【ライター望月の駅弁膝栗毛】
全国有数の美しい車窓が楽しめる山陰本線。
日本海を横目に走り抜けて行くのは、キハ187系気動車の特急「スーパーおき」号です。
山陰海岸は、今年も11月6日から松葉ガニのシーズンを迎えました。
玉造温泉、温泉津(ゆのつ)温泉、有福温泉をはじめとした島根の各温泉地でも、いまごろは旬のカニが楽しめることでしょう。
「スーパーおき」は、鳥取・米子から山陰本線・山口線を経由し、新山口で山陽新幹線と接続する気動車特急です。
一部の列車は、鳥取~新山口間をおよそ5時間半かけて走破します。
島根西部・石見地方への鉄道アクセスを担う列車ということで、この区間を走るキハ187系には、ラッピングを施された「いわみキャラクタートレイン」となっている編成もあります。
「スーパーおき」には車内販売がなく、9月で出雲市駅の駅弁も無くなったため、山陰から山口方面への最終駅弁調達駅は、松江となります。
松江駅弁を手掛ける「一文字家」の由緒ある駅弁といえば、しじみの“もぐり寿し”!
最近はいろいろな味を楽しみたい方に向けて、様々なバリエーションが登場しています。
今回は、「蟹としじみのもぐり寿し」(1,250円)をご紹介しましょう。
【お品書き】
・酢飯(島根県産コシヒカリ)
・ベニズワイガニの酢漬け
・しじみ しぐれ煮
・かにしんじょう
・汐吹き椎茸
・とんばら漬け
境港で水揚げされ、漁船から下してすぐ茹で上げたというベニズワイガニと、松江の郷土料理・しじみのしぐれ煮を一緒に味わえる「蟹としじみのもぐり寿し」。
一文字家によれば、山陰のカニも近年、多分にもれず不漁が続いているそうで、この時期、カニの入荷状況にはひと際、気を遣っていると言います。
そのなかで安定した形で、駅弁に仕上げるご苦労もあるそうです。
そんなご苦労に思いを馳せながら、酢の香りに食欲をそそられて、カニとしじみのうま味を感じていけば、あっという間に完食。
ベニズワイガニの身を使ったえびしんじょうや、頓原町(現・飯南町)ゆかりのとんばら漬けなどでアクセントを付けつつ、宍道湖や山陰海岸を眺めて、山陰本線の列車でいただくと一層美味しいことでしょう。
今年は、物流の観点からも注目された「山陰本線」。
山陽本線が西日本豪雨や台風によって被災し、長期にわたって運休を強いられたため、8月末から10月にかけて、臨時の貨物列車が山陰本線経由で運行されました。
関係者の皆さんが運行に尽力されるなか、鉄道による貨物輸送、災害時のバックアップのあり方、一部ファンの撮影マナー問題など、様々な面に一石を投じる格好となりました。
のどかな風景のなかで、しっかりとレールが繋がっている大切さを感じた山陰の秋でした。
連載情報
ライター望月の駅弁膝栗毛
「駅弁」食べ歩き15年の放送作家が「1日1駅弁」ひたすら紹介!
著者:望月崇史
昭和50(1975)年、静岡県生まれ。早稲田大学在学中から、放送作家に。ラジオ番組をきっかけに始めた全国の駅弁食べ歩きは15年以上、およそ5000個!放送の合間に、ひたすら鉄道に乗り、駅弁を食して温泉に入る生活を送る。ニッポン放送「ライター望月の駅弁膝栗毛」における1日1駅弁のウェブサイト連載をはじめ、「鉄道のある旅」をテーマとした記事の連載を行っている。日本旅のペンクラブ理事。
駅弁ブログ・ライター望月の駅弁いい気分 https://ameblo.jp/ekiben-e-kibun/