直売所で人気の「白菜菜」ってご存知ですか?
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4月11日放送 ゲスト:「現代農業」編集長 石川啓道 第3回
月刊「現代農業」は、農業や農村の今を伝える総合実用誌。発行部数約20万部。雑誌の内容について、編集長石川啓道に聞く。
メロン受粉させるには筆が便利!
黒木)黒木瞳です。毎日さまざまなジャンルのプロフェッショナルにお話を伺っていくあさナビ、今週のゲストは農業の専門雑誌「現代農業」編集長の石川啓道さんです。前回の続きですが、メロンをベランダで育てていらっしゃる。そして、それは私にもできる。ただ、受粉が難しいとか。どの段階で受粉をするのですか?
石川)ツルが伸びて、黄色い花が咲きます。雌花と雄花がありまして、雌花は花の下がプクッと膨らんでいるのです。そこに雄花の花粉を、本当は午前中に花びらをむしって、雌花のなかに突っ込んで受粉させればいいのですが、これが梅雨にはなかなか上手くいかなくて。それを付き合いのある農家の方に取材のときに聞いてみると、「筆を使うといい」と教えてくれました。やってみると、バッチリでした。
黒木)じゃあ、その雄花の花粉を筆で取って付けちゃう?
石川)それで受粉して、雌花の膨らんでいるところが、だんだん大きくなる。花びらが落ちて、それがメロンになっていくのです。
売上10億円を超える農産物直売所が40ヵ所も
黒木)やはり農業の技術というのは日進月歩で、どんどん変わっていくものですか?
石川)そうですね。変わっていると思います。身近なところだと、農産物直売所というところが元気いいです。10億円を超えるような直売所が、全国で40ヵ所くらいになります。付き合っている農家も、これまでは専業的に市場とかに出していた人が、直売所専業になったり。そういうような時代になったというところがあります。農家は直売所に出すときには自分で値段を付けて売るのですよ。それが市場と少し違うところですが、その売り方もバラエティ豊かで面白いです。
白菜を違う時期に出したいと考えたところから生まれた「白菜菜(はくさいな)」
石川)さらに面白いのが、栽培自体がガラッと変わってしまうところ。富山のおばあちゃんの話で、「春は、白菜菜(はくさいな)で稼ぐ」というのがあります。白菜は、普通は丸いやつですよね。これは普通に植えて普通に取れば、富山の方でも9月下旬頃に植えれば、12月とか1月に丸く結球した普通の白菜ができるのですが、あえて11月くらいに遅く植えると、寒くて丸くならないのですよ。葉っぱがビラビラ出たような状態になります。
黒木)キャベツが開いたみたいな?
石川)そうです。失敗したように見えますが、実はここから春、ちょうどいま頃ですね。アブラナ化の野菜は全部そうですが、葉と葉の間から、「わき芽」と言って、菜の花みたいな、つぼみ菜がニョキニョキ出てくるんです。これが、白菜の菜の花はクセが無くて、ものすごく美味しいのですよ。それを10本くらい袋に入れて直売所に出すと、飛ぶように売れる。普通に白菜を1つ丸ごと出すと、せいぜい200~300円です。これが、10本の菜花だけで210グラム。1袋が140円ですが、それが毎日50袋くらいバンバンとれます。1株から何袋もとれちゃうわけです。ニョキニョキとね。
黒木)白菜本体を売るより、そこから生えている菜の花みたいな物の方が、たくさんとれてよく売れる?
石川)そうです。期間も長くなる。
黒木)農家のおばちゃんが編み出したわけですか?
石川)農家のおばちゃんが、「普通の白菜じゃない時期に出したい」とか、いろいろなきっかけがあると思いますが、編み出して。次々とれて、丸儲けです(笑)。
野菜のいろいろな側面を編み出していく農家たち
黒木)みんな幸せ、という感じですね。
石川)そういうのが生まれるのが面白い「直売所時代」ですね。
黒木)でも、これも最近の話ですか? 菜花というか白菜菜の話。
石川)本当に最近の話です。直売所で他の人が出さないようなものをいろいろ工夫するなかで、農家が編み出していく。私たちは「白菜はこれ!」と思いこんでしまっていますが、白菜はもう丸いものだけではないのです。野菜の面白さはいろいろな側面があって、農家がそれを編み出していくのが直売所なのです。
黒木)お話を聞いているだけで、美味しそうというか、(直売所)あったら買うだろうなと思ってしまいました(笑)。
石川啓道/月刊「現代農業」編集長
1976年・東京生まれ。四国学院大卒。
1998年、一般社団法人農山漁村文化協会(農文協)に入会。
地域普及部を経て2003年、文化部に所属。
2005年に「現代農業」編集部へ移動し、2017年4月に編集長に就任。
(2018年4月11日放送分より)
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