郡山駅「海苔のりべん」(950円)~福島交通「いい電」のチョット“いい話”①

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【ライター望月の駅弁膝栗毛】

E721系

E721系普通列車、東北本線・郡山駅

東北本線(新白河~一ノ関間)などで活躍するE721系電車。
2両と4両の編成があり、ラッシュ時は繋ぎ合わせて、柔軟な車両運用が行われています。
10年前の平成19(2007)年にデビューした車両(右)は、グリーンに赤い帯を巻いています。
去年(2016年)にデビューしたタイプ(左)は、さくら色の帯になりました。
同じカオの車両でも、ラインの色をちょっと変えるだけで、印象が変わるものです。

福島駅

福島駅

車両の顔は、鉄道会社の「カオ」というべきもの。
会社が変われば、車両のカオも当然のように変わります。
福島駅の北側にJR線ホームとは別に、福島交通飯坂線(左)と阿武隈急行線(右)の列車が共用しているホームがあります。
同じホームに停まっていても、車両はカオは全く違うのが、面白いところですね。

桜水車両基地

福島交通1000系、桜水車両基地にて

そんな福島市の地元の足となっている福島交通飯坂線、愛称「いい電」に、この春、新型車両「1000系」がデビューしました。
実はこの「1000系」、元は東急東横線~日比谷線の直通運転に使われていた車両です。
かつては霞が関、日比谷、銀座と、東京の真ん中を走っていた車両が今、福島で“第二の人生”をスタートさせているという訳なんですね。

小松大希

デザインを担当した小松大希さん

福島交通の新たなカオ「1000系」をデザインしたのは、小松大希(こまつ・だいき)さん。
昭和60(1985)年5月9日生まれの32歳、宮城県在住のデザイナーです。
設計事務所で建物を設計する仕事をしながら、鉄道にまつわる様々なデザインも担当。
福島交通1000系で初めて、実車のデザインを手がけました。
今回、8月下旬に福島交通・桜水車両基地に伺って、小松さんにお話を伺いました。

―小松さんも「鉄道大好き」なんですよね?

これまで「描き鉄(かきてつ)」としてやってきました。
列車や列車が走る風景を「絵に描く」鉄道ファンですね。
写真の「撮り鉄」ですと、被写体やシーンも限られてしまいますが、「描き鉄」なら自分の思ったこと、想像したことをそのまま絵に出来る利点があります。
例えば、先日は「仙石東北ライン」(注)が空を飛んだ絵を描いてみました。

(注1)仙石東北ライン
平成27(2015)年5月から運行されている、東北本線と仙石線の直通サービスのこと。
東北本線と仙石線は、松島の近くでほぼ並行して走っていながら、東北線が交流、仙石線が直流で電化されていたため、電化方式の違いから直通運転は行われていなかった。
震災以降、沿岸地域の復興促進をきっかけに2つの路線の間に接続線が作られ、ハイブリッド式のディーゼルカーによる直通運転が始まり、仙台~石巻間は最速52分で結ばれるようになった。
現在は一部列車が、石巻線・女川(おながわ)まで直通運転している。

―CGを使って「描いて」るそうですね?

使っているのは、普段から使っている建築用の「CAD(キャド)」です。
平成18(2006)年頃に、車両の形式図を描いたのが最初だと思います。
単純に「CAD」で好きな電車を描いたらどうなるだろうという好奇心から始まりました。
そこから派生して、色を塗りはじめて、空を入れてみたり、山や川を入れてみようと・・・。
確かキハ58の「おもいで号」(注2)が、岩手山をバックに花輪線を走ったら・・・というのを想像して描いたのが最初です。

(注2)おもいで号
国鉄・急行形気動車の決定版・キハ58形には、「修学旅行色」と呼ばれる黄色い車両があり、2000年代初め、宮城県内の小牛田運輸区所属の車両に、引退を前に復刻塗装が行われた。
これに昔の修学旅行列車の愛称でもあった「おもいで」のヘッドマークも付けられ運行された。
実際の「おもいで」号は、花輪線を走っていなかったという。

―小松さんは普段、仙台を拠点に仕事をされているそうですが、今回、「福島交通」で電車のデザインを手がけられました。どんな経緯があったんでしょうか?

震災直後に仙台を拠点とする鉄道趣味団体のメンバーが(震災で痛手を受けた)各社さんにスタンプを贈るという取り組みに、私自身が参加しました。
これがきっかけで福島交通さんとご縁が出来て、様々な鉄道イベントに参加させていただくようになりました。

(福島交通・鉄道部、三浦部長から)
「1000系」のデザインは当初、社内でやる予定でした。
ただ、デザインの素人が集まってもなかなかいい案は出てきません。
そこで、(描き鉄の)小松さんに相談しようとなったんです。

福島交通1000系

福島交通1000系

―ファンから始まって実車のデザイン・・・嬉しかったでしょうね?

鉄道好きとしては今までにない喜びでしたし、その反面、責任の重さを感じました。
私自身は鉄道車両を「動く建築物」というイメージで捉えています。
だから公共建築と同じで、出来るだけ多くの方に受け入れてもらいやすいデザインにしなくちゃいけないと思いました。
特に「いい電」は地域に密着した通勤通学路線ですし、観光路線ですので、奇抜なデザインよりも、まずは親しみやすさを意識しました。

飯坂温泉駅

福島交通・飯坂温泉駅前の夕景

―描き鉄をしていた時と車両のデザイン・・・どう違いましたか?

根本的に違いました。
「描き鉄」のように自由に描けばいいものではなく、既に導入される車両の形は決まっていましたから、かなり制約がありました。
その上で、デザインに当たっては、福島の風景に馴染むように、実際に自分自身の足で、沿線を歩いて、こんな店がある、湧水があるといった発見をしながら、イメージを膨らませていきました。
この過程で自分の色をいかにして出していくかが正直、とても難しかったです。

(小松大希さんインタビュー、次回に続く)

海苔のりべん

海苔のりべん

福島の“いい駅弁”・・・それぞれにいい所があるので絞り込むのは難しいですが、1つ挙げるなら、郡山駅弁「福豆屋」が手がける「海苔のりべん」(950円)ではないでしょうか。
平成22(2010)年に発売され、当初は“地味な駅弁”といわれていたそうですが、数年前からマツコ・デラックスさんのテレビ番組などで取り上げられ、昨今の“海苔弁”ブームの火付け役に・・・。
郡山駅はもちろん、福島駅新幹線改札内の売店、東京・大宮などでもよく見かけます。

海苔のりべん

海苔のりべん

【お品書き】
白飯(焼海苔、おかか、ごま、梅干、昆布佃煮)
玉子焼
焼鮭
煮物(えびいも、人参ほか)
きんぴらごぼう
かまぼこ
赤かぶ漬

海苔のりべん

海苔のりべん

昨今、これだけ肉駅弁が流行っている中、幕の内の三種の神器“焼魚・玉子焼・蒲鉾”をベースに、肉無しのおかず構成で売れているのは、シンプルに美味しいからだと思います。
特に脂が乗った焼鮭と一緒に、海苔・おかか・ごまの白いご飯を頬張る時が至福の時。
「みちのく寒流海苔」は福豆屋が長年、駅弁の海苔巻などに使っている宮城県産のもの。
みちのくの玄関・郡山ということで、“ココからみちのく!”という思いが込められているそうです。

海苔のりべん

海苔のりべん

「福豆屋」の「海苔のりべん」の真骨頂は、何と言っても二層式!
ご飯を食べ進めていくと、下の海苔と昆布の佃煮の層が見えてくるのが嬉しいんです。
「福豆屋」の小林さんによると、この“二層”はお母様が作ってくれた海苔弁がモチーフなんだそう。1年を通じて、ほぼ休みの無い駅弁屋の女将という仕事。
それでも家族のための弁当を、ササッと作らなくてはいけません。
時間の無い中、家族のためにせめて出来ることは・・・そんな思いから海苔を2枚使って、二層の海苔弁を持たせてくれていたのだそうです。
実は「海苔のりべん」の海苔の下には、海苔だけでなく「お母さんの愛」が隠れていたのです。

「海苔のりべん」は、手作りのため、1日頑張っても400個ぐらいなんだそう。
首都圏でも見かけますが、やはり福島の駅弁は、福島の景色を眺めていただくのがイチバン!
ぜひ機会を作って、現地で福島が誇る“いい駅弁”に出逢って下さい!!

連載情報

ライター望月の駅弁膝栗毛

「駅弁」食べ歩き15年の放送作家が「1日1駅弁」ひたすら紹介!

著者:望月崇史
昭和50(1975)年、静岡県生まれ。早稲田大学在学中から、放送作家に。ラジオ番組をきっかけに始めた全国の駅弁食べ歩きは15年以上、およそ5000個!放送の合間に、ひたすら鉄道に乗り、駅弁を食して温泉に入る生活を送る。ニッポン放送「ライター望月の駅弁膝栗毛」における1日1駅弁のウェブサイト連載をはじめ、「鉄道のある旅」をテーマとした記事の連載を行っている。日本旅のペンクラブ理事。
駅弁ブログ・ライター望月の駅弁いい気分 https://ameblo.jp/ekiben-e-kibun/

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