今年(2017年)春から、10年ぶりに札幌~旭川間に復活した特急「ライラック」。
特急「カムイ」と合わせ30分~1時間間隔で運行され、札幌・旭川間を1時間25分で結びます。
「ライラック」は、北海道の行政・経済の中心・札幌市の木。
特急列車の愛称としても、昭和55(1980)年から平成19(2007)年まで、室蘭~札幌~旭川を結ぶ電車特急として四半世紀以上にわたって親しまれてきました。
この辺りの経緯は以前、駅弁膝栗毛でも「北海道・電車特急の系譜」としてご紹介しましたね。
今回、「ライラック」が復活したのは、札幌~旭川間の電車特急の車両が変わったため。
グリーン車付6両の列車が「ライラック」、従来の普通車のみ5両の列車は「カムイ」となりました。
「ライラック」には、平成14(2002)年12月から平成28(2016)年春の北海道新幹線開業まで、13年あまりにわたって青函連絡特急「スーパー白鳥」として活躍した789系電車が使われています。
本州でもおなじみだった車両が、新天地でも活躍していると、ちょっと嬉しくなります。
「ライラック」の789系先頭車両には、沿線ゆかりのイラストが「ラッピング」されました。
全6編成24種類のラッピングがあり、どの編成に当たるかは当日のお楽しみとなっています。
この日は、ちょうど旭川ゆかりの「旭山動物園」の動物たちが描かれた編成に当たりました。
7月で開園50周年を迎えた「旭山動物園」の記念ステッカーも貼られていますね。
8月までの土・休日は、「ライラック5・38号」の時間帯の列車が、「ライラック旭山動物園号」として運行されていて、1号車の一部が記念撮影スペースとなり、乗車証明書なども配られています。
グリーン車付き「ライラック」の誕生は、網走行の特急「オホーツク」、稚内行の特急「スーパー宗谷」の一部が運行区間を短縮、旭川折り返しとなったことも関係しているようです。
夕方5時前の旭川駅では、札幌からの「ライラック25号」を挟むように、稚内から到着したキハ261系の「サロベツ4号」、発車を待つキハ183系「大雪3号」網走行が並びました。
乗り継ぎが必要な列車同士は向かいのホームに停車して、乗り換えの便が図られています。
「ライラック」と「大雪・サロベツ」との乗換時間は、概ね10分が確保されています。
札幌~網走・稚内を乗り通すと5時間以上、ずっと車内では少し退屈なのが正直なところ。
その意味でも、旭川で10分のブレイクタイムが出来たのは、個人的には嬉しく思います。
しかも、旭川の駅弁を買えるチャンスが“増えた”とも捉えることが出来るわけで・・・。
今回は、去年10月登場の旭川駅立売商会の「旭川しょうゆ豚丼」(1,080円)をいただきました。
旭川ご当地ブランド「キッコーニホン」の醤油を使ったたれで、旭川産豚肉を焼き上げた豚丼。
醤油の風味が活きて、帯広のような甘辛の味とは一線を画した、落ち着いた味わいです。
そぼろで味にアクセントをつけることも出来、きんぴらなどのおかずが付いたのも嬉しいところ。
以前から旭川には豚肉駅弁がありましたが、今回の駅弁では、旭川ならではの“オトナの豚丼”に仕上がっているように感じました。
札幌~旭川間の電車特急と、旭川~網走・稚内間の気動車特急を乗り継ぐ旭川駅。
“途中下車を楽しむマインド”を鍛えれば、直通時代にはなかった10分間が味わえます。
その気になれば、最初の予定にはなかった“旭川の味”を味わうチャンスにも・・・。
折角の乗り換え、不便さを嘆く前に、まずは「楽しさ・面白さ」を開拓してみてはいかがでしょうか。
連載情報
ライター望月の駅弁膝栗毛
「駅弁」食べ歩き15年の放送作家が「1日1駅弁」ひたすら紹介!
著者:望月崇史
昭和50(1975)年、静岡県生まれ。早稲田大学在学中から、放送作家に。ラジオ番組をきっかけに始めた全国の駅弁食べ歩きは15年以上、およそ5000個!放送の合間に、ひたすら鉄道に乗り、駅弁を食して温泉に入る生活を送る。ニッポン放送「ライター望月の駅弁膝栗毛」における1日1駅弁のウェブサイト連載をはじめ、「鉄道のある旅」をテーマとした記事の連載を行っている。日本旅のペンクラブ理事。
駅弁ブログ・ライター望月の駅弁いい気分 https://ameblo.jp/ekiben-e-kibun/