は「どうせバレやしないんだ、こっちがやったんじゃなくて向こうの毒ガスが間違えて洩れたんだろうと言えば逃げられる」と、それで平気で毒ガスを使うのがアサド政権。それくらいの違いですね。
化学兵器の製造は簡単 アサド政権側の都合の良い主張高嶋)アサド政権も本当にシラッとしていて、前に何かありましたよね、化学兵器禁止条約みたいなのが。それで自分の持っているやつを出すとか何かやって、どうも残っていたのですね。
佐藤)いやいや、残っていたのではなくて、簡単に作れてしまいますから。だって考えてみて下さい。大量破壊兵器のサリンを使ってテロが起きた唯一の国は日本ですからね。だからああいった人たちの集団でも、富士山の麓でプラント作れば出来てしまう訳ですから。
高嶋)しかしロシアも言いますね。「標的の武装勢力拠点に化学兵器工場が、化学兵器がたまたま保管されていた」と。
佐藤)だからそれは「相手が持っていたのだ」と言うことですよね。それを否定するのは悪魔の証明になりますからね、できないでしょう。だから国連も「本当に証拠があるの?」といって動かざると。「相手が持っていたかもしれないじゃない」と。こういう風に言って拒否権が発動と。
高嶋)一言、これ解決する目途ってあるのですか?
佐藤)アメリカが軍事介入をすることを決めない限り無理。
佐藤)なるほど。