【しゃベルシネマ by 八雲ふみね・第406回】
さぁ、開演のベルが鳴りました。
支配人の八雲ふみねです。
シネマアナリストの八雲ふみねが、観ると誰かにしゃベリたくなるような映画たちをご紹介する「しゃベルシネマ」。
今回は、5月11日から公開となる『ボストン・ストロング ダメな僕だから英雄になれた』を掘り起こします。
自分の人生を取り戻すために戦った、“普通”の男の物語
2013年4月15日に起きたボストンマラソン爆弾テロ。マサーチューセッツ州で制定されている祝日「愛国者の日」に開催され50万人の観衆で賑わうマラソン大会で起きた同事件では3人が死亡、282人が負傷する大惨事となりました。
その後、警察、FBI、市民の協力により驚異的な早さで犯人を逮捕。まるで悪夢のような出来事を経験した市民が「ボストン・ストロング」を合言葉に支え合う様子が世界中に伝えられ、当時の報道を記憶している人も多いのではないでしょうか。
本作は、このテロ事件で両脚を失った実在の人物、ジェフ・ボーマンの光と影を描いた真実の物語です。
ボストンで暮らすジェフ・ボーマンは、元カノのエリンの愛情を取り戻すため、彼女が出場するボストンマラソンの応援に駆けつける。しかしゴール地点付近で発生した爆弾テロに巻き込まれ、両脚を失う大ケガを負ってしまう。意識を取り戻したジェフは、テロリストを特定するために警察に協力。彼の証言をもとに犯人が特定されると、ジェフはまたたく間に“ボストンのヒーロー”として、世間の脚光を浴びることに。
だが彼自身の“再生”への道は、まだまだ始まったばかりだった…。
ジェフ・ボーマンを演じるのは、メジャー大作からインディペンデント作品まで幅広く活躍するカメレオン俳優、ジェイク・ギレンホール。チョイダメな男がテロに巻き込まれたことから人生が一変。犯人逮捕に協力し、一躍、時の人となり、ヒーローとして祭り上げられる反面、傷の痛みに苦しみ、事件当日のトラウマにもがき続ける。主人公の弱さ、苦しさ、痛みを一身に背負った渾身の演技は、観る者に鮮烈な印象を与えます。
共演にはタチアナ・マスラニー、ミランダ・リチャードソン、クランシー・ブラウンらが脇を固め、力強い演技を披露しています。
過剰にドラマチックに描くことを避けた作風により、あの世界的に有名なテロ事件の惨状がよりリアルに伝わってくる本作。しかしこれはテロ映画ではなく、自分の人生を取り戻すために戦った男の物語です。
希望のシンボルとして脚光を浴びる度に、影の部分が浮き彫りとなり、それでも“生きる意味”を探し続けて“真のヒーロー”へと成長していく様は、多くの人の心に勇気と希望を与えてくれることでしょう。
ボストン・ストロング ダメな僕だから英雄になれた
2018年5月11日からTOHOシネマズ シャンテほか全国ロードショー
監督:デヴィッド・ゴードン・グリーン
出演:ジェイク・ギレンホール、タチアナ・マスラニー、ミランダ・リチャードソン、クランシー・ブラウン ほか
©2017 Stronger Film Holdings, LLC. All Rights Reserved. Motion Picture Artwork ©2018 Lions Gate Entertainment Inc. All Rights Reserved.
公式サイト http://bostonstrong.jp/
連載情報
Tokyo cinema cloud X
シネマアナリストの八雲ふみねが、いま、観るべき映画を発信。
著者:八雲ふみね
映画コメンテーター・DJ・エッセイストとして、TV・ラジオ・雑誌など各種メディアで活躍中。機転の利いた分かりやすいトークで、アーティスト、俳優、タレントまでジャンルを問わず相手の魅力を最大限に引き出す話術が好評で、絶大な信頼を得ている。初日舞台挨拶・完成披露試写会・来日プレミア・トークショーなどの映画関連イベントの他にも、企業系イベントにて司会を務めることも多数。トークと執筆の両方をこなせる映画コメンテーター・パーソナリティ。
八雲ふみね 公式サイト http://yakumox.com/