釧路と網走を結ぶ、日本有数の風光明媚なローカル線「釧網本線」。
全線を走破する快速「しれとこ」は途中、細岡、南弟子屈、南斜里の3駅のみ通過します。
それでもヘッドマークが付いた列車ですと、ちょっぴり有難みがありますよね。
釧網本線で、釧路湿原と並ぶ車窓のハイライトは、なんと言ってもオホーツク海。
知床の玄関口・知床斜里(しれとこ・しゃり)から網走にかけての車窓の友となります。
中でもオホーツク海に近い駅として知られるのが、網走市内にある「北浜駅」。
春先は「流氷が見える駅」として知られ、ホームに展望台も設けられています。
駅舎はレトロな木造のものが健在で、待合室にはなぜか訪問者の名刺がいっぱい!
ココも無人駅ですが、30年ほど前から「停車場」というお店が入っていて人気を集めています。
訪れた日はまだ営業時間前で、今回も残念ながら訪問がなりませんでした。
この日は、朝から北浜駅で下りて、次の列車まで1時間半待ち。
平日の午前、ベンチに座り、オホーツクの爽やかな風を感じて過ごす贅沢な時間です。
青い空と青い海を眺め、90分間、波の音を聞いて過ごすだけ。
観光バスやライダーの立ち寄りもなく、1人でのんびりすることが出来ました。
やっぱり海が見える駅って、それだけで幸せな気持ちにしてくれるもの。
人と逢う旅もいいけど、人と逢わない旅というのもまた必要だと思うのです。
オホーツク海を眺めていたら、また海の幸が恋しくなってきました。
網走を代表する駅弁といえば、随一の歴史を誇る「かにめし」(900円)。
網走駅弁の調製元は、「モリヤ商店」。
昭和初期から網走駅弁を手掛けている老舗駅弁屋さんです。
売店は網走駅の待合室内にあり、1番ホームからも買えるようになっています。
今から15年以上前の冬、宿代わりに使った夜行の「オホーツク9号」で網走に着き、釧網本線の始発に乗り継いで、その列車の中でオホーツク海を眺めながら「かにめし」をいただきました。
当時はまだ、青い紙蓋のわっぱだったと記憶しています。
2000年代に入ってから、今の赤を基調とした包装に変わりましたが、素朴な味はそのまま。
網走に来るとなぜか、ほぼ毎回買ってしまう“いつもの味”なんですよね。
北海道産米を使った醤油味の味付けごはんの上に、炊き上げられたズワイガニを基本とした地元・網走産のカニが、たっぷりと載っています。
これに味付椎茸、辛子昆布、錦糸玉子などが付け合わせとなって、ささやかな彩りに・・・。
カニは地元のカニ専門業者から直接仕入れて、1つ1つ手作業で作り上げているそう。
鉄路と共にいつまでも旅人の傍にいてほしい網走の「かにめし」です。
晴れた日には、知床連山も望むことが出来る釧網本線・北浜駅。
オホーツク海に沿って伸びる2本のレールの上を、トコトコと1両の気動車がやって来て、わずかに停まり、走り去っていく様子は、いつ眺めても旅情たっぷりです。
でも、まだ流氷が接岸したタイミングでこの駅に来ることが出来ていないんですよね。
爽やかな夏もいいけど、凍てつく冬にも心惹かれる釧網本線の旅です。
連載情報
ライター望月の駅弁膝栗毛
「駅弁」食べ歩き15年の放送作家が「1日1駅弁」ひたすら紹介!
著者:望月崇史
昭和50(1975)年、静岡県生まれ。早稲田大学在学中から、放送作家に。ラジオ番組をきっかけに始めた全国の駅弁食べ歩きは15年以上、およそ5000個!放送の合間に、ひたすら鉄道に乗り、駅弁を食して温泉に入る生活を送る。ニッポン放送「ライター望月の駅弁膝栗毛」における1日1駅弁のウェブサイト連載をはじめ、「鉄道のある旅」をテーマとした記事の連載を行っている。日本旅のペンクラブ理事。
駅弁ブログ・ライター望月の駅弁いい気分 https://ameblo.jp/ekiben-e-kibun/