新八代駅「阿蘇赤うし」(1,250円)~復興を連れ「あそぼーい!」が帰ってくる!【ライター望月の駅弁膝栗毛】

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九州新幹線N700系

九州新幹線N700系

熊本駅に入ってきた九州新幹線N700系は、新大阪からの「さくら」号。
博多からは、基本的に新鳥栖・久留米の2駅停車、38分で着いてしまいます。
熊本では、この新幹線を受けて、肥薩線方面へ「かわせみやませみ」、「いさぶろう」、「SL人吉」。
天草への連絡路線・三角(みすみ)線へは「A列車で行こう」というD&S列車が発車していきます。
ただ、ホントはもう1つ、ぜひ乗りたい列車が熊本にはあるんです。

豊肥本線・宮地駅に停車中の特急「あそぼーい!」(2013年撮影)

豊肥本線・宮地駅に停車中の特急「あそぼーい!」(2013年撮影)

それは、豊肥本線・熊本~宮地間で運行されていた特急「あそぼーい!」。
前面展望バッチリのパノラマシートに、2人掛けの窓側の背もたれを子供向けに低くして、親子で楽しめるように作られた白いくろちゃんシートをはじめ、遊び心いっぱいの列車です。
しかし、去年(2016年)の熊本地震で、豊肥本線・肥後大津~阿蘇間は今も運転見合わせ中。
このため地震後は、鹿児島本線・博多~門司港間など北部九州を中心に運行されてきました。

阿蘇の風景

阿蘇の風景(2008年撮影)

でも、この7月8日からついに!阿蘇に「あそぼーい!」が帰ってきます。
熊本側は今も復旧工事が続いていますので、今回は「大分~阿蘇間」での運行。
現在、この区間には、臨時の「九州横断特急」が運行されており、このダイヤを踏襲する形で、1日2往復の運行が予定されています。(全車指定席)
しかも、従来の熊本側からですと1時間少々の乗車時間だったのが、大分からは2時間弱も「あそぼーい!」の旅を楽しめるのが嬉しいところ!
別府発着となる列車もあり、途中の豊後竹田からは以前ご紹介した夏に気持ちいい炭酸のぬる湯「長湯温泉」、阿蘇からは「黒川温泉」などへもアクセス可能。
九州の名湯と楽しい列車の組み合わせで、ぜひ阿蘇エリアへ足を運びたいものです。

阿蘇赤うし

阿蘇赤うし

「あそぼーい!」で阿蘇へ来たら、九州横断バスなどを使って熊本市街へ・・・。
阿蘇の雄大な景色の余韻に浸りながら、思い浮かべていただきたい熊本の駅弁といえば、八代の「頼藤商店」が調製、「みなみの風」が販売する「阿蘇あか牛」(1,250円)かもしれません。
掛け紙にも、阿蘇の外輪山を想起させる山並みが描かれていますね。
もちろん、新八代駅だけでなく、熊本駅でも販売があります。

阿蘇赤うし

阿蘇赤うし

今から12年前の平成17(2005)年に登場した「阿蘇赤うし」。
すき焼き風のバラ、フルーツベースのたれに漬けこんだロースの2つの味が楽しめる駅弁です。
本来、阿蘇のブランドとして知られるのは「阿蘇あか牛」ですが、駅弁では「赤」が漢字で「うし」が平仮名になっているのは、画数の関係で、この表記のほうが“吉数”となるからなんだそう。
駅弁のネーミング1つにも赤ちゃんの名前を付けるように、愛情をこめている様子が伺えます。

阿蘇赤うし

阿蘇赤うし

昨今、こってりとした味わいの黒毛和牛が多い中、あっさりとした味わいが特徴の「阿蘇あか牛」。
熊本県が設けた「阿蘇あか牛」の基準は・・・

① 阿蘇地域で、誕生から肥育まで全期間飼養されたあか牛であること。
②飼料として、阿蘇産の牧乾草や稲ワラなどが主に給与されていること。
又は阿蘇の牧野で育った経歴があること。
(参考:阿蘇地域世界農業遺産推進協会HP)

実はこのような「阿蘇あか牛」を、安価に安定して入手するのは、とても難しいのだそうです。
「頼藤商店」でも様々なルートを模索し、現在の駅弁の形にたどり着きました。
今や「世界農業遺産」にも登録された、阿蘇で1000年以上続く野焼きなどの農耕文化。
その賜物ともいえるのが、「阿蘇あか牛」をはじめとした農産物です。
阿蘇の歴史と文化を舌で感じられる貴重な駅弁の1つであることに間違いありません。

(取材・文:望月崇史)

連載情報

ライター望月の駅弁膝栗毛

「駅弁」食べ歩き15年の放送作家が「1日1駅弁」ひたすら紹介!

著者:望月崇史
昭和50(1975)年、静岡県生まれ。早稲田大学在学中から、放送作家に。ラジオ番組をきっかけに始めた全国の駅弁食べ歩きは15年以上、およそ5000個!放送の合間に、ひたすら鉄道に乗り、駅弁を食して温泉に入る生活を送る。ニッポン放送「ライター望月の駅弁膝栗毛」における1日1駅弁のウェブサイト連載をはじめ、「鉄道のある旅」をテーマとした記事の連載を行っている。日本旅のペンクラブ理事。
駅弁ブログ・ライター望月の駅弁いい気分 https://ameblo.jp/ekiben-e-kibun/

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