6月下旬、網走10:24発の釧網本線・快速「しれとこ」号は、1両のキハ54に立ち客も出るほど、多くのお客さんを乗せて発車。
網走からおよそ20分後、列車は左にオホーツク海、右に濤沸湖(とうふつこ)を望む駅に停まり、多くの観光客を下ろして、再び発車していきました。
さあ、このお客さんがたくさん下りた駅とは?
その名も「原生花園駅」!
釧網本線・北浜~浜小清水間に、毎年5/1~10/31の間だけ設けられる「臨時駅」です。
「小清水原生花園」へ観光客の便を図るべく、春から秋にかけて日中の列車が停まります。
小さなログハウス風の駅舎には、夏季を中心に地元の農業法人「オホーツクいちごファーム」が出店しており、目の前で作ってくれる「いちごのフレッシュジュース」が美味!
北海道小清水町にある「小清水原生花園」は、オホーツク海と濤沸湖(とうふつこ)に挟まれた、およそ8kmにわたって続く細長い砂丘に広がる天然の花畑。
例年、6月中旬から7月上旬が見ごろで、エゾスカシユリやエゾキスゲ、ハマナスなどの花が咲き揃って、黄色やピンク、紫といった色とりどりの風景がみられます。
その一番内陸側をJR釧網本線と国道244号が通っているんですね。
昭和天皇もお立ち寄りになって歌を詠まれた「天覧ヶ丘展望台」から、オホーツク海側に向かって花畑の中を遊歩道が続いています。
そのまま砂浜に降りていけば、日本最北とされる“鳴り砂”の浜。
訪れた日は、小清水町の町の花でもあるオレンジ色のエゾスカシユリがちょうど見ごろ。
これに所々、黄色いエゾキスゲ、ピンクのハマナスなどの花が混じって咲いていました。
この「小清水原生花園」は、海と湖に近く、さらに「線路」に近いのが特徴。
6~7月にかけて釧網本線のキハ54は、こんなお花畑の中を走るのです。
もちろん、原生花園駅の周辺が花は一番多めですが、その前後も結構、花が多い!
空の水色、オホーツクの青、ユリのオレンジが入り混じった緑の帯が移りゆくさまは、この時期に釧網本線に揺られた人だけが楽しめる車窓です。
日本に暮らしながら、こんな素晴らしい車窓を楽しめる鉄道に、一度も乗らないで人生終えたら、死んでも死にきれないというもの。
初夏の釧網本線の美しさは、私にとっては“新たな発見”となりました。
さて、網走駅の駅弁にも、“新たな発見”がありました。
網走駅弁・モリヤ商店の「いくら数の子弁当」(980円)に初めて遭遇。
昨年(2016年)、発売開始し、今年1月の京王百貨店新宿店の駅弁大会にも登場しました。
これまでも都市部で行われる冬場の催事などでは見かけることはあったのですが、やはり現地へ足を運んで手にすると、何となくモヤモヤが晴れて、ホッとするというもの。
少し高級感ある黒い包装を外し、ふたを開けると包装に違わない太い数の子が真ん中に鎮座。
その脇を、ほぐした数の子といくらという2つの魚卵が固めます。
ダブル魚卵、ダブル数の子に飽きが来るかなと思いましたが、心配は杞憂に終わりました。
素材の味が活かされ、塩っ気も少なめで食べやすく、醤油味のご飯と合って、よく箸が進みます。
網走から旭川・札幌方面へ向かう特急列車には車販が無い上、札幌までは乗車時間が5時間を超えますので、網走での駅弁購入は必須。
それだけに駅弁のラインナップが増えてくれることは、とても有難いことだと思います。
釧路からの快速「しれとこ」網走行は、2両編成で原生花園駅に到着。
白地に水色のラインがラッピングされた前よりの1両は、網走~知床斜里間で昨シーズンの冬場から「流氷物語」号として活躍を始めた車両でした。
四季折々の車窓が楽しい釧網本線の旅。
まだ未体験のアナタ、躊躇しているヒマは無いと思いますよ!
連載情報
ライター望月の駅弁膝栗毛
「駅弁」食べ歩き15年の放送作家が「1日1駅弁」ひたすら紹介!
著者:望月崇史
昭和50(1975)年、静岡県生まれ。早稲田大学在学中から、放送作家に。ラジオ番組をきっかけに始めた全国の駅弁食べ歩きは15年以上、およそ5000個!放送の合間に、ひたすら鉄道に乗り、駅弁を食して温泉に入る生活を送る。ニッポン放送「ライター望月の駅弁膝栗毛」における1日1駅弁のウェブサイト連載をはじめ、「鉄道のある旅」をテーマとした記事の連載を行っている。日本旅のペンクラブ理事。
駅弁ブログ・ライター望月の駅弁いい気分 https://ameblo.jp/ekiben-e-kibun/