【ライター望月の駅弁膝栗毛】
平成9(1997)年以来、20年以上、東北新幹線で活躍しているE2系新幹線電車。
現在は、主に平成14(2002)年の八戸開業時に増備された広窓タイプの1000番台が、東北新幹線では主に「やまびこ」号として活躍しています。
時刻表ではグランクラスの設定が無い「やまびこ」を探せば、概ねE2系新幹線。
世代交代が急速に進む新幹線だけに、こんな風景もいまのうちだけかもしれません。
東北新幹線開業30周年の平成24(2012)年から、一ノ関駅弁「斎藤松月堂」の舵取りを担うのが、齋藤賢社長(43)です。
「駅弁屋さんの厨房ですよ!」第13弾・斎藤松月堂編。
今回は、じつは新幹線が生んだという、東京駅の「あの有名スポット」の話も…。
―一関にとっての大きなターニングポイントは、やはり「東北新幹線」の開業ですか?
そうですね、新幹線は大きかったと思います。
ただ、一ノ関駅では、駅弁の販売形態の変化のほうが大きかったようです。
斎藤松月堂は、東北本線の特急列車における車内販売で大きな収入を得ていました。
例えば、上野発青森行の特急「はつかり」号の担当になれば、1社で上野~青森間を担当することができたんです。―「はつかり」「やまびこ」…たくさんの東北特急がありましたよね?
売り子さんにとっては大きな収入になったので、上野に着くと、折り返しの列車の時間まで、稼いだお金でアメ横に繰り出したなんて逸話も残っています。
新幹線になって、車内販売は日本食堂(現・NRE)などが一括して行うようになったため、駅弁を「積み込む」という形に変わって行きました。
ただ、一ノ関駅ホームでの台車売りは、2000年代初めごろまで継続してやっていました。―2000年代に入って、一ノ関の駅弁はどのように変わって来ましたか?
新幹線の車内販売はそれなりに続いていたのですが、だんだんと車内販売で売れ残った駅弁を東京で売る会社が出て来ました。
それが次第に「東京向けに駅弁を作る」ということに発展して、東京駅などに「駅弁屋旨囲門」というお店ができました。
これが当たったことから、いまの「駅弁屋 祭」になって行ったんです。
―やっぱり「駅弁屋 祭」の存在は大きいですか?とても大きいです。
東北の駅弁屋には、長年、「仙台で商売したい!」と思う会社も少なくありませんでした。
その夢だったような話が、一個飛ばしで、いきなり「東京」で実現したわけですから。
高校野球で言うところの“甲子園出場”が決まったような嬉しさがありました。
「駅弁屋 祭」は、東北エリアの駅弁屋さんの夢が詰まった場所でもあるんです。―「駅弁屋 祭」の常連とも云ってもいいのが、「平泉うにごはん」ですよね?
「平泉うにごはん」は、平成4(1992)年から販売しています。
当時「内陸の一ノ関でうに…」と仰る方もいましたが、一ノ関は三陸への玄関口であると同時に、中尊寺金色堂のある平泉への玄関口でもあります。
世界遺産になるよりはるか前でしたが、(黄金のイメージのある)平泉をもっと知ってほしいという思いで作った駅弁です。
―初めて見たとき、うにの多さに、私もすごいインパクトを感じましたよ!じつは当時、新幹線の積み込みから急な追加発注があっても、すぐに対応できる駅弁が求められていましたので、「スグに作れること」を強く意識した駅弁なんです。
発売当時はまだ、いまほど、うにの価格が高騰していませんでした。
いまは当時と比べると、全くうにがありませんが、様々な産地からうにを集めた上で、自社で加工するなど、様々な工夫をしています。
(齋藤賢社長インタビュー、つづく)
「平泉うにごはん」をさらにバージョンアップさせて、今年(2018年)1月の京王百貨店新宿店「第53回元祖有名駅弁と全国うまいもの大会」を皮切りに、この秋に行われた「駅弁味の陣2018」にも登場させたのが、「香ばし海苔とうにごはん」(1,200円)です。
香ばしい海苔の香りや、うにの炊き込みご飯の味わいがダブルで楽しめる駅弁。
一ノ関駅の売店でも、しっかり駅弁ラインナップの一角を占めています。
【おしながき】
・炊き込みご飯(うに・すき昆布、岩手県産ひとめぼれ)
・蒸しうに
・刻み海苔
・玉子焼
・いくら醤油漬け
・しその実と茎わかめの佃煮
・山ごぼうの醤油漬
駅弁をいただく上で、ぜひ実践したいのが「食べる前に愛でる」!
特に「香ばし海苔とうにごはん」は、ふたを開けた瞬間、よくご覧いただきたい駅弁です。
そう! 蒸しうにの周りの刻み海苔は、うにの殻をイメージしたものなんです。
「殻付きうに」に見立てたり、味の要となるご飯にもひと手間加えた新しいうにごはん。
はやる気持ちを抑えて、進化(深化)した味わいを楽しんでみてはいかがでしょうか。
16年前の12月、東北新幹線・八戸開業時に主役を担ったのがE2系「はやて」でした。
いま、東京発・下り定期列車の「はやて」は、東京7:16発「はやて119号」のみ。
多くの列車が、E5系「はやぶさ」にバージョンアップしていきました。
この「はやて119号」、一ノ関到着は午前9:30と一関周辺を巡るにはちょうどいい時間。
希少なE2系「はやて」の旅、楽しめるうちに楽しんでおきたいものです。
連載情報
ライター望月の駅弁膝栗毛
「駅弁」食べ歩き15年の放送作家が「1日1駅弁」ひたすら紹介!
著者:望月崇史
昭和50(1975)年、静岡県生まれ。早稲田大学在学中から、放送作家に。ラジオ番組をきっかけに始めた全国の駅弁食べ歩きは15年以上、およそ5000個!放送の合間に、ひたすら鉄道に乗り、駅弁を食して温泉に入る生活を送る。ニッポン放送「ライター望月の駅弁膝栗毛」における1日1駅弁のウェブサイト連載をはじめ、「鉄道のある旅」をテーマとした記事の連載を行っている。日本旅のペンクラブ理事。
駅弁ブログ・ライター望月の駅弁いい気分 https://ameblo.jp/ekiben-e-kibun/