【ライター望月の駅弁膝栗毛】
函館~札幌間を結ぶ特急列車「スーパー北斗」。
札幌・南千歳から乗り込んだ多くの乗客が、最初に席を立つのが登別駅です。
登別駅は、北海道を代表する名湯・観光地「登別温泉」への玄関口。
温泉街へは駅前から「道南バス」の路線バスに乗って15分ほどで行くことができます。
日本人だけでなく、海外から訪れた観光客の姿が目立ちます。
登別温泉バスターミナルから見える所にあって、登別の湯を「420円」という価格で気軽に楽しめるのが、温泉銭湯「夢元(ゆもと)さぎり湯」です。
「夢元さぎり湯」を経営する「登別温泉株式会社」のルーツは、なんと「鉄道会社」!
明治時代の馬車鉄道に始まり電車も走りましたが、バスの台頭で昭和8(1933)年廃線。
鉄道で登別に来たなら、ぜひ立ち寄りたい、じつは“鉄分”濃いめの温泉なのです。
「夢元さぎり湯」では、登別地獄谷を源泉とする「1号乙泉」と「目の湯」という、2種類の泉質のお湯を、掛け流しで楽しむことができます。
特に酸性・含硫黄―ナトリウム・アルミニウムー硫酸塩・塩化物泉(硫化水素型)の泉質を持つ「目の湯」は、登別温泉のなかでも、さぎり湯だけで入れる乳白色のお湯。
「目の湯」と呼ばれるだけあって、結膜炎などへの効能が認められていると言います。
登別温泉の源泉地帯・登別地獄谷。
そのほぼ中央に位置する「鉄泉池(てっせんいけ)」は、ぶくぶくとお湯が湧き出しており、時折温泉が噴出する、小さな間欠泉となっています。
鉄道で登別へ来て、元・鉄道会社の温泉に入り、鉄泉池までたどり着ければ、登別での“鉄分補給”は、ほぼコンプリートかも!?
登別のお隣・白老には昔からアイヌ民族の集落・コタンがあり、現在は「国立アイヌ民族博物館」の建設が、2020年のオープンに向けて進められています。
北海道命名150年を記念して今年(2018年)、アイヌ民族の食文化を詰め込んだ駅弁「イランカラプテ」が「札幌駅立売商会」から登場しました。
9月20日以降、現在は第2弾の「ハスカップご飯と鹿肉弁当」(1,080円)が販売中です。
【おしながき】
・ハスカップご飯
・鹿肉たれ焼き
・南瓜揚げ
・茶菜昆布
「イランカラプテ」は、アイヌの言葉で「こんにちは」の意。
アイヌ女性会議「メノコモシモシ」が監修を務め、アイヌの料理を現代風に食べやすくアレンジした駅弁で、ハスカップはアイヌ語名由来の果実なのだそう。
ピンクの見た目に甘そうな印象を受けますが、決してそんなことは無く、不思議と臭みの無いジビエとしっかり合っていて、アイヌの食文化に思いを馳せることができます。
その土地の文化を知ることができる、じつに“駅弁らしい駅弁”と言えましょう。
「スーパー北斗」は通過する白老ですが、札幌~室蘭間の電車特急「すずらん」は停車。
苫小牧~東室蘭~室蘭間の列車は、普通列車を含め気動車やディーゼル機関車による貨物列車が多く、電化区間でありながら、「すずらん」は希少な電車列車となっています。
「スーパー北斗」に比べ、空いていることも多い「すずらん」、札幌・南千歳から登別周辺へのアクセスには有効に活用したいものです。
連載情報
ライター望月の駅弁膝栗毛
「駅弁」食べ歩き15年の放送作家が「1日1駅弁」ひたすら紹介!
著者:望月崇史
昭和50(1975)年、静岡県生まれ。早稲田大学在学中から、放送作家に。ラジオ番組をきっかけに始めた全国の駅弁食べ歩きは15年以上、およそ5000個!放送の合間に、ひたすら鉄道に乗り、駅弁を食して温泉に入る生活を送る。ニッポン放送「ライター望月の駅弁膝栗毛」における1日1駅弁のウェブサイト連載をはじめ、「鉄道のある旅」をテーマとした記事の連載を行っている。日本旅のペンクラブ理事。
駅弁ブログ・ライター望月の駅弁いい気分 https://ameblo.jp/ekiben-e-kibun/