山陽・九州新幹線の直通列車を中心に活躍する8両編成のN700系。
九州新幹線は、以前もご紹介したように「みずほ」「さくら」「つばめ」の3種類があります。
「さくら」は、東海道・山陽新幹線「ひかり」、北陸新幹線「はくたか」とほぼ同じポジション。
停車駅多めですが、日中は速達列車も担い、一部は途中から各停になる列車もあります。
通勤路線で言えば、急行とか準急、区間快速みたいな列車ということになりますね。
400号台の「さくら」は、概ね九州内で完結する列車。(一部、新下関・広島発着)
通過駅は、筑後船小屋・新大牟田・新玉名の3駅で、熊本以南は各駅に停まります。
それでも、博多~鹿児島中央間は1時間35分程度で走破してしまいます。
在来線時代の「つばめ」が3時間50分前後かかっていたことを考えれば、速くなったもの。
新大阪から直通の新幹線に乗ると、博多を出ると、アッという間に鹿児島なんですよね。
今や、九州新幹線沿線の各県は“向こう三軒両隣”みたいな距離感になっていますが、駅弁界も、同じような動きが出てきています。
ハイペースで新作を世に送り出している鹿児島・出水を拠点とする駅弁屋さん「松栄軒」の新作は、その名も「鹿児島黒豚めんたい弁当」(1,080円)!
鹿児島の黒豚と福岡の辛子明太子を一度に味わえる駅弁なのです。
明太子の赤と、黒豚の黒をイメージさせる掛け紙を外すと、昭和4(1929)年創業「松栄軒」十八番の鹿児島黒豚のたれ焼きをセンターに、見るからにピリ辛感漂う明太子が食欲をそそります。
明太子は、昭和46(1971)年から博多の辛子明太子を手がけている「まるいち」のもの。
この「鹿児島黒豚めんたい弁当」は、博多駅でも販売されており、実はこの駅弁も、老舗駅弁屋と福岡を代表する明太子メーカーとのコラボ駅弁なのです。
「松栄軒」の松山社長によると、「まるいち」のトップの方は、明太子作りに当たって、常に「絶対に質を落とすな!」と厳命している、こだわりを持った“頑固な”方なんだそう。
松山社長が「ぜひ一緒に駅弁を作りたい」と頭を下げて、ようやくコラボが実現したのだそうです。
九州新幹線「みずほ」なら、博多~鹿児島中央間は、最速1時間16分。
福岡と鹿児島の距離感は、駅弁の笹の葉、“バラン”1枚分にまで縮まったともいえましょう。
その意味では、九州新幹線を乗り通す時に、一番気持ちが盛り上がる駅弁ではないでしょうか。
九州新幹線「さくら」号が、鹿児島中央駅の最も東側にある14番のりばに到着すると、新幹線と車止めの向こうに「桜島」を望むことが出来ます。
「さくら」と「桜島」がコラボするココが、「ニッポンの新幹線」の最南端!
東京から「のぞみ」を乗り継いでも、鹿児島中央までは6時間半くらいですので、昭和50(1975)年の東京~博多間(6時間56分)より速く着くこともあります。
黒豚と明太子のコラボ駅弁と共に、九州新幹線博多~鹿児島中央間の“あっという間”感を、ぜひ一度、味わってみては!?
(取材・文:望月崇史)
連載情報
ライター望月の駅弁膝栗毛
「駅弁」食べ歩き15年の放送作家が「1日1駅弁」ひたすら紹介!
著者:望月崇史
昭和50(1975)年、静岡県生まれ。早稲田大学在学中から、放送作家に。ラジオ番組をきっかけに始めた全国の駅弁食べ歩きは15年以上、およそ5000個!放送の合間に、ひたすら鉄道に乗り、駅弁を食して温泉に入る生活を送る。ニッポン放送「ライター望月の駅弁膝栗毛」における1日1駅弁のウェブサイト連載をはじめ、「鉄道のある旅」をテーマとした記事の連載を行っている。日本旅のペンクラブ理事。
駅弁ブログ・ライター望月の駅弁いい気分 https://ameblo.jp/ekiben-e-kibun/