【ライター望月の駅弁膝栗毛】
山陽本線の姫路から分岐して、山陰本線の和田山を結ぶ「播但線(ばんたんせん)」。
兵庫県内の播磨と但馬を結ぶことにちなんだ路線で、山陽と山陰を結ぶ路線の1つです。
播但線を通るキハ189系気動車の特急「はまかぜ」は、但馬地方と姫路、県庁所在地・神戸を乗り換えなしで結ぶ列車として1日3往復が運行されています。
また冬場、松葉ガニの観光シーズンは増結や、臨時列車の増発も行われています。
特急「はまかぜ」は、大阪始発で姫路まで来て、進行方向を変え、播但線に入ります。
このため姫路駅では、「はまかぜ」の全列車が少し長めに停車します。
特に下りの「はまかぜ」は、駅弁(えきそば)売場のある山陽本線の下りホーム(7番のりば)から発車しますので、姫路駅弁を買いやすい列車でもあります。
そんな姫路駅弁をピックアップしてきた「駅弁屋さんの厨房ですよ!」の第9弾。
「“bento”を世界に」をキャッチフレーズに、去年(2017年)台湾への出店を果たした「まねき食品」の竹田典高専務取締役と、廣重泰寛企画室長にお話を伺っています。
―「まねき食品」の駅弁を美味しくいただける“お薦めの車窓”はありますか?
播但線(ばんたんせん)が、一番趣がありそうですね。
姫路でお弁当を買って下さる方の中には、「竹田城」へ足を運ぶ方が多いんです。
姫路城と竹田城をはしごして回られる方とか。
通年ではこの「城めぐり」がお薦めですね。
これから春になると、姫路城の「花見」もお薦めです。
すごいキレイです!
白いお城に薄い赤色の桜の花がよく似合うんですよ。
この時はみんな、お城の前の広場にゴザを敷いて花見しますからね。
国宝・姫路城の花見に合わせて、「まねき食品」の幕の内をお求めいただけたら最高です!
姫路城ゆかりの駅弁といえば、その名も「姫路城櫓弁当」(1,380円)!
去年(2017年)のJR発足30周年を記念して、30年前に姫路駅で売られていた「櫓弁当」が現代風にアレンジされ、復刻販売されています。
実はこの駅弁、2017年10月から2018年1月にかけて西日本エリアで行われた「西日本駅弁ランキング2017」で2位に入賞、新作駅弁や盛り付けの部門でも高い評価を得ました。
【お品書き】
・ちらし寿し(焼穴子、山菜醤油漬ほか)・だしめし
・淡路鶏たれ焼き
・鶏そぼろ
・海老甘酢漬け
・大根生酢
・胡瓜の酢の物
・オレンジ・白飯
・煮物(人参、蓮根、タコほか)
・サゴシ焼
・玉子焼き
・ちくわ磯辺揚げ
・ちりめん山椒佃煮
・柴漬け、生姜漬け
JRグループ30周年のシンボルマークが入って姫路城が描かれたパッケージを開けますと、姫路城の三層の櫓をイメージしたという黒、緑、赤の三段重が現れました。
“三段重”って調理場を見た人間からすると、普通の弁当を3回作って、ようやく1つの駅弁が完成するようなものですから、とんでもなく手間がかかっているんですよね。
それゆえ“華やかな盛り付け”が高く評価され、作り手の皆さんの労も報われたことでしょう。
「まねき食品」十八番の寿司と煮物は勿論、穴子やたこ、名物えきそばの出汁を使って作られた「だしめし」も入った、“まねきオールスターズ”と言っても過言ではない駅弁。
姫路の駅弁をまだいただいたことがない方は、まずこの駅弁から、自分のお気に入りを探してみるのもいいかもしれません。
―台北に出店した「まねき食品」ですが、これからはどんな展開を考えていますか?
もっと「日本の文化」を提案していきたいと思っています。
ウチだけじゃなくて、(少しおこがましいかもしれませんが)各弁当屋さんが手を組んで、「駅弁は日本の文化だ」ということを発信していきたい。
変えていくべきところは変えて、守るべきものは守っていきたいと思います。
そして、「まねき」にとっての煮物は強みでもありますが、地味だという弱点でもあります。
その意味でも、姫路の「名物」作りには、これからもチャレンジしていきたいと思います。
―廣重企画室長は、どんな弁当を作っていきたいですか?
(廣重)
私たちの弁当は、単なる空腹を満たすためのものじゃなくて、旅の1ページだったり、人が集まった時にいただく、「印象に残る1食」になると思うんです。
数年後には台湾でも「まねき」の弁当片手に、街の公園などで集っている風景が見られるようになるとイイなぁと思います。
(竹田)
駅弁を食べた後って、皆さんしっかりフタをとじて、紐があればしっかり括って、折を捨てられる方が多いですよね。
アレって、いただいて「美味しかった、ありがとう」という思いがあるからだと思うんです。
そうしてもらえる弁当を、これからも提供していきたいと思います。
(まねき食品・竹田専務、廣重企画室長インタビュー、おわり)
様々な日本の食文化が海外展開される中、駅弁も世界へ出ていく時代を迎えています。
その先陣を切って「まねき食品」は日本の駅弁屋では初めて台北に常設店を開店しました。
古都・京都の料亭のノウハウが詰まった、煮物を得意とする「和の心」を持った老舗駅弁屋が最初に世界に出たことは、台湾の方にも日本にも、とてもイイことではないかと思います。
創業130周年もまだまだ通過点、今、一番面白い駅弁屋さんが姫路にはあります。
連載情報
ライター望月の駅弁膝栗毛
「駅弁」食べ歩き15年の放送作家が「1日1駅弁」ひたすら紹介!
著者:望月崇史
昭和50(1975)年、静岡県生まれ。早稲田大学在学中から、放送作家に。ラジオ番組をきっかけに始めた全国の駅弁食べ歩きは15年以上、およそ5000個!放送の合間に、ひたすら鉄道に乗り、駅弁を食して温泉に入る生活を送る。ニッポン放送「ライター望月の駅弁膝栗毛」における1日1駅弁のウェブサイト連載をはじめ、「鉄道のある旅」をテーマとした記事の連載を行っている。日本旅のペンクラブ理事。
駅弁ブログ・ライター望月の駅弁いい気分 https://ameblo.jp/ekiben-e-kibun/