【ライター望月の駅弁膝栗毛】
肥薩線・嘉例川駅を発車していく、特急「はやとの風」。
真っ黒なキハ47形気動車が黒煙を上げていく様子は、昔の蒸気機関車のようです。
ディーゼルカーは軽油を燃料にエンジンを回して動きますから、その時のエンジンの調子や、線路の勾配などによって、このような黒煙が上がることもある訳ですね。
今も気動車列車のことを“汽車”と呼ぶ方がいますが、こんな光景が日常なら納得です。
霧島は至る所で、「ゆけむり」が上がっているエリアでもあります。
駅から少し歩いた所にある「嘉例川バス停」から鹿児島交通の霧島いわさきホテル方面行で数分、塩浸(しおひたし)温泉は、坂本龍馬が新婚旅行で訪れたとされる温泉。
“日本初の新婚旅行”ともいわれ、現在は一帯が「塩浸温泉龍馬公園」として整備されており、日帰り温泉はもちろん、気軽に足湯も楽しめるようになっています。
さらにバスに揺られていくと、来年で開湯200年を迎える霧島温泉郷・丸尾温泉へ。
鹿児島空港、霧島神宮、国分駅など、各地からの路線バスが集まる「丸尾バス停」周辺は、ちょっとした温泉街になっており、霧島観光の拠点となる場所です。
今回は、100年以上の歴史ある宿をルーツに持つ「旅行人山荘」にお世話になりました。
初めて訪れた2006年以来、私も何度かお邪魔しています。
標高およそ700mにある旅行人山荘。
10数年前、初めて訪れた私を魅了したのは、錦江湾に浮かぶ桜島の絶景でした。
特に大浴場(大隅の湯、錦江の湯)の露天風呂から観られた時は、心までじんわりします。
旅行人山荘は、露天と内湯で2つの泉質の温泉が楽しめるのも特徴。
露天には丸尾97号、源泉81.6℃、ph5.5、成分総計259.8㎎/kgの単純硫黄温泉(硫化水素型)が程よい湯温で掛け流され、温泉らしい香りに包まれて、のんびりと絶景を楽しめます。
そして旅行人山荘の温泉のもう1つの魅力は、貸切露天風呂が充実していること。
赤松の湯、ひのきの湯、もみじの湯、鹿の湯の4つがあり、チェックイン時に予約できます。
特に赤松の湯は、TVCM等でも有名で、いつも人気高め。
今回は「もみじの湯」で、野鳥の声を友に、静寂の中、45分ほどゆったりしました。
コチラには内湯と同じ、丸尾12~15号を混合した源泉62.4℃、ph6.8、成分総計915㎎/kg、湯の花たっぷりの単純温泉が注がれています。
ちなみにこの単純泉は飲泉も可能で、大浴場近くに飲泉所が設けられています。
霧島温泉郷の旅の〆は、やっぱり嘉例川の駅弁!
おなじみの「百年の旅物語 かれい川」の姉妹品として、平成25(2013)年に生まれたのが「花の待つ駅 かれい川」(1,080円)です。
コチラは掛け紙が深緑をベースに、花と「はやとの風」の写真が使われているのが特徴。
もちろん「森の弁当 やまだ屋」が製造しています。
【お品書き】
・地元産黒米と栗の炊き込みご飯 霧島産生姜のせ
・がね(さつま芋、人参、ニラ、生姜入りの天ぷら)
・卵焼き
・酢ごぼう(地元産あいらごぼう使用)
・里の味(里芋と梅の果肉による郷土料理)
・鳥の煮付け(さつま赤どり使用、嘉例川の原木椎茸と共に)
・つけあげ(地魚のすり身を使った家庭の味)
・けせん団子
掛け紙を外し、昔懐かしい笹籠を開けると、赤と黄色が目立つ華やかな雰囲気。
女性を意識した華やかな彩りとヘルシーさが感じられます。
レギュラー版の嘉例川駅弁とはまた違った味わいの「花の待つ駅 かれい川」。
シナモンの風味を感じていただくデザート、鹿児島の郷土のお菓子「けせん団子」は、龍馬とお龍をイメージした2個入りとなっています。
新婚の方も、そうじゃない方も、何度訪れても楽しい霧島温泉郷。
素晴らしい自然の中で、素晴らしいお湯と食事をいただけば、間違いなくリフレッシュ!
霧島周辺は鹿児島空港が近い分、帰りの時間ギリギリまで遊べるのが嬉しいものです。
明治維新150年の今年(2018年)、大河ドラマで注目を集める鹿児島。
鉄道などを上手く使って、存分に自然のパワーを感じてみてはいかがでしょうか。
連載情報
ライター望月の駅弁膝栗毛
「駅弁」食べ歩き15年の放送作家が「1日1駅弁」ひたすら紹介!
著者:望月崇史
昭和50(1975)年、静岡県生まれ。早稲田大学在学中から、放送作家に。ラジオ番組をきっかけに始めた全国の駅弁食べ歩きは15年以上、およそ5000個!放送の合間に、ひたすら鉄道に乗り、駅弁を食して温泉に入る生活を送る。ニッポン放送「ライター望月の駅弁膝栗毛」における1日1駅弁のウェブサイト連載をはじめ、「鉄道のある旅」をテーマとした記事の連載を行っている。日本旅のペンクラブ理事。
駅弁ブログ・ライター望月の駅弁いい気分 https://ameblo.jp/ekiben-e-kibun/