【ライター望月の駅弁膝栗毛】
稲穂が実り始め、案山子が建てられた初秋の田んぼの脇を駆け抜けるのは、平成23(2011)年に復活したC61形蒸気機関車20号機が先頭に立つ、快速「SLみなかみ」号。
平成30年でありながら、まだ昭和40年代のような風景が楽しめます。
80年代末から「奥利根」号、その後は「みなかみ」号として親しまれてきた列車ですが、10月からは「SLぐんまみなかみ」号として、より“群馬のSL”を打ち出した愛称に変更されます。
(参考)JR東日本高崎支社ホームページ
信越本線・高崎~横川間で走るSL列車は、「SL碓氷」の愛称で運行。
横川駅には転車台が無いため、片道は電気機関車やディーゼル機関車が牽引します。
碓氷峠にちなんだ「SL碓氷」の愛称も、10月からは「SLぐんまよこかわ」に変更。
普通列車で30分あまりの高崎~横川間を、およそ1時間かけてのんびり走ります。
夏は冷房付の12系客車が多めでしたが、秋からは旧型客車の出番も多くなりそうですね。
停まっている時は静かな蒸気機関車も、走り始める時の煙はやっぱりパワフル!
C61形蒸気機関車は、戦後余っていたD51形のボイラーや部品を使って、C57形の足回りをベースに製造された旅客用機関車です。
20号機は東北で活躍後、末期は九州へ移り、その後、群馬・伊勢崎で保存されていました。
その復活プロジェクトは、山田洋次監督の手で映像作品にもなっていますよね。
C61形蒸気機関車の復活に合わせて登場した駅弁が、「SLロクイチ物語」(1,000円)です。
コチラも「高崎弁当」によって製造されており、「C6120」のロゴが入った黒いカマをイメージした容器と、同じくロゴ入りの箸が付いています。
2011年の登場後、リニューアルを受けながら、群馬エリアのSL運行日に合わせて高崎駅や、SL列車の車内で販売されています。
【お品書き】
・白飯
・海苔
・牛しぐれ煮
・山菜
・ナムル(もやし、ほうれん草、人参)
・厚焼玉子
・コチジャン
ふたを開けると、真ん中に「C6120」の焼印が入った厚焼玉子が載ったのり弁が現れました。
その下に、牛肉のしぐれ煮ともやし・人参・ほうれん草のナムルなどがたっぷり載った“ビビンバ風”となっており、お好みでコチジャンを付けていただきます。
発売当初はコチラも黒いご飯でしたが、リニューアルによって、また違った味が楽しめるようになっており、「上州D51弁当」と棲み分けが図られています。
高崎弁当によると、SL駅弁はJR高崎支社と共同開発されているそうです。
水上温泉郷の皆さんに見送られ、水上を発車した高崎行の快速「SLみなかみ」号は、バンジージャンプやラフティングで賑わう諏訪峡に沿って、利根川の流れと共にゆっくり走ります。
天候に恵まれれば、上越国境・谷川連峰がバックに見えることも・・・。
上りの「SLみなかみ」号は、下り勾配が続くこともあって、煙は控えめです。
青いボックスシートが並ぶ12系客車では、国鉄時代の急行列車のような旅が楽しめます。
以前、個人的に「鉄道博物館」で開催されたJR東日本の高崎・新潟・盛岡の各支社で蒸気機関車の運行に携わっている方々が一堂に会したトークショーを聴きに行ったことがあります。そのご苦労は、私の想像を超える大変なもので、担う皆さんの情熱も並々ならぬものでした。
貴重な産業遺産である蒸気機関車を動かしながら守り、次の世代に伝えていく動態保存。
ボイラーの熱を感じ 、蒸気機関車に関わる皆さんの情熱を思い浮かべながら、客車列車の心地よい揺れに身を委ねていただくSL駅弁ほど格別なものはないでしょう。
連載情報
ライター望月の駅弁膝栗毛
「駅弁」食べ歩き15年の放送作家が「1日1駅弁」ひたすら紹介!
著者:望月崇史
昭和50(1975)年、静岡県生まれ。早稲田大学在学中から、放送作家に。ラジオ番組をきっかけに始めた全国の駅弁食べ歩きは15年以上、およそ5000個!放送の合間に、ひたすら鉄道に乗り、駅弁を食して温泉に入る生活を送る。ニッポン放送「ライター望月の駅弁膝栗毛」における1日1駅弁のウェブサイト連載をはじめ、「鉄道のある旅」をテーマとした記事の連載を行っている。日本旅のペンクラブ理事。
駅弁ブログ・ライター望月の駅弁いい気分 https://ameblo.jp/ekiben-e-kibun/