長崎の二大都市といえば、長崎と佐世保。
およそ1時間40分でこの両市を結んでいるのが、大村線の快速「シーサイドライナー」です。
ブルーの車体が印象的な2ドアのキハ66系気動車は、車内には進行方向に向かって座れる転換クロスシートが装備されています。
海辺を走る列車は数多くあれど、「シーサイドライナー」は、どのくらい海に近いのかというと?
もう、窓から手が届きそうなくらいのシーサイド!
鉄道から見える海って、何度見ても気持ちのいいもの。
海が見えた瞬間、気持ちが高ぶり、眺めていると、やがてホッとした気分に移行するんです。
生命は海で生まれたから、人は海を見て懐かしさを憶えるのか・・・と哲学的なことを考えたり。
ホント、鉄道で車窓を楽しんでない人は、人生の楽しみの半分くらい損をしていると思います。
そんな海の車窓が楽しめる、佐世保~長崎間1時間40分の旅のお供になってくれそうなのが、佐世保駅弁「自家製麺あごだしうどん匠庵(しょうあん)」が調製する駅弁!
その名も「お出汁をたっぷり含んだお稲荷さんと出汁巻き卵」(799円)・・・長っ!!
90年代に流行ったビーイング系の曲のタイトルみたいな感じですが、20文字超えは駅弁の中でもかなり長い名前の部類に入るものと推察・・・こういうところで“遊び”を作るのもアリですよね!
掛け紙を外すと、あごだしのいい香り!
「あごだし」とは東日本で暮らしているとあまり馴染みがないかもしれませんが、九州ではおなじみの「あご(トビウオ)」を使った出汁のこと。
佐世保駅のうどん店で使っている自家製のあご出汁をたっぷり使って作られたいなり寿し、そして出汁巻き卵が4つずつ入っています。
ココまでウェットないなり寿しは、正直初めて!
パクリといった瞬間に「ジュワ~っ!」となって、口の中が出汁のうま味でいっぱいになります。
この弁当なら、汁ものを一緒に飲まなくても、まず大丈夫。
和食のキモといわれる「出汁」。
九州「あごだし」文化のとば口として、その奥深さを感じさせてくれる駅弁の存在は意義深い!
駅弁だからこそ、出汁をウリにしたものが、もっとあってもいいのかもしれません。
なお、あまりにウェットなので、ゼッタイ「平らにしたまま」持ち運びすることをお勧めします。
「シーサイドライナー」に充当されるキハ66系の一部には、国鉄時代の塗装を施された編成も。
元々、キハ66系は、昭和50(1975)年の山陽新幹線博多開業時に、筑豊地方向けに投入された気動車ということもあって、既に40年戦士の車両なんです。
幸運にも出逢えたら大村湾の静かな海を眺めながら、国鉄らしい武骨さを残した車両と共に、懐かしい駅弁旅を楽しんでみてはいかがでしょうか?
(取材・文:望月崇史)
連載情報
ライター望月の駅弁膝栗毛
「駅弁」食べ歩き15年の放送作家が「1日1駅弁」ひたすら紹介!
著者:望月崇史
昭和50(1975)年、静岡県生まれ。早稲田大学在学中から、放送作家に。ラジオ番組をきっかけに始めた全国の駅弁食べ歩きは15年以上、およそ5000個!放送の合間に、ひたすら鉄道に乗り、駅弁を食して温泉に入る生活を送る。ニッポン放送「ライター望月の駅弁膝栗毛」における1日1駅弁のウェブサイト連載をはじめ、「鉄道のある旅」をテーマとした記事の連載を行っている。日本旅のペンクラブ理事。
駅弁ブログ・ライター望月の駅弁いい気分 https://ameblo.jp/ekiben-e-kibun/