【ライター望月の駅弁膝栗毛】
山陽新幹線の「のぞみ」と並ぶ主役といえば、九州新幹線直通の「みずほ・さくら」号。
かつて共に九州行きのブルートレインで親しまれた愛称は新幹線に引き継がれ、今は8両のN700系が、山陽路を最高時速300kmでビュン! と駆け抜けていきます。
主要駅に停まる「みずほ」、通過駅のある列車が「さくら」という棲み分けになっていますが、最近は姫路停車の「みずほ」も増えてきました。
そんな一層、存在感を増している姫路駅の駅弁を手掛けるのが、明治21(1888)年創業で、今年(2018年)、創業130周年を迎える「まねき食品」。
シリーズ「駅弁屋さんの厨房ですよ!」の第9弾は、この「まねき食品」にお邪魔しています。
まねき食品の本社は、姫路駅より少し大阪寄りの新幹線高架脇にありますので、新幹線の
車窓からご覧になった方もいるかもしれませんね。
昔から駅弁では、幕の内弁当などと合わせて、寿司が売られるのが一般的でした。
(明治20年代から30年代にかけては)それまでのお弁当やお寿司といった品種の他に、特殊弁当が工夫されて、今日の品種の基礎を作った時代である。
(引用:汽車瓣文化史・雪廼舎閑人著)
つまり鉄道の草創期は、幕の内である「普通弁当」や助六のような「寿司」が一般的で、鯛めしや鶏めしといった特定食材を使った「特殊弁当」は、後から出てきた駅弁なんです。
このため、昔からの駅弁屋さんには、今も「寿司」のノウハウが受け継がれています。
「まねき食品」の調理場でも、いなり寿しが1つ1つ手作業で作られていました。
今回、「まねき食品」にお邪魔して驚いたのは、思いのほか「手作業」が多いということ。
もちろん大きな工場ゆえ、白飯の炊飯など、機械化されている部分も多くあります。
でも、調理の要となる部分にはちゃんと人の手が入っていて、エビも一尾一尾丁寧に調理されているんですね。
そして、瀬戸内エリアで欠かせない駅弁食材といえば、何と言っても「穴子」!
サッと素焼きされ、所々焦げ目が入った穴子に、一本一本包丁が入れられていきます。
ココからさらに穴子は、特製のたれで炊き上げられていくのだそう。
この切れ目から煮汁がしみ込んでいく様子を想像するだけでも、もう美味しさが爆発しそう!
こうして、一本穴子を丸々使って出来上がってきたのは・・・?
姫路を代表する寿司駅弁「名代あなご寿司」(1,800円)!
極太の穴子寿司が、タレと山椒と酢が合わさった食欲をそそる香りと共に現れました。
穴子に手が込んでいるのはご覧いただいた通りですが、実は寿司飯も見事!
寿司飯の中に、椎茸と山椒の実が混ぜ合わさって入っているのです。
ただ酢飯を押しただけではない、ひと手間かかった寿司飯に胸がときめきます。
惚れ惚れする穴子の肉厚っぷり!
それなのに柔らかく煮込まれ、歯触りがやさしいのです。
さらに、椎茸と山椒の食感が合わさることで、飽きることなくいただくことが出来ます。
訊けば「まねき食品」の十八番は、「煮物(炊き)」と「寿司」なんだそう。
つまり「まねき食品」の自信が、この一本に凝縮されていると言っても過言ではないのです。
さあ、「まねき食品」の潜入レポ、まだまだ続きますよ!!
連載情報
ライター望月の駅弁膝栗毛
「駅弁」食べ歩き15年の放送作家が「1日1駅弁」ひたすら紹介!
著者:望月崇史
昭和50(1975)年、静岡県生まれ。早稲田大学在学中から、放送作家に。ラジオ番組をきっかけに始めた全国の駅弁食べ歩きは15年以上、およそ5000個!放送の合間に、ひたすら鉄道に乗り、駅弁を食して温泉に入る生活を送る。ニッポン放送「ライター望月の駅弁膝栗毛」における1日1駅弁のウェブサイト連載をはじめ、「鉄道のある旅」をテーマとした記事の連載を行っている。日本旅のペンクラブ理事。
駅弁ブログ・ライター望月の駅弁いい気分 https://ameblo.jp/ekiben-e-kibun/