中央本線の小淵沢と、しなの鉄道(旧・信越本線)の小諸を結ぶ「小海線」。
昔からの鉄道ファンの中には、昭和40年代に小海線へC56形蒸気機関車の高原列車を撮りに行ったという経験をお持ちの方も多いことでしょう。
時代は進んで、今の小海線の最新鋭は、ハイブリッド車両のキハE200形!
10年前の平成19(2007)年にデビューした世界で初めての鉄道ハイブリッド車両です。
小海線では、キハE200形と共に、JR初期からのディーゼルカー・キハ110系も活躍中。
柔らかめのボックスシートを中心にカーテンも付いた、東日本エリアでは標準的な気動車です。
小淵沢~野辺山間では、週末を中心に臨時の普通列車が運行されており、「八ヶ岳高原列車」の愛称が付けられています。
ヘッドマークこそありませんが、助士側の窓に内側から「八ヶ岳高原列車」と掲示されています。
そんな小海線のキハE200形、キハ110系が掛け紙を彩るのが、去年(2016年)10月に登場した小淵沢駅弁「丸政」の「信州安養寺味噌の鶏弁当」(1,080円)です。
特にキハE200形は、小淵沢駅を出て間もなく差し掛かる「小淵沢の大カーブ」をイメージしたと思われるイラストとしても描かれており、信州味噌の味噌樽と合わせて、旅情を誘ってくれます。
最近は写真ドーン、中が見える包装が多い中、こういった「想像させる」包装はイイですね。
「安養寺」は、長野・佐久市にある臨済宗のお寺で、「信州味噌発祥の地」と云われています。
最近は佐久のご当地ラーメンにも使われている「安養寺味噌」ですが、「安養寺」は最寄りの鉄道駅が小海線・岩村田駅となりますので、小海線ゆかりの食材を使った駅弁という訳。
それゆえ包装の側面には小海線の路線図が書かれ、反対側の側面には、キハ110系とキハE200形にまつわる薀蓄もたっぷり書かれているんですね。
(参考:佐久市ホームページ)
何と言っても、鶏肉は「高原野菜とカツの弁当」「山賊そば」をはじめ、丸政十八番の食材!
味噌を使った駅弁というとガッツリ感もありますが、「信州安養寺味噌の鶏弁当」は、信州味噌らしい優しい風味を感じる「鶏の味噌焼」に仕上げられています。
鶏肉には焼海苔が敷かれ、鶏そぼろと錦糸玉子が茶飯の上に載り、ししとうと人参が添えられ、彩りを出していて、おかずに玉子焼と里芋・椎茸などの煮物が入って、味のバランスも良好。
東京では見られない「丸政」の駅弁ですので、小淵沢で小海線に乗り換える際に入手して、包装に描かれた大カーブに身を委ねながらいただいてみるのが、最も旅情を感じられそうです。
夏の涼しさがウリの小海線ですが、今年の夏はいつもの年よりちょっとアツくなりそうな気配。
それというのも、7~9月に観光キャンペーンの「信州デスティネーションキャンペーン」が開催され、これに合わせて新しい観光列車「HIGH RAIL 1375」の運行が予定されています。
ネーミングはJR最高地点の「1,375m」に因んだもので、コンセプトは「天空にいちばん近い列車」。
果たして、この夏はどんな展開を仕掛けてくるか、自然と期待が高まる「小海線の旅」です。
(取材・文:望月崇史)
連載情報
ライター望月の駅弁膝栗毛
「駅弁」食べ歩き15年の放送作家が「1日1駅弁」ひたすら紹介!
著者:望月崇史
昭和50(1975)年、静岡県生まれ。早稲田大学在学中から、放送作家に。ラジオ番組をきっかけに始めた全国の駅弁食べ歩きは15年以上、およそ5000個!放送の合間に、ひたすら鉄道に乗り、駅弁を食して温泉に入る生活を送る。ニッポン放送「ライター望月の駅弁膝栗毛」における1日1駅弁のウェブサイト連載をはじめ、「鉄道のある旅」をテーマとした記事の連載を行っている。日本旅のペンクラブ理事。
駅弁ブログ・ライター望月の駅弁いい気分 https://ameblo.jp/ekiben-e-kibun/