中央本線を中心に今も臨時列車として活躍する国鉄形の189系電車。
全て6両で4編成が残っており、国鉄色、あずさ色、あさま色、そしてもう1編成は、80年代から90年代初めのJR初期に走っていた「グレードアップあずさ色」となっています。
この夏も「グレードアップあずさ色」の編成は、臨時の「木曽あずさ号」として中央西線に入線するなど話題を呼んでいます。
●今年7月、小淵沢駅の新駅舎オープン!
そんな中央本線から、小海線が分岐している高原の駅、山梨県北杜市の「小淵沢駅」新駅舎が、今年(2017年)7月3日にオープンしました。
利用者にとっての最大のポイントは、改札が2階に設けられたことで、清里・野辺山方面へ向かう小海線ホームへ行くのに中央線ホームを経由しなくてもよくなり、移動がスッキリしました。
合わせてエレベーターの設置などのバリアフリー化は勿論、国内有数の日照時間を誇る地域という利点も活かして、晴れた日には駅で消費するエネルギーを100%太陽エネルギーでまかなう新しい取り組みも始まっています。
(参考:JR東日本八王子支社プレスリリース、5/18分)
その小淵沢駅舎1階にオープンしたのが、「MASAICHI(まさいち)本店」。
小淵沢の駅弁屋さん「丸政」が立ち上げた新ブランドのお店です。
「MASAICHI」という名前に、「丸政」創業者・名取政一氏の名前を冠したあたり、新ブランドにかける意気込みが強く感じられるもの。
早速、新しいお店に入ってみましょう。
落ち着いてすっきりした店内には、小淵沢の名物駅弁はもちろん、ご当地の土産などがズラリ。
それだけでなく、最奥には5席ほど、電源コンセント付きカフェスペースが設けられています。
上り最終特急の「スーパーあずさ36号」に合わせて20:50まで営業しており、列車待ちのひと時をお茶しながら、あるいは駅弁をいただきながら、ゆったり過ごすことが出来るようになりました。
駅弁屋さんの売店は数多くあれど、イートイン&カフェを設けたお店は面白いと思います。
毎時1本ずつの特急、普通列車の駅では、列車までにお腹が空いちゃうことも多いですしね。
●駅弁屋さんが選んだ「本当に美味しいもの」を食べてほしい!
「丸政」の名取政義社長によると、「MASAICHI」ブランドには創業者の名前を冠した以上に、「丸政が選んだイチバン美味しいもの」という意味も込められているといいます。
加えて「丸政の市場(いちば)」、そして来年(2018年)で創業から100年を迎えることから「丸政の一世紀」という意味もかけているそう。
その「イチバン美味しいもの」とは?
メインの棚に並んだのは、駅弁屋さんのカギである『米・梅干し・海苔』!
駅弁屋さんを取材していて思うのは、駅弁を作っている皆さんは、本当に地元の、さらには全国の「美味しいもの」を知り尽くしているということ。
駅弁作りでも実際に全国を食べ歩いて、弁当に最適な食材をチョイスしているといいます。
そのノウハウを活かして選び抜いた、本当に美味しい「米・梅干し・海苔」を「MASAICHI」ブランドとしてお店に集めているんですね。
旅行者には『駅弁のあの美味しいご飯をウチでも…』という形で使えますし、地元の方も駅のお店へ行けば、『よその家に持っていけるチョットイイ物が手に入る』というスタイルでも使えそう。
ただの土産物屋さんではなく、“駅弁屋さんの目利きの力”を商品化したという点がとても斬新!
20年そこそこの「道の駅」にはない、100年続く「鉄道駅の駅弁屋」だからこその店といえましょう。
●新宿までの2時間が楽しくなるアイテムがいっぱい!
小淵沢で駅弁や土産を買うシチュエーションといえば、清里や白州辺りから「スーパーあずさ・あずさ」に乗って、新宿に帰るイメージが強いかもしれません。
特に夏場は山歩きを楽しんで、お酒を買い込んで一杯やりながら、帰る人の姿がよく見られます。
そんな新宿まで2時間の「お供」に欲しくなっちゃうアイテムも、「MASAICHI」ブランドで登場。
果物王国・山梨らしくドライフルーツはもちろん、「おかき」に「おつまみ」なども充実しています。
私が個人的に“神ってるつまみだなぁ”と感じたのが「焼ししゃも」。
コレはまず間違いなくビールが一層美味しくなる!!
名取社長によると全国を回る中で、「本当にいいもの」を作る力はあるのに、大量生産できなかったり、売る場所が無くて・・・というお店が多かったのだそう。
そんな駅弁屋さんの目に適った知られざるモノに光を当てて、「本当に美味しいもの」を皆さんにもっと食べて貰いたいという思いも、「MASAICHI」ブランドには込められているといいます。
『駅弁の美味しさは分かるけど、お菓子は果たしてど~なの?』という、斜めにモノを見たくなってしまう人にも、きっと重宝するのが、カウンター脇に設けられた「試食コーナー」。
実際に販売されているドライフルーツやおかきなどが、自由に試食できるようになっています。
まずはココで試食して、新宿までの「気に入ったお供」を決めていくのがおススメかも。
訪れた日も、ちびっ子と一緒におやつ選びを楽しむ親子連れの姿が見られました。
●小淵沢新駅舎を記念した新作駅弁も登場!
さて、「MASAICHI」ブランドだけでなく、小淵沢新駅舎の誕生を記念した新作駅弁も登場しました。
その名もズバリ、「八ヶ岳弁当」(1,100円)!
掛け紙は小淵沢駅を中心に見える風景が描かれていて、上に八ヶ岳、下に南アルプス、右下には富士山の姿も見え、真ん中に中央本線と小海線の線路が伸びています。
手掛けたのは、小淵沢在住の画家・大谷清さんです。
【お品書き】
・虹鱒の蒲焼(北杜市産)
・もろこしの天麩羅
・八ヶ岳高原玉子焼(八ヶ岳産)
・鶏の照り焼き&鶏そぼろ
・姫竹の子
・花人参
・しめじ
・古代紫米(北杜市産)
・白米(北杜市産)
・干し大根の煮物(北杜市産)
・野沢菜炒め
・赤カブ大根漬物
・梅花蓮根
・こごみ
「八ヶ岳弁当」だけに、八角形の折詰になっているのは遊び心。
加えて、北杜市が8町村合併で出来たことや、小淵沢駅の標高が881mであること、さらにはJR東日本「八王子支社」管内最西端の駅であることも“かかって”いるそうです。
さらに「八ヶ岳弁当」が面白いのは、小淵沢販売分の最初の500個が限定版になっていること。
この500個には、折詰に北杜市産の木材(アカマツ)が使われているんです。
それゆえ限定版は、通常版に比べて100円プラスの1,200円となっています。
地産地消駅弁はしばしばありますが、容器まで地産地消にこだわった駅弁は貴重ですね。
ご飯は、古代紫米と白米のハーフ&ハーフ。
その上に地元産のニジマス蒲焼や干し大根の煮物などが載ります。
玉子焼きやトウモロコシの天ぷらで八ヶ岳らしさを演出し、「丸政」十八番の鶏肉料理も・・・。
バラエティに富んだ構成ながら、程々の食べきれる量に抑えているのも好印象です。
最低1年は続けたいという地元食材たっぷりの新作駅弁、小淵沢駅新駅舎1階の「MASAICHI本店」中央付近にあるショーケースの中から見つけてみましょう。
まだまだ残暑厳しいニッポンの夏。
中央本線のE351系・特急「スーパーあずさ」も、アルプスの山々へ、高原の避暑地へ向かう人を連日いっぱい乗せて快走しています。
標高881mの小淵沢駅に降り立てば、東京都心よりもちょっぴり爽やか高原の風。
この夏は、避暑旅がてら高原の駅に生まれたニュースポットを訪ねて、「本当に美味しいもの」を探してみてはいかがでしょうか?
連載情報
ライター望月の駅弁膝栗毛
「駅弁」食べ歩き15年の放送作家が「1日1駅弁」ひたすら紹介!
著者:望月崇史
昭和50(1975)年、静岡県生まれ。早稲田大学在学中から、放送作家に。ラジオ番組をきっかけに始めた全国の駅弁食べ歩きは15年以上、およそ5000個!放送の合間に、ひたすら鉄道に乗り、駅弁を食して温泉に入る生活を送る。ニッポン放送「ライター望月の駅弁膝栗毛」における1日1駅弁のウェブサイト連載をはじめ、「鉄道のある旅」をテーマとした記事の連載を行っている。日本旅のペンクラブ理事。
駅弁ブログ・ライター望月の駅弁いい気分 https://ameblo.jp/ekiben-e-kibun/