【ライター望月の駅弁膝栗毛】
東京から東海道線の普通・快速列車を乗り継いでくると、米原の駅でたいてい出逢うのが、「新快速・姫路行」の列車です。
新快速に揺られると、初めて車窓に海が見えてくるのが、源氏物語で有名な須磨の辺り。
巨大な明石海峡大橋が見えて、その向こうには大きな淡路島を望むことが出来ます。
この景色を眺めると、やっぱり魚介系の駅弁が恋しくなってきますよね!
そんな魚介系駅弁にも、こだわりを持って作っているのが、姫路駅弁の「まねき食品」。
シリーズ「駅弁屋さんの厨房ですよ!」第9弾は、「まねき食品」の6代目・竹田典高専務取締役と、駅弁開発に当たっている廣重泰寛企画室長のお2人にお話を伺っています。
「まねき食品」だけに、本社のエントランスにも、ちゃんと「招き猫」がいますね!
―「まねき食品」が駅弁作りで一番こだわっているのは、どこですか?
料理人さんが皆さん、しっかりしている方だということです。
昔、京都の料亭「菊乃井」から、料理の顧問に来ていただきました。
この時にウチの料理のレベルが、グッと上がりました。
その方からイロイロ教えていただいたことが、今も活かされているというのが強みですね。
この他にはない技術というのが、単に詰合せている駅弁屋さんとは違うと自負しています。
―食材や調理法ではいかがですか?
よく外から言われるのは、「煮物が美味しい」ということです。
特にタコは、(昔から云われているように)大根で叩いて、その大根と一緒に炊くことで柔らかくしています。
一説には大根の繊維質で柔らかくなるといわれています。
もちろん、煮物として「おかず」になる大根は、別に炊いていますけどね。
―そういえば、まねき食品の駅弁って、「わっぱ」のだ円形が特徴的ですよね?
実は昔から「まねき食品」は折を作る部門があって、自社内製していたんです。
それが他にもいろいろできるんじゃないかということで、今は「ショーワパッケージ」という関連会社になっています。
神戸の有名な洋菓子屋さんなど、外のお店にも卸したりしています。
その意味では、パッケージや折、曲げ物など、容器の自由度は高いですね。
(竹田専務、廣重室長インタビュー、つづく)
【お品書き】
・だしめし
・煮物(たこ、牛蒡、大根ほか)
・錦糸玉子
・いかなごの釘煮
・付合せ
実は今回初めて、姫路のたこめしをいただいてみたのですが、ホントにタコがやわらかい!
しかも、大根で「ドンドン!」と叩かれることで、このやわらかさが作られているというアナログな感じも興味深いところです。
姫路駅弁の煮物って、一般的な駅弁の煮物より少しウエットな食感で、大根の煮物などを噛みしめると、口の中にじんわりと心地よく煮汁の味わいが広がります。
「旨い!たこめし」と自ら名乗ることが全くおこがましくない、「まねき食品」の煮物への大きな誇りがギュッと凝縮された駅弁といえましょう。
次回、そんな「和の心」を持った駅弁屋さんの新たな挑戦に注目します。
連載情報
ライター望月の駅弁膝栗毛
「駅弁」食べ歩き15年の放送作家が「1日1駅弁」ひたすら紹介!
著者:望月崇史
昭和50(1975)年、静岡県生まれ。早稲田大学在学中から、放送作家に。ラジオ番組をきっかけに始めた全国の駅弁食べ歩きは15年以上、およそ5000個!放送の合間に、ひたすら鉄道に乗り、駅弁を食して温泉に入る生活を送る。ニッポン放送「ライター望月の駅弁膝栗毛」における1日1駅弁のウェブサイト連載をはじめ、「鉄道のある旅」をテーマとした記事の連載を行っている。日本旅のペンクラブ理事。
駅弁ブログ・ライター望月の駅弁いい気分 https://ameblo.jp/ekiben-e-kibun/