【ライター望月の駅弁膝栗毛】
関西を代表する車両の1つ、221系電車。
JR西日本が発足後初めて作った車両で、平成元(1989)年のデビュー以来、東海道・山陽線(JR京都線・神戸線)の新快速・快速や、関西線の大和路快速などで活躍してきました。
登場から30年近くを経た今も、リニューアル工事を受けながら、東海道・山陽線では快速を中心に運行されており、京阪神を結ぶ大切な足となっています。
東海道・山陽線の主要ターミナルの1つ・姫路駅の駅弁をピックアップしてきた「駅弁屋さんの厨房ですよ!」の第9弾。
「まねき食品」の竹田典高専務と、廣重泰寛企画室長のインタビューをお届けしています。
姫路になくてはならない味として、地元に密着している「まねき食品」。
今回は、日本の駅弁屋さんで「初めて」の取り組みについて伺いました。
―「まねき食品」は地元・姫路に根差していながら、今は「bentoを世界に」というキャッチフレーズを掲げていらっしゃいますよね?
私(竹田専務)が経営に関わるようになった11年ほど前からです。
せっかくやるからには「面白い会社にしたい!」という思いがありました。
寿司やラーメンが日本文化として広く認められているのに、「弁当」が無いのはどうしてかなぁというところから始まったんです。
私も外国へ行った時、美味しくない日本料理に出逢ったりすると、正直がっかりします。
「もっと美味しいものを出せるのになぁ・・・」、そんなもどかしい思いがありました。
―そこから10年かけて去年(2017年)、日本の駅弁屋さんとして初めて、台湾の「台北」に進出を果たしましたが・・・、なぜ台北だったんですか?
やはり、台湾には鉄道が走っています。
新幹線もありますし、日本に来ている方も多くて、親日的な方も多いというのがありますが、個人的にパイプがあったというのが大きいですね。
実は姫路にいらっしゃる海外の方も、台湾からの方が一番多いんです。
その意味でも“インバウンド需要”にもつながると・・・。
逆に関西からですと、台湾なら東京とあまり変わらない金額で行けますしね。
―ほかの駅弁屋さんは、「海外で常設店」というのは、まだやってないですよね?
やっぱり「日本で最初!」というのは、やりたかったです。
後々、ずっと言うことが出来ます。
幕の内弁当も、最初に出したお陰で、今でも言えますからね。
―日本から近いとはいえ食文化は違うと思いますが、台湾の食文化に合わせていますか?
あくまでも「日本式」にこだわっています。
ただ、食材は台湾のものを使うようにしています。
メニューの考案は日本側で行って、現地の食材で落とし込むという形ですね。
(廣重)
台湾の方は固めのご飯を好まれるので、ご飯の固さの好みなどは、向こうの文化に合わせるようにしています。
味付けも向こうの方が敬遠するものは、出来るだけ使わないようにしています。
―台湾の方の「好みの味」って、あるんですか?
(廣重)
甘くて濃い味付けが台湾では好まれるんですよ。
照り焼きだったり、甘だれであったり・・・。
(竹田)
逆に塩辛いものはダメですね。
東京っぽい味付けは、チョット敬遠されてしまいます。
関西や九州の味付けのほうが好まれる印象です。
だから海外の方も、関西へたくさんいらっしゃるのではないでしょうか。
―台北駅のお店がオープンして3か月あまり、反響はいかがですか?
日によって差はありますが、だいぶ安定してきました。
「冷たいのが駅弁」とはいいますが、やはり台湾の方は「あったかいのが好き」なんです。
なので、駅に実演スペースを作って、「出来たて弁当」という形で出すようにしています。
温かくても美味しい、温かくても傷まない弁当を、「日本のノウハウ」で作っている訳です。
今、一番売れているのは「豚の蒲焼弁当」と「牛すき焼き弁当」ですね。
キッチンも日々レベルが上がってきていますから、今度はどんな日本料理を出していこうかとも考えていますし、街の中にも出ていけたらと思っています。
(竹田専務、廣重企画室長インタビュー、つづく)
「まねき食品」が1月に京王百貨店の駅弁大会で出店した際に販売した「記念弁当」のベースとなったのが、この「穴子かさね重」(1,240円)。
姫路の特産の1つに数えられる穴子を使い、“焼き穴子と煮穴子の二層仕立て”というフレーズも躍るパッケージが印象的です。
この“二層仕立て”も、最近の駅弁では1つのトレンドですよね。
焼き穴子の下の「だしめし」を掘っていくと現れる煮穴子!
“焼き穴子 on 煮穴子”で、1度に2つの味が楽しめるのも嬉しいものです。
この駅弁でも使われる甘だれのノウハウは、台湾でも活かされているのでしょう。
先ごろの報道では、平成29(2017)年に大阪を訪れた外国人客が初めて1,100万人を超え、日本を訪れた外国人観光客のおよそ3人に1人が大阪周辺を訪れたと伝えられました。
この時、関空に発着するLCC(格安航空会社)の好調さが伝えられましたが、実は関西が好まれるベースには“関西の食文化”があるのでは・・・と分析する竹田専務。
定期的に姫路と台湾のお店と行き来している人のナマの声は、とても興味深いところです。
その意味では、地理や気候条件がアジア諸都市に近い西日本エリアは、食文化の面でも、訪日外国人客を受け入れる上で、大きなアドバンテージを持っているのかもしれません。
連載情報
ライター望月の駅弁膝栗毛
「駅弁」食べ歩き15年の放送作家が「1日1駅弁」ひたすら紹介!
著者:望月崇史
昭和50(1975)年、静岡県生まれ。早稲田大学在学中から、放送作家に。ラジオ番組をきっかけに始めた全国の駅弁食べ歩きは15年以上、およそ5000個!放送の合間に、ひたすら鉄道に乗り、駅弁を食して温泉に入る生活を送る。ニッポン放送「ライター望月の駅弁膝栗毛」における1日1駅弁のウェブサイト連載をはじめ、「鉄道のある旅」をテーマとした記事の連載を行っている。日本旅のペンクラブ理事。
駅弁ブログ・ライター望月の駅弁いい気分 https://ameblo.jp/ekiben-e-kibun/