一ノ関駅「いわてあぶり焼き和牛弁当」(1,100円)~駅弁屋さんの厨房ですよ!(vol.13「斎藤松月堂編」(6))

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【ライター望月の駅弁膝栗毛】

斎藤松月堂 齋藤賢 岩手 いわてあぶり焼き和牛弁当 和牛 駅弁 パリ リヨン

E5系+E6系新幹線電車「はやぶさ・こまち」、東北新幹線・水沢江刺~一ノ関間

昭和39(1964)年、世界で初めて最高時速200kmを超えるスピードで営業運転を行い、世界の高速鉄道の先駆けとなった日本の新幹線。
現在、東北新幹線のE5系・E6系「はやぶさ・こまち」号は、宇都宮~盛岡間で最高時速320kmを誇り、東京~盛岡間を2時間10分台で結んでいます。
この時速320kmは、フランス国鉄の高速鉄道・TGVと並ぶ速度です。

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株式会社斎藤松月堂 齋藤賢社長

日仏交流160周年の2018年、JR東日本とNREをはじめとした日本の駅弁屋さん5社が共同で、TGVも発着するフランスのパリ・リヨン駅にて、駅弁の臨時販売を行いました。
10月30日から11月30日まで行われたこの取り組みに「斎藤松月堂」も参加。
齋藤賢社長も10月末からの1週間あまり、パリで駅弁販売に当たりました。
今回は、パリでの駅弁販売について、齋藤社長にお話いただきました。

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シャロレー牛あぶり焼き弁当(現地版)

―パリでは、「シャロレー牛あぶり焼き弁当」という弁当を販売されたのですよね?

松月堂としては「うにごはん」がメインですので、うにでいければ…と思っていました。
でも、フランスの方が「うにをあまり食べない」んです。
加えて、現地では「うに」が手に入りにくい事情がありました。
手に入っても南仏のほう…ということで、パリへ持って来るには時間がかかります。
そこで早々に、「うに」を出すことは断念せざるを得ませんでした。


―牛肉の弁当になったのはなぜですか?

一緒に出店する各社さんが、淡路屋は「ひっぱりだこ飯」、花善は「鶏めし弁当」、大船軒は「幕の内弁当」…といったラインナップで作られるということが分かりました。
そこでまず、松月堂でも普段作っている「牛肉」を使うことが決まりました。
ただ、普通の牛肉弁当を作っても面白くないということで、できれば牛肉と三陸ゆかりの牡蠣を組み合わせて、海の幸と山の幸を一緒に出す弁当を検討しました。

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キハ100系気動車・快速「スーパードラゴン」、大船渡線・盛駅(2010年撮影)

―牡蠣はフランスの皆さんも召し上がりますよね?

特に三陸の牡蠣はフランスと大きな関係があって、以前、フランスの牡蠣がダメになったときに、三陸の牡蠣の“種”を持って行ったという経緯があります。
一方で、東日本大震災で三陸の牡蠣がダメになってしまったときには、フランスのサポートを得て、復興に取り組んでいるんです。


―どうしてNGに?

じつはフランスの皆さんって、牡蠣は生じゃないと食べないんです。
さらに牛肉と牡蠣を一緒に食べるということが、あまり受け入れられないようなんです。
実際、今年4月にフランスで試食会をやったときには、フランスの有名ホテルのシェフの方からも、芳しい評価を得ることができませんでした。

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いわてあぶり焼き和牛弁当

そこで、私たちが普段出している「いわてあぶり焼き和牛弁当」(1,100円)の技術を使って、炙り焼きを出すことになったんです。
じつはフランスの皆さん、「焼き鳥」が大好きなんです、照り焼きとかも。
何が大好きって、肉にたれをまぶして焼いたときの“焦げの香り”なんですよ。
ならば、私たちが普段からやっている「炙り焼き」で行こうということになりました。


―実際に販売を行って、反響はいかがでしたか?

お陰さまで「シャロレー牛あぶり焼き弁当」は、大変よく売れました。
お客さまからも、「美味しい」という声をたくさんいただきました。
じつは現地では、5社のスタッフがシフト制で、協力しながら駅弁を作りました。
斎藤松月堂のスタッフも、他社の製造工程の多い幕の内弁当などを一緒に作りました。
4月にフランスで試食会を開いて、その反響を踏まえた上で作りましたので、どのお弁当も、概ね、よく受け入れられていたように感じます。

(株式会社斎藤松月堂 齋藤賢社長インタビュー、つづく)

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いわてあぶり焼き和牛弁当

【おしながき】
・ご飯(岩手県産ひとめぼれ)
・岩手県産黒毛和牛あぶり焼き
・ししとう
・煮物(人参、椎茸、蒟蒻)
・生姜

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いわてあぶり焼き和牛弁当

フランスで販売された駅弁の原形となった「いわてあぶり焼き和牛弁当」。
湯通しして特製のたれに漬けこんで、サッとあぶり焼きにされた岩手県産の黒毛和牛が、岩手県産ひとめぼれのご飯の上にたっぷり載っています。
じつはリニューアルで牛肉が20%増量されたのだそう。
シンプルながら味わい深く、食べやすい牛肉駅弁です。

次回、よりディープにパリでの駅弁販売を通じて感じたことをお話しいただきます。

連載情報

ライター望月の駅弁膝栗毛

「駅弁」食べ歩き15年の放送作家が「1日1駅弁」ひたすら紹介!

著者:望月崇史
昭和50(1975)年、静岡県生まれ。早稲田大学在学中から、放送作家に。ラジオ番組をきっかけに始めた全国の駅弁食べ歩きは15年以上、およそ5000個!放送の合間に、ひたすら鉄道に乗り、駅弁を食して温泉に入る生活を送る。ニッポン放送「ライター望月の駅弁膝栗毛」における1日1駅弁のウェブサイト連載をはじめ、「鉄道のある旅」をテーマとした記事の連載を行っている。日本旅のペンクラブ理事。
駅弁ブログ・ライター望月の駅弁いい気分 https://ameblo.jp/ekiben-e-kibun/

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