【ライター望月の駅弁膝栗毛】
福島で東北新幹線「やまびこ」号と分かれ、単独運転となった山形新幹線「つばさ」号。
E3系新幹線は、高架を下りて奥羽本線に入り、福島市郊外の田園地帯を進みます。
一部ローカル列車の折り返し駅となっている庭坂(にわさか)駅を通過すると程なく、列車は右に大きくカーブを描いて、グッと上り勾配に差しかかります。
ココは、「庭坂のカーブ」と呼ばれる、鉄道好きには有名な場所です。
「つばさ」に乗っていても、それまで平坦だった土地が上り坂に変わり、電車のモーターの唸りも、いくらか大きくなったのにスピードは上がらず、勾配がきつくなっている様子が分かります。
庭坂のカーブは、『さァ、いよいよ板谷峠越えが始まるゾ!』という気持ちにさせてくれる、山形新幹線随一の旅情ポイント。
この車窓を眺めて旅情を感じることが、山形へ行くための“通過儀礼”と言ってもいいでしょう。
訪れた今年の夏、水田の一角にはハス田もあって、ちょうど花の時期でした。
元々、ココは撮影ポイントとして知られる場所ですが、この日はカメラを持った多くの人が、ハスの花と新幹線を一緒に収めようとしていました。
田んぼの季節も終わり、紅葉を迎え、その後は雪の季節が近づいてきます。
冬場の「つばさ」に乗っていても、ココから先、段々と雪の量が増えていくのが分かります。
板谷峠を越えた先は、山形・米沢。
米沢駅弁といえば、先月(9月)にご紹介した「新杵屋」の「牛肉どまん中」が有名です。
でも!まだまだいろんな駅弁があります。
今回はその中から、「米沢名物 牛そぼろ弁当」(1,050円)をご紹介。
現在、東日本エリアで開催中の「駅弁味の陣 2017」のエントリー駅弁でもあります。
【お品書き】
そぼろご飯(牛そぼろ・卵そぼろ)
小いも煮
人参煮
にしん昆布巻き
かまぼこ
卵焼き
桜漬け
新杵屋の牛そぼろといえば、秘伝のたれを使って作られることでおなじみ。
この牛そぼろが白飯の上に分厚く盛られており、箸を入れると思った以上にご飯にたどり着くまで時間がかかるサプライズがあって嬉しい気持ちになります。
今回、改めていただいたのですが、牛そぼろと卵そぼろを“まぜまぜ”していただくと、味のハーモニーがより一層楽しめます。
10~11月の山形は、紅葉をはじめ、新米、新そばなど秋の味覚もいっぱいです。
ちなみに、福島~米沢間には、来月(11月)にも高速道路の開通が予定されています。
様々な形で行き来が盛んになることはいいことですが、食事と酒を楽しむならやっぱり新幹線。
「庭坂のカーブ」で旅情を感じつつ、最高時速275kmで走ることが出来る新幹線が、必死になって山登りに挑む様子に「がんばれ!」と心のエールを送るのもまた、鉄道旅の楽しみなのです。
連載情報
ライター望月の駅弁膝栗毛
「駅弁」食べ歩き15年の放送作家が「1日1駅弁」ひたすら紹介!
著者:望月崇史
昭和50(1975)年、静岡県生まれ。早稲田大学在学中から、放送作家に。ラジオ番組をきっかけに始めた全国の駅弁食べ歩きは15年以上、およそ5000個!放送の合間に、ひたすら鉄道に乗り、駅弁を食して温泉に入る生活を送る。ニッポン放送「ライター望月の駅弁膝栗毛」における1日1駅弁のウェブサイト連載をはじめ、「鉄道のある旅」をテーマとした記事の連載を行っている。日本旅のペンクラブ理事。
駅弁ブログ・ライター望月の駅弁いい気分 https://ameblo.jp/ekiben-e-kibun/