【ライター望月の駅弁膝栗毛】
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381系電車・特急「やくも」、伯備線・方谷~備中川面間
岡山から、山陽本線・伯備線・山陰本線経由で出雲市の間を結ぶ特急「やくも」。
出雲にかかる枕詞・八雲立つ、小泉八雲など、文学的な印象を受ける愛称です。
昭和47(1972)年、山陽新幹線岡山開業に合わせて気動車特急として誕生、昭和57(1982)年に伯備線・山陰本線(一部)が電化され、振り子式の381系電車になりました。
いまや希少な、逆三角形の特急シンボルマークを掲げる国鉄形の列車でもあります。
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381系電車・特急「やくも」、伯備線・備中川面~方谷間
「やくも」は岡山~米子間をおよそ2時間10分、松江まで2時間半あまり、出雲市まではおよそ3時間をかけて結んでいます。
一部列車は、出雲市方の先頭車がパノラマ型グリーン車となっている他、全ての編成で座席の足元を広くしたり、トイレの洋式化などのリニューアルが行われています。
リニューアルされた編成には、「ゆったりやくも」の愛称が与えられています。
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千屋牛すきやき重
特急「やくも」は、東京毎時30分発「のぞみ」に接続するダイヤが組まれ、山陽新幹線と接続した陰陽連絡が大きな役割ですが、伯備線内も備中高梁・新見などに停まります。
そんな伯備線沿線、新見が生んだブランド・千屋牛(ちやぎゅう)を使った駅弁と言えば、平成27(2015)年から登場している「千屋牛すき焼き重」(1,200円)です。
岡山駅弁の「三好野本店」が製造しており、この9月からリニューアルされました。
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千屋牛すきやき重
【お品書き】
・白飯
・岡山県産千屋牛のすき焼き煮
・玉ねぎと糸こんにゃく煮
・椎茸煮
・ハスの梅酢漬け
・厚焼き玉子
・千切り紅生姜
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千屋牛すきやき重
千屋牛は、岡山県北西部にある新見市で育てられた黒毛和牛で、日本最古の蔓牛(つるうし)とされる「竹の谷蔓牛」の血統を引いていると言います。
「蔓」とは特に優秀な血統のことで、千屋牛は「和牛の中の和牛」とも云われるんですね。
そんな岡山が誇る黒毛和牛「千屋牛」のA5ランクのものが醤油だれで煮込まれ、すきやき風に仕上げられたのが「千屋牛すきやき重」。
リニューアルによって、よりシンプルに牛肉のうま味を楽しめる駅弁になりました。
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381系電車・特急「やくも」、伯備線・木野山~備中川面間
381系のような振り子式車両ではカーブで車体を傾けるため、平衡感覚が取りにくくなり、どうしても苦手…という方もいると思います。
私自身も振り子式車両で本や書類を読んだり、パソコン仕事などをすると、頭が痛くなってしまうので、駅弁と共にできるだけ車窓を眺めるようにしています。
希少な国鉄形車両の旅を楽しくするためにも、思い切り景色を楽しみたいものです。
連載情報
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ライター望月の駅弁膝栗毛
「駅弁」食べ歩き15年の放送作家が「1日1駅弁」ひたすら紹介!
著者:望月崇史
昭和50(1975)年、静岡県生まれ。早稲田大学在学中から、放送作家に。ラジオ番組をきっかけに始めた全国の駅弁食べ歩きは15年以上、およそ5000個!放送の合間に、ひたすら鉄道に乗り、駅弁を食して温泉に入る生活を送る。ニッポン放送「ライター望月の駅弁膝栗毛」における1日1駅弁のウェブサイト連載をはじめ、「鉄道のある旅」をテーマとした記事の連載を行っている。日本旅のペンクラブ理事。
駅弁ブログ・ライター望月の駅弁いい気分 https://ameblo.jp/ekiben-e-kibun/