【ライター望月の駅弁膝栗毛】
人口50万人あまりを擁する、兵庫県播磨地方の中心都市・姫路。
ターミナルの姫路駅は、山陽新幹線、山陽本線のほか播但線、姫新線が発着しています。
特に姫新線は姫路と岡山の新見を結ぶ長い路線ですが、姫路郊外への近距離輸送が主な役割となっており、新型気動車のキハ127系も投入され、朝夕の通勤通学を担います。
まさに地域に密着した「地元の足」といった感じの路線です。
そんな姫路で地元密着の駅弁屋さんとして、明治21(1888)年の創業以来、130年の歴史を誇るのが「まねき食品」。
シリーズ「駅弁屋さんの厨房ですよ!」第9弾は、この「まねき食品」の6代目・竹田典高専務取締役と、駅弁開発に当たっている廣重泰寛企画室長のお2人にお話を伺っています。
今回は、姫路ならではの地域的な特色から、あの名物駅弁の裏側に迫ります。
(まねき食品)
http://www.maneki-co.com/
―姫路駅といえば「えきそば」が有名ですが、この地域ならではの「食」の特徴というものはありますか?
(兵庫県の)播磨という地域は、正直、これといった名産は無いけれど、いろんな食べものが手に入る場所なので、これまで食べ物で困ったことがあまりないんです。
だから、姫路の方は、ホントに舌が肥えてます。
味の評価が厳しいです。
「えきそば」でも、ホームで味が違うと言われたことがあります。
(廣重)
姫路駅が新しい駅舎になった時、ガスが使えなくなって、電磁調理器に代わりました。
この時に一番よく言われましたね。
出汁の味が違う、変わったというんです。
でも、作ってる方は、全く変えていないんです。
恐らく、ガスの火でゴロゴロ沸かすのと、電磁調理器で沸かすのとは、出汁の味が違うのかもしれません。
―姫路の方は「出汁」の味のちょっとした違いも分かるんですね!
一時、播但線ホームの「えきそば」だけ、ガスの火で営業していたことがあるんです。
その時は播但線の売り場が一番よく売れていました。(現在は無し)
ま、売り場の雰囲気がちょっと昔っぽかったというのがあるとは思いますが・・・。
(廣重)
子どもの頃から、姫路駅といえば「えきそば」を食べていました。
あと、家に何か人が集まるようなことがあると、「まねき食品」の仕出しを取っていただいたり、子供会の行事などで出かける時になると、ウチの弁当が出ていました。
それだけ、地元の方には、昔から慣れ親しんだ味なんです。
(えきそば)
https://www.1242.com/lf/articles/85615/?cat=gourmet&feat=ekiben
―この「出汁」へのこだわりは、駅弁にも活かされていますか?
(廣重)
実はおかめ弁当などの「だしめし」は、「えきそば」の和風だしで炊いているんです。
「おかめ弁当」は、だしめしの上にいろんなおかずをトッピングした弁当です。
一般的に味付けご飯のことを“茶飯”と呼んだりしますが、この「だしめし」は、「まねき食品」のこだわりなんです。
駅弁大会などでも、姫路から「出汁」を持ち込んで調理しています。
ご飯と具材の絶妙なバランスは、普通の炊き込みご飯では出せない味と自負しています。
そばだしの風味が引き立ててくれるんですよね。
―そもそも「おかめ弁当」は、なぜ「おかめ」なんですか?
(廣重)
岡目八目という言葉にちなんで、ネーミングしたといわれています。
昔は“姫路通れば、おかめが招く”というキャッチフレーズで販売していました。
今はパッケージにも、このキャッチを復活させて入れ込んでいます。
―「おかめ弁当」もロングセラー駅弁ですが、ファンの方も多そうですね?
意外に男性の方が買ってくれるんです。
出汁はサバ、カツオをメインにした魚介系のものです。
普通の炊き込みご飯は、炊きすぎると味が今一つになってしまうんですが、あの「えきそば」の出汁は、炊き込めば炊き込むほどいい味わいになるのが不思議なんです。
グラグラと沸騰するくらいに炊いた方がいいんです。
寒い時にいただくと、一層味わい深いと思います。
冬場、マラソン大会などのイベントで出すと、皆さん美味しそうに召し上がって下さるんです。
(竹田専務、廣重企画室長インタビュー、つづく)
改めていただくと、ホントにおかずいっぱいの「おかめ弁当」(900円)!
牛肉煮、鶏そぼろ、焼き穴子、酢海老、いかなごの釘煮、椎茸・山菜と、海・山の幸がびっちりと載っていて、飽きることなくお腹いっぱいになります。
このバラエティ豊かなおかずを一つにまとめるのが、あの「えきそば」の出汁で炊いたご飯!
姫路のソウルフード「えきそば」の偉大さは、駅弁を食すことで改めて実感できることでしょう。
連載情報
ライター望月の駅弁膝栗毛
「駅弁」食べ歩き15年の放送作家が「1日1駅弁」ひたすら紹介!
著者:望月崇史
昭和50(1975)年、静岡県生まれ。早稲田大学在学中から、放送作家に。ラジオ番組をきっかけに始めた全国の駅弁食べ歩きは15年以上、およそ5000個!放送の合間に、ひたすら鉄道に乗り、駅弁を食して温泉に入る生活を送る。ニッポン放送「ライター望月の駅弁膝栗毛」における1日1駅弁のウェブサイト連載をはじめ、「鉄道のある旅」をテーマとした記事の連載を行っている。日本旅のペンクラブ理事。
駅弁ブログ・ライター望月の駅弁いい気分 https://ameblo.jp/ekiben-e-kibun/